投稿 被団協のノーベル平和賞受賞を考える

 ノルウェーのノーベル賞委員会は10月11日、2024年のノーベル平和賞を被爆者団体の全国組織である日本原水爆被害者団体協議会(被団協)に授与すると発表した。
 10月12日・土曜日の新聞は日本被団協のノーベル平和賞受賞がきまったことを社説でとりあげている。『東京新聞』が1番マシで、『産経新聞』が1番ダメだ。私はそう思った。

 『週刊金曜日』は(雑誌だが)『東京新聞』社説がふれていない問題にもふれている。
 ―― さらに、日本で被爆した韓国被爆者に対する補償も行なわれるべきである(『週刊金曜日』2024・10・25 1494号、3ページ、風速計、宇都宮健児さん)。
 ―― 「授賞理由の中で、被爆者の中には朝鮮半島出身者がたくさんいたということに一言も触れられていないのが非常に心寂しい思いがした」。
 韓国原爆被害者対策特別委員会の4代目の委員長で、広島の被爆2世でもある権俊五(クォン・ジュノ)さん(75歳)は言う。
 被爆者援護の拡充や国家補償の実現は、日本被団協の使命だが、日本人として被爆し、戦後朝鮮半島に戻った人たちの援護は大きく立ち遅れてきた。朝鮮半島出身者の原爆犠牲者は2万人とも3万人とも言われているが、その存在は傍らに追いやられてきた現実がある。「在韓被爆者の問題、在日の被爆者の問題を含め、いろんな形で闘い抜いてきた歴史がある。これからもこの闘いは延々と続くのだと思います」(『週刊金曜日』2024・10・25 1494号、16ページ、宮崎園子さん)。

 「イスラエルの問題」にもふれておきたい。イスラエル大使は被団協の箕牧智之(みまき・としゆき)代表の発言を非難した。
 ―― イスラエルのギラッド・コーヘン駐日大使は13日、X(ツイッター)への投稿で、ノーベル平和賞受賞が決まった日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の箕牧(みまき)智之代表委員の発言を「不適切」と非難した。
 箕牧さんは11日の授賞発表直後、「パレスチナ自治区ガザ地区で、子どもが血をいっぱい出して抱かれているのは、80年前の日本と同じ、重なりますよ」と述べていた。第二次大戦中の日本で戦争の犠牲になった子どもたちを想起しつつ、イスラエルが侵攻を続けるガザの子どもたちの状況に思いを寄せたものだ。……この投稿(イスラエルのギラッド・コーヘン駐日大使のXへの投稿)では、イスラエル軍の攻撃で死傷したガザの大勢の子どもたちについて直接的には言及していない(2024年10月15日・火曜日『毎日新聞』夕刊、8面、松本紫帆記者)。同様の記事が2024年10月16日・水曜日の『毎日新聞』朝刊28面にも掲載されている。

 杉原浩司さんのツイッター(X)には、矢追健介@大阪さんの書き込み(10月15日)があり、そこでアルジャジーラの動画が紹介されている。動画によれば、箕牧智之さんはこう語っている。―― ほんとうにもうウソみたい。なんで日本被団協になったのか。私はねガザの方でいっしょうけんめいね平和活動されとる人がねもらえるんじゃないかと思いましたよ。子どもが血いっぱいだされとる。80年前の日本と同じよ、重なりますよ。戦争でお父さんを失い、原爆でお母さんを失いね。被爆孤児(「アルジャジーラ」)。

 インターネットのレイバーネット日本には、こういう書き込みがある。
 ―― 日本被団協のノーベル平和賞受賞が決まった(11日)。被爆者のこれまでの訴え、活動が評価されたことはもちろん大きな意義がある。これを機に核廃絶の機運が高まればいいとも思う。だが、この受賞は手放しで喜べない。……この授賞によって、広島・長崎に原爆を落とした張本人のアメリカの責任を問う論調はみられない。日本メディアの報道はここでも偏っている。平和賞はノーベル賞の中でも最も政治的で、(西側の)政治力に左右されやすいいわくつきの賞だ。日本への核兵器持ち込みを密約した佐藤栄作や、広島の平和公園に「核のボタン」を持ち込んだオバマが「平和賞」を受賞したのはその典型だ。
 ……「日本の反核・平和運動」の弱点は、核兵器廃絶と軍事同盟(軍事ブロック)解消を切り離し、後者を不問にしていることだ。言い換えれば、日米軍事同盟=安保条約の廃棄に言及しないことだ。それは「反核運動」が、核兵器の被害のみを強調し、原爆投下を招いた根源でもある日本の侵略戦争・植民地支配の加害責任を棚上げしていることと通底している(アリの一言(日曜日記323):「被団協にノーベル平和賞」手放しで喜べない、レイバーネット日本)。

 栗原貞子さん(1913年3月4日 ~2005年3月6日)はこう書いた。―― …… 〈ヒロシマ〉といえば 〈ああヒロシマ〉と やさしくかえってくるためには 捨てた筈の武器を ほんとうに 捨てねばならない 異国の基地を撤去せねばならない …… わたしたちは わたしたちの汚れた手を きよめねばならない(栗原貞子さん詩集「ヒロシマというとき」)

 核兵器を廃絶するためには、核保有国やその同盟国の支配体制を打倒しなければならない。
(2024年10月27日)

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