投稿 9条が輝くとき④
たじまよしお
南米チリの場合
昨年の12月18日YouTubeで「チリ新憲法草案を否決」というニュースが流れましたので次に紹介します。
「ピノチェト軍事政権で1980年に制定された現在の憲法に代わる、新憲法草案を問う国民投票が(12月17日)行われました。反対多数で否決され、現憲法が維持されることになりました。選挙管理当局によりますと、開票率99%の段階で反対55%、賛成は44%でした。結果を受け左派のポリッチ大統領は『任期中に憲法制定のプロセスを終える』と述べ、現憲法の維持を明確にしました。現憲法は格差拡大の要因になっているとも指摘され、2019年の激しい反政府デモにもなりましたが、今回の草案は『現憲法よりも保守的』と受け止められ、支持は広がりませんでした」。
以上がYouTubeのニュースですが、これにはいくつかのことを補足しなくてはなりません。第一は「2019年の激しい反政府デモ」とはどういうものであったかについてです。
2019年の10月のことでしたが地下鉄料金の値上げに怒った中学生が、改札口を飛び越えくぐり抜けして「無賃乗車運動」を展開するということがありました。これをみた大人たちはその動きを制止するどころか中学生の抵抗に便乗するかたちで「地下鉄タダ乗り行動」に一斉に蜂起したのです。
背景には激しい貧富の格差、年金、水道、など基本的なサービスの民営化などが要因としてあったのです。そしてその一斉蜂起の中で30名もの死者と数千人の負傷者を出したことから見ても、その時の大衆運動の激しさが想像されます。
そして、新しい憲法を制定するに至ったのです。議会は上院・下院で構成されていますが、新しい憲法草案を創るには新たに憲法制定委員を国民による直接選挙で選ぶことになったのです。その委員は155名とすること、そして世界初のパリテ[男女同数]で、原則として憲法草案制定委員は無所属、あるいは政党政治とは縁の薄い人物でなくてはならないということにしたのです。
冒頭で述べました、昨年の12月18日にチリで行われた新憲法草案の国民投票は2回目で、投票率は84・48%、賛成44・24%で反対は55・
76%でした。1回目は2022年9月4日で投票率は85・86%で賛成は38・11%、反対は61・89%でした。
You Tubeの情報によれば「結果を受け左派のポリッチ大統領は『任期中に憲法制定のプロセスを終える』と述べ」たということですが、これではどういうことなのかよく分かりません。
日本貿易振興機構のビジネス通信(岡戸美澪)によればポリッチ大統領は「憲法制定プロセスはここで終了すると発言した。政府が緊急に対応しなければならないことが他にあると言及し取り組むべき課題として年金制度改革や経済成長の促進・富の再配分、安全保障の強化・男女格差の解消などを挙げ『国民の優先課題は自身及び政府の優先課題である』」とコメントした、ということです。
新憲法の制定はまさに壮大な事業であり、左派政権の政治の成果を見てからでも遅くはないという自信に溢れたコメントであるのか、それとも「負け惜しみ」なのかこれらの情報だけでは読み取れません。
この史上最年少35歳のポリッチを大統領に押し上げたその過程をみてみたいと思います。第一回目の大統領選挙は2021年11月22日に六人の候補者で争われ、ポリッチ候補は二位でしたが過半数の票を獲得した候補者はいなかったので、12月19日に一位のホセ・アントニオ・カスト候補と決選投票の上、ポリッチが大統領になったのです。ポリッチ氏が55・87%、カスト氏が44・65%でした。
国会議員に占める女性割合
さて、前にも述べましたがこのチリの憲法制定会議の構成は、男女の比率はあくまでも半々が原則で、世界初ということです。参考までに日本の衆・参議院の男女の比率をみてみたいと思います。
2021年の衆議院選挙における女性立候補者は16・7%で当選者は11・3%、2019年の参議院選挙における女性立候補者は24・1%で当選者は21・5%となっております。
そして「女性議員比率の国際比較」をみますと186ケ国の中で日本は164位となっております。女性議員が50%以上はキューバ、ニカラグア、メキシコ、ニュージランド、アラブ首長国連邦、そしてルワンダは61・3%と突出しております。その中には先進国と言われているG7の国々は一つもありません。
ところで本稿の目的は、8月4日の東京新聞にあった今後自衛隊をどうするかという世論調査の「憲法違反なので、戦力を放棄し、災害派遣に特化した組織にすべきだ」を9%もの人々が支持していることを受けて、そのことを実現するにはどうするかを議論するための叩き台のためのものです。ついこの間、10月27日の衆議院選挙で自民党は大敗しましたが、野田さん代表の立憲民主党も頼りないこと甚だしい。今回の選挙でただ一つの「希望の星」は「女性当選 最多73人 女性の当選者は2021年衆議院選挙より28人増え、過去最多の73人となった(10月29日東京新聞)」となっていることです。
しばらくは混沌とした状勢は続きそうですが、こんなときだからこそ「兵器なき世界」を目指す幟旗を青空高く掲げて、市民による政界再編をめざしたいものです。資本主義という妖怪が地球を覆い、地球温暖化で自然を日々破壊しています。一国の中だけで実現できるようなことではありません。小泉進次郎さんのレジ袋有料化を評価しないわけでもありませんが、軍事演習での一発の砲弾が、何万枚のレジ袋に相当するか計算してみる価値はあると思います。地球環境破壊の最大の要因の一つに「軍事」があることは明白です。
9条の起源
しかし非武装平和論は、憲法9条に始まったわけではありません。徳川封建社会の元禄の頃を生きた安藤昌益という人がいます。彼は「聖釈(聖人と釈迦)よりも馬糞の方が益あり」と言いました。「不耕貪食の徒」(土地を耕作しないでただ食を貪っているだけの輩)よりも肥料として役立つ馬糞の方がまだましだ、というのだから痛烈な物言いです。ここでいう聖人とは天皇・武士階級のことをいうのです。彼は徹底した平和主義者で、あらゆる兵器の撤廃を主張していたのです。人斬り包丁を腰に威張り散らしている武士階級を否定していたのですから大変なことです。しかし安藤昌益は突出した存在ではありましたが、虐げられた人々の気持ちを集約していたのです。そして世界中のどこにも安藤昌益はいたというのが、まっとうな歴史の見方であると思います。それはユートピアの域を出ていなかったかもしれませんが、今を生きる私たちはその夢を具体化・実現して後に来るものたちに手渡してゆく、それは責務であると思うのです。
(了 2024・10・30)
三矢研究(みつやけんきゅう)とは、1963年(昭和38年)に自衛隊統合幕僚会議が作戦研究で極秘に行っていた机上作戦演習(シミュレーション)である。正式名称は昭和三十八年度総合防衛図上研究。名前の由来は「三十八年の研究」であることと、毛利元就の「三本の矢」の故事にならい、陸海空三自衛隊の統合という意味から名づけられた。
研究の発覚
1965年(昭和40年)2月10日の衆議院予算委員会において社会党の岡田春夫がこの研究の存在を発言し(暴露内容は第三動の部分に当たる)、一般的に研究の存在が知れ渡った。その後衆議院で松野頼三を小委員長とする「防衛図上研究問題等に関する予算小委員会」が設けられ、11回にわたって集中的に問題点の追求が行なわれた。
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