2.14荒川区民共闘が年次総会開催
狭山事件の再審開始を
「差別されない権利」の確立を求めて
【東京】2月14日、部落解放荒川区民共闘会議の第9回年次総会が、同区内の区立さつき会館であった。
同会議議長の坂本繁夫さんが基調提案をした。会議はこれまで、狭山事件再審の審理を求め、毎月「23デー」の情宣や東京高裁前行動、署名活動やハガキの投函を続けてきた。基調は、袴田さんの無罪確定の流れを「次は狭山だ」と受け継ぎ、再審法の改定を求めた。また、本総会で講演される「全国部落調査」復刻版出版事件に見る「差別されない権利」判決を生かし、包括的差別禁止法制定を求めた。
朝鮮学校への支援を
事務局から会計報告、規約改正、幹事会体制の報告があった。会員団体「平和憲法を守る荒川の会」の森本孝子さんは、次のように発言した。「私たちの会は18年、この地で活動してきた。昨年の総会で活動予定を大きく縮小した。私の体力や財政の問題があった」。
「私が力を入れて支援している各地の朝鮮学校は、600校から10分の1にまで減った。無償化の対象外だ」。
「荒川の第一初中級学校にだけ市民による『応援団』がない。私は今作る準備をしている。みなさんの協力をお願いします」。
「『差別されない権利』判決の意義と『部落探訪』削除裁判」と題する講演が、山本志津弁護士からあった。(講演要旨・別掲)
「差別されない権利を認める判決」
「全国部落調査」復刻版出版差止裁判の最高裁判決が2024年12月4日に出された。最高裁は原告、被告双方の上告を棄却し、東京高裁判決(2023年6月28日)が確定判決となった。2016年に提訴した裁判は、8年をかけて終わった。
この裁判の大きな成果は、最高裁が憲法13条及び14条に基づいて「差別されない権利」を認めたことである。差別されない権利を人格権の内容として承認した判例は本件が初めてであり、画期的な判決である。
講演後の質疑応答では、「示現舎宮部龍彦は、闘いに追い詰められてサイトを有料化し逃げ込んだが、有料会員のみが見られるサイトの証拠をどうつかむのか」などの提起があった。山本さんは「有料サイトも問題だが一般に公開されている無料サイトがまだまだ多い。まずこのサイトを問題にしていく」と答えた。
集会の最後に、小野崎篤荒川支部書記長が発言した。「昨年の大晦日、徳島にいた石川さんが救急搬送された。高熱を出し呼吸困難状態だったという。ショックだった。石川さんには時間がない。みなさんこれからも一緒に闘っていきましょう」。
(桐丘進)
※石川一雄さんは本集会開催中は存命だったが、本稿執筆中の3月に無念にも帰らぬ人となった。部落解放同盟の追悼文を掲載する。
「差別されない権利」判決をどう生かすか
山本志都弁護士(復刻版裁判と「部落探訪」削除裁判を担当)
「全国部落調査事件」とは、出版社「示現舎」の宮部龍彦が2016年2月、「全国部落調査(復刻版)」の出版をネット上で宣言し、かつウエブ上にリストや解放同盟幹部の名簿を掲載した事件だ。宮部は古いものも復刻版も公開した。これが若い世代へ回復困難な損害を与えた。
宮部は2016年1月に販売を予告し、解放同盟は4月に東京地裁へ提訴した。
「プライバシー権や名誉権だけでは不十分である」と私たちは地裁の段階から訴えてきた。2024年12月に最高裁が双方の上告を棄却し、東京高裁の判決が4日付で確定した。この判決は画期的な内容を持っている。憲法13条と14条の合わせ技ともいえる。「差別されずに平穏に生きる権利」を認めたからだ。特に「今日においても本件地域出身者等であることを理由とする心理面における偏見、差別意識が解消されていないことから認められる当該問題の根深さ」という文言は感動的だ。
もう一つの裁判「部落探訪」訴訟は、部落を紹介する動画を宮部らがユーチューブにアップした事件だ。2016年3月には4カ所だったが2025年2月の時点で約400カ所に及んでいる。彼らは1週間に一度記事を追加している。「部落調査」裁判の影響で、動画のタイトルを「部落探訪」から「人権探訪」さらに「曲輪クエスト」と都合よく変更している。「神奈川県」や「人権」とは何の関係もない「神奈川人権啓発センター」を名乗ってもいる。6万人以上がチャンネル登録を行ない、多いもので100万回再生されている。2022年にグーグルが「ヘイトスピーチ」指針でサイトを削除すると、有料会員制度に移行した。
地域住民の自宅や自家用車、商店の看板や墓地さらに同和対策事業で建設された集会所などの施設も撮影した。各地の「部落」をさらけ出すのみならず、同様の行為を行うよう扇動。電話帳などの利用で模倣犯を生み出すよう誘導している。
悪質な動画配信に対し、埼玉や新潟で掲載差止と損害賠償を求める訴訟を起こした。被告は神奈川県相模原へ裁判の「移送」を申し立てているが、往生際の悪い時間稼ぎに過ぎない。動画にさらされた地元の自治体や首長が、動画削除のためにいち早く地元法務局に要請した。
解放同盟は、支部員のみならず被差別部落住民全体の権利を守ることをめざしている。団体が差止の主体になることだ。被害を受けた個人が実名で裁判をすることは、さらなる差別を呼びかねない。当然の権利を守るために個人情報をさらけ出さなければならない。これが矛盾でありハードルである。時代の流れか、裁判所は「オンライン裁判」なども求めてくるが、私たちは公開法廷での裁判を求めている。
あくまで団体が差し止めの主体となり、包括的な「差別禁止法」の制定をめざす。被害者がわざわざ訴訟を起こさずに救済される制度の実現、システムの構築が急務である。(発言要旨・文責編集部)

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