投稿 ―― 労働の現場から
毎年秋に訪れる不安 1年毎更新の不条理
秋谷静雄
先日「かけはし」に、官製ワーキングプア集会の報告記事が載っていた。私はある地方自治体の一般事務職会計年度職員(会年職員)。定年退職後、3カ月間の失業を経て就職した。「会計年度任用制度」導入から1年後の春のことだ。
前職は民間製造業の生産管理職。同じ職種でも募集があったが、採用枠の多い一般職に応募した。
雇い止めを確認するメール
毎年10月になると管理職からメールで、次年度の「任用更新」についての「意向調査」が、対象者だけに送られてくる。
職場の「会年」職員の同僚らは浮足立ち、疑心暗鬼になる。上司や管理職に媚びへつらうようにもなる。急にお世辞を言ったり、テキパキと返事をしたり、慣れない敬語を使ってみたり。意思の返答までの猶予はわずか一週間。迷っている時間はない。
私の配属された職場は、玉石混交、百家争鳴、公私混同という形容が当てはまる空気があった。
係長や主任などの職位。常勤、非常勤という雇用形態。同じ会年職員でも月額、日額という労働時間の違い。人事・職員課募集か部署直接の募集かの違い。基本給が異なる専門職と一般事務職。年齢・勤続期間。常勤再任用・更新雇用。組合員・非組合員という、実に複雑で多様な身分の労働者が一緒に仕事をしていた。
私の自治体でも「雇用上限年数の撤廃」を実施した。「4回更新5年間」の「縛り」がなくなったのだが、いずれも65歳を上限としている。しかし資格所持者や部署が直接募集した専門的職員は、70歳を超えて働く者も少なくない。会計年度任用制度では、次年度以後の再任用は「原則公募」と謳っている。「広く多くの人材を採用する機会の均等」がその根拠。すでに働いている職員に対し、雇う側は「次年度のあなたの応募は自由」と言い放つ。いっぽうで、慣例としての「特例的」再雇用にも補足的に言及する。
特例的とは「公募を強制せず、試験なしに特別に任用の継続を認める」例だ。当局が労働者に釘をさす強権的な表現であり、「会計年度任用」原則と一体の言葉だろう。
建前・温情・本音使い分け
本来誰もが仕事に慣れ同僚と親しんだ職場で、今後も働き続けたいと願うのではないか。65歳以上であれば、「常勤再雇用組」のように職務経験豊富で事業に精通する者。あるいはそれ以下の年齢で、何度も更新を繰り返してきた者。当局にとっては、新人を公募する準備や手続きよりはるかに楽であり、職務分担とその遂行が職場に定着し、「余人をもって代えがたい」と評価された者。これらを指すのが「特例対象者」だ。実質的にこの「特例方式」を対象者に数年間繰り返して、使い勝手のいいベテラン職員の再任用を「例外として」認めているのだ。
「会計年度任用職員制度」とはまさに、「1年限りの雇用」であり、名称が制度の本質を強調している。どれだけ長く経験やキャリアを積み、職場に根差し、公共サービスを受ける市民に貢献していたとしても、本人の能力や実績は原則的にたった1年でクリアされ、次年度に引き続き残していけない非合理的な制度だ。
「1年更新」のための勤務評定も作られた。2025年度の勤務評定は、来年度の「勤勉手当」支給に反映される。上位者の考課分は、すべての査定対象者から、わずかな配分で確保されて支給。組合も合意している。給料は安いが、服務規程や懲戒基準は常勤に準じている。
毎年秋は、次年度のことを嫌でも考えさせられるわけだ。仕事が順調でも、同じ職場で働く意思があっても、異動を希望しても、手続きとして一年ごとに意思の確認が行われる。5年勤務で「無期雇用」に転換可能な民間企業とは異なる、不安定で非効率なシステムである。
差別的な呼称を変えること
労働現場では、働く者の「立場」に応じて正規社員・常勤職員と非正規社員つまりアルバイトやパート、非常勤、委託、派遣などという呼称が定着し、岩盤のように固く根づいている。こうした階級別の代名詞が、慣例として繰り返し使われている。経済的にも「夫の扶養範囲を越えない働き方」つまり低賃金・短時間をあたかも自分から望んでいること。さらに「正規、常勤とは異なる仕事、それ以下の仕事」だと能力を上から決めつけられ、それを反映した報酬によって、職場での低い地位は長期間固定化されてきた。
しかし本来、その人の能力と、その人が選ぶ仕事はイコールではない。非正規社員、アルバイトやパート労働者が正社員や常勤より優秀で生産性が高い例を、私は幾度となく見てきた。にもかかわらず待遇が低い上に、蔑視されてはたまらない。労働現場での賃金待遇の格差は、雇用制度や契約の問題であり、就労にあたって労働者が自由に選べるものでもない。
正規社員ではない労働者に対する「バイトさん、パートさん」などの差別的な呼称を、本人の名前を呼ぶ習慣に変えるべきだ。すでに部長や課長などの役職名での呼び方を廃止し、全社的に名字で呼ぶ企業もある。すべての階層のなかで自分より下の地位や職位の慣例に基づいて「上から目線」で優越感に浸ったり、自分を慰める必要がなくなるのではないか。
非正規にふさわしい仕事?
私のような「パートタイム会年職員」つまり労働時間が常勤より短く、退職金を払う必要がない労働者は、その短い勤務時間ゆえに常勤並みの仕事が与えられず、権限もなく、一年限りの勤めで技能の向上もない。仕事を与える側も、責任の小さい業務と承知のうえで毎日をやり過ごす。簡単な責任の軽い補助的な仕事に納得しようとする職員。いっぽうで、報酬と立場に見合わない常勤並みかそれ以上の高度な業務、専門的な資格なしに就けない仕事を担うものにとっては、会年制度は不当な待遇の強制に他ならない。
労働組合も常勤中心で、執行委員に非常勤職員が入っている例を私は知らない。労組はそれじたいが官僚的な組織であり、委員個々の姿勢や思想はともかく、職能階層を前提とした任意団体である。
会計年度任用職員制度を根本的に変えること。業務に対する信頼は、職員の技能の向上によってもたらされる。会年制度導入以前のプラスの部分を、現行制度に引き継ぎ、マイナスの部分は改善すべきであろう。私のような定年から時間がたっている労働者はともかく、若く将来のある非正規職員には、昇進と正規職員化の機会を均等に用意すべきだろう。
そもそも社員職員全員を正規化するべきであり、能力に応じて働き、労働に応じて得る体制を目指すべきではないだろうか。
週刊かけはし
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