宮城県知事選:現職が薄氷の再選

参政党が対立候補を全面支援

 【宮城】宮城県知事選が10月26日、投開票された。現職知事は6選を果たしたが、参政党が支援した無所属候補が激しく追い上げ、1万5千票余りの僅差にせまった。偽情報や誹謗・中傷が拡散、候補者が街頭で罵声を浴びるなど、全国紙も取り上げるほどだった。参政党は知事選後、次の衆院選宮城選挙区、宮城県議会と仙台市議会選挙への擁立に向けて踏み出している。

市民連合が政策要請/共同候補、及ばず

 長期県政をめぐって多くの弊害が指摘されてきた。6選目の県政が承認されるのか、新しい県政を出発させるか。その是非が問われる選挙だった。県会議員として活躍してきた遊佐みゆきさんが県議を辞して立候補を表明、県政転換に挑むことを明らかにした。
 遊佐さんは立憲民主党を離党、政党推薦を要請せずに「新しい福祉立県」をめざして闘うと表明した。立憲民主、共産党の県会議員たちは自主的な応援態勢をとった。地元選出の立憲民主国会議員たちも応援にかけつけた。
 市民連合みやぎは立候補表明を受けとめ、9月21日、村井県政を検証し政策要請を行う集会を開催した。医療、農業、教育、福祉など様々な運動を担う団体や支援者たちが集まり、ともに県政転換を実現しようと訴えた。5期20年、多選を重ねるなかで『独断先行』の姿勢を強め、水道民営化、県営住宅廃止、女川原発再稼働、宿泊税導入等々を強行してきた。「あまりの強引さゆえに、県立美術館、仙台圏4病院再編など、県民・当事者の反対の声で『頓挫』した政策」もあった。県民が主人公の県政へ転換させるときだ、と。
 宮城県知事選は過去に例のない、荒れた選挙戦となった。「刺さる言葉」がネット上に拡散するなか、遊佐候補は県議としての経験に裏打ちされた政策をていねいに説明、街頭を市民との対話の場とし、政治への要求を聞きつづけた。遊佐候補は17万6千票、一位の34万票、二位の32万4千票に続く三位だった。
 有力な候補者が三人立候補したことで投票率の上昇が予想された。結果は46%あまり、前回を10ポイント近く下回った。前回は衆院選と同一投票日で投票率は上昇した。そのことを考慮しても、荒れた選挙への戸惑いが影響しているだろう。

自民党前参院議員と参政党の合意

 村井知事は県議会9月本会議で立候補を正式表明した。同じく立候補を表明した和田前参院議員は、宮城を地盤とする比例区議員で、三期目をめざした7月参院選で落選していた。自民党保守系議員たちの相次ぐ比例区落選が話題になったが、和田前議員もその一人だった。和田前議員は自民党籍を保持したまま、自民党が支持する現職知事との対決に名乗りをあげた。
 参政党は先の参院選宮城選挙区で立民、自民についで三位に入っており、知事選擁立の可能性が指摘されていた。
 事態が大きく動いたのは9月12日、参政党が主催した仙台での公開討論会だった。参政党の参院選立候補者と和田前議員による政策議論の場で、参政党の神谷代表が提示する「5つのトピック」に対して二人が意見を交わすという設定だった。討論を通して両者の基本政策が一致しているとし、和田前議員の「無所属での立候補」など5項目の政策合意にいたった。その後、公表された政策覚書には、「水道の民営化見直し・再公営化の推進」「移民推進政策への反対」「土葬の不許可方針」「大規模メガソーラー・風力発電計画の抑制・停止」が列記されている。
 こうして参政党は独自候補の擁立を見送り、党としては自主投票としつつ、実際には和田候補への全面的な支援に乗り出した。神谷代表は四度も仙台入りし、街頭演説には回を重ねるごとに大勢の聴衆が集まった。所属国会議員らも仙台に送り込まれた。村井知事が当選直後、「まるで参政党と戦っているようだった」と疲労困憊して語ったような状況がつくりだされていった。

争点化された「水道」と「土葬」 

 参政党と和田候補の政策覚書に記された「水道」「土葬」などが勝敗を決する「争点」だったとはいえない。地元紙・河北新報の調査によれば、投票にあたって重視する政策は「経済」「医療福祉」「子育て・少子化」が上位で、「外国人受け入れ」(7位)とは大きな差があった。しかし、知事選の争点であると拡散されることで参政党への関心を高めた。
 エコロジーや農業などを意識的に取り上げ、影響を広げようとする参政党の動きが注目されてきた。参院選宮城選挙区の応援演説で神谷代表は、知事が実施した水道事業を「外資に売った」と批判した。事実ではないと知事は強く抗議、参政党は論争を県知事選に持ち込んだ。
 知事の重点政策だった上下水道と工業用水の「みやぎ型管理運営方式」(コンセッション方式)が始まったのは3年前だが、その以前、計画段階から県内で反対の声があがり、全国各地の市民運動と連携して運動が進められてきた。参政党が争点化したのは、県民のなかで続いている反対の声を意識してのことだろう。
 もう一つの争点とされた「土葬」について、知事は知事選を前に「検討の撤回」を表明した。知事の「土葬墓地整備の検討」には期待が寄せられていたが、一方、ネット上で問題とされ、県庁への抗議も起きた。当初から知事のトップダウン的な手法を懸念する声があった。議論を進めるためには丁寧な説明と県民の理解が不可欠だったからだ。けっきょく自治体首長からの理解が得られず、知事は検討自体を撤回したが、再選されたら検討が再開されるとの批判が選挙中も拡散された。
 河北新報は告示前一ヶ月あまりの投稿情報を分析、「X投稿/関東発4割超」と題した記事を掲載した(10月11日)。「地元宮城発は2割止まり」、東北各県はいずれも2%以下だった。
 知事選の主な関心分野としてあげられた10
項目のなかで、投稿は「多文化」「外国人」に関心が集中し、他項目を圧倒していた。単語別では「土葬」が最多だった。「土葬墓地検討/SNS投稿増」と題した記事によれば、投稿のほぼ全部が批判的内容だった。投稿者の年齢は40代が3割を越え、50代、30代が続いた。
 河北新報は選挙期間中の関連投稿に関しても詳報し、「SNSが全世代の投票行動に影響を与えた可能性がある」と指摘した(11月9日)。

次の選挙に備えよう

 大きな成果をあげた参政党は衆院選の宮城一区への立候補を表明している。さらに27年の宮城県議選と仙台市議選で仙台市内全5区に候補者を擁立、勝利する方針だと報じられた。神谷代表は地方議会への本格的な進出を念頭に、宮城県知事選を「ターニングポイント」にしようと呼びかけていた。
 県議選、市議選では票の争奪戦になると自民党の警戒感が紹介されている。しかし、参政党が現在の勢いを持続させるなら、選挙戦の様相が一変し、他の党への影響も避けられないだろう。和田候補が仙台市内全区の得票で現知事を上回ったのは、病院再編など村井県政への住民の批判が背景にあった。それらの運動の先頭には、住民たちと連携した立憲民主と共産党の市議会議員たちが立っていた。
 この間の国政選挙で自民党は宮城で大敗、衆参議員は各1人に激減した。立憲民主は衆院4人、参院1人となり、与党過半数割れに貢献した。市民連合みやぎは立民、共産両党と候補者たちに政策要請を行い、ともに奮闘してきた。総選挙は高市政権下で実施されることが想定される。次の選挙戦に備えよう。
(仙台・八木)

週刊かけはし

購読料
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00860-4-156009  新時代社