再審法の後退を許さない、再審法の改正を
元裁判官63人、刑事法学者135人が相次いで声明
真の改正を実現しよう
えん罪被害者の救済のために
【東京】12月10日、衆議院第2議員会館前で、再審法改正を求める国会前アピール行動が国会請願署名を行ってきた「再審法改正を求める市民の会」などよびかけ3団体が臨時国会での最後の要請行動を行い30人が集まった。えん罪被害者の桜井昌司さんの妻や狭山事件の再審請求人の石川早智子さんや国会議員が議連の提出した再審法の改正を実現するように訴えた。法制審のすすめる法改正が危険であること、改悪になることが露呈しつつあるが、それは議員立法よりも先に審議入りを目指しているからだ。
そうした動きに対して、元裁判官や法制関係者、ジャーナリストの江川紹子さんらが共同代表をつとめる「司法情報公開研究会」 が法制審を批判する声明を相次いで発表した。
法制審議会の危険な議論
裁判のやり直しに関する「再審法」をめぐっては、現在、法制審議会で改正に向けた議論が進んでいる。しかし、証拠開示や検察官による不服申し立て禁止などの論点について、委員から慎重な意見が多く、「現状よりさらに後退する」「えん罪被害者を救えない」と批判が高まっている。
こうした状況を受けて、12月2日、「再審法」の改正について、刑事法学者ら135人が、再審法改正について審議している法制審議会の議論内容に対する強い危機感を表明し、再審請求での証拠開示拡充や開始決定に対する検察官の不服申し立て禁止などの必要性を訴える声明を出した。
「報道ならびにこれまで公開された法制審部会の審議状況をみる限り、①証拠開示の範囲を新証拠と関連する部分に限るべきである、②違法・不当な再審開始決定に対する検察官抗告は必要であるといった議論が主流を占めている。再審法改正の必要を踏まえた意見なのか、疑問を生じさせる意見も少なくなく、冤罪被害者にとっては、パンの代わりに石を与えるものとなりかねない方向さえ見て取れる。多くの単位弁護士会が、議員立法による再審法改正の速やかな実現を求める声明を発出しているのも、このような審議状況への危惧に由来する」(刑事法学者共同声明より)。
さらに12月3日、元裁判官63人がえん罪被害者の「真の救済」を可能とする再審制度の実現を求める共同声明を出した(別掲)。そして「私たちは、再審事件を経験し、あるいは再審事件に関心を抱いてきた元裁判官として、再審事件の審理の実情を踏まえることなく、現状を安易に肯定するような意見には到底賛同できない」と記者会見を行った。
再審法の改正はえん罪被害者の救済であり、えん罪を作り出さないために必要不可欠である。法制部会による後退を許すな。再審法改正をめざす市民の会が再審法改正(刑事訴訟法の一部改正)を求める国会請願署名を行っている。ぜひとも、多くの署名を集めて、再審法の改正を実現しよう。 (滝)

「再審法改正を求める市民の会」など国会前要請行動(12.10)

石川早智子さん(狭山事件再審請求人)
資料
再審法改正に関する元裁判官の共同声明
現在再審制度の改正についての議論が本格化している。
これは、近時いくつもの再審無罪判決が出され、とりわけ昨年の袴田事件の再審無罪判決により、現在の再審制度ではえん罪救済という再審の目的を実効的に実現できないことが広く社会で認識された結果である。
このような状況を受けて、超党派の国会議員の有志が「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」を設立し、えん罪被害者をはじめとする各種ヒアリングを行って、再審制度の喫緊の課題を解決すべく「刑事訴訟法の一部を改正する法律案」をまとめ、令和7年6月18日数党が共同で国会に提出した。この法案は、請求人側に証拠開示請求権を認め、速やかに証拠開示がなされるように、検察官に開示を命じる権限はもとより、一定の場合には命じる義務を裁判所に認めるものであり、また、再審請求事件長期化の大きな原因である開始決定に対する検察官抗告を禁止する、さらには、同じ裁判官による判断を避けるための除斥、審理の円滑化及び迅速化を図るための期日指定などの手続規定を設けるというものである。
時を同じくするように、法務大臣の諮問機関である法制審議会に刑事法(再審関係)部会(以下「部会」という。)が設置され、諮問事項である刑事再審に関するいわゆる証拠開示、再審開始決定に対する不服申立て等の規律について、令和7年4月21日から議論が始まった。
部会における論点は多岐にわたっているが、部会で最も先鋭に対立している論点は、前述した証拠開示及び開始決定に対する検察官抗告の可否である。対立の原因の一つとして、再審請求事件の審理の現状に対する認識の相違がある。
再審が開始され、無罪になった事件の多くにおいて、決め手になった証拠は、請求時に請求人側が提出した新証拠ではなく、それまで捜査機関の下で眠っていて、弁護人の度重なる求めによってようやく開示された証拠である。しかし、請求人側は検察官等が保管するそのような新証拠を提出することはできず、しかも、検察官が証拠を開示しない、または開示するまでに、時には何年、何十年もかかっている。このことは、再審によるえん罪救済が極めて困難で、救済できたとしても長期間を要している大きな原因となっている。なぜ証拠開示が進まないのか、その原因は、検察官に証拠の開示を義務付ける法律がないことにある。裁判所は、明確な条文上の根拠がないために検察官に証拠開示を命じることに躊躇し、検察官は、法律上の根拠がないとして開示の求めに応じないのである。
このような再審請求事件の審理の現状を直視すれば、現状を肯定的に評価することなど到底できないはずである。しかし、多くの部会の委員は、現状に大きな問題はないかのような評価をし、請求人側に証拠が開示されやすくするような法規制に反対している。さらに、反対意見においては、証拠開示の規定は設けるものの、開示の対象を請求人側が提出した新証拠とその請求理由に関するものに限定し、それ以外の証拠については、裁判所は開示を命じることはできないとする趣旨を述べるものがある。しかし、これは、裁判所が職権によりある程度広範な証拠開示を求める場合もある現状よりも、明らかに証拠開示の範囲を狭める結果をもたらすもので、改悪以外の何ものでもない。
検察官抗告についても、再審請求事件においては、検察官は当事者ではないことを認めつつ、公益の代表者という資格で、確定判決が簡単に覆されるべきではないという法的安定の見地等から抗告できるとの意見が多く、学者委員ですらもほぼ全員が検察官抗告の禁止に反対している。しかし、再審開始決定は再審が開始されるだけの中間的な決定であり、検察官は再審公判で有罪の主張・立証ができる上、当事者ではないのに不服申立権を認めることは上訴制度一般と整合しない。そして、検察官抗告を禁止すべしとの意見は、この不服申立てによってえん罪救済が長期化し、えん罪被害者に回復し難い苦難を与えているという現状、立法事実に根ざしている。これに反対する意見は、このような現状に目を瞑るものであり、これでは全く現状の改善に繋がらない。再審を研究している刑事法学者は、こぞって検察官抗告を禁止すべきであると主張しているのである。
私たちは、再審事件を経験し、あるいは再審事件に関心を抱いてきた元裁判官として、再審事件の審理の実情を踏まえることなく、現状を安易に肯定するような意見には到底賛同できない。
今、再審制度について議論しているのは何のためなのか。それは、えん罪という国家による最大の人権侵害の被害者を速やかに救済するためである。そのことが、改めて確認されなければならない。
国会には、その目的に沿って、速やかにこの法案の審議に入ることを求める。
部会には、現状を見据えた上でその目的に沿った議論を尽くし、我が国の再審制度が真にえん罪救済のための実効性のあるものとなるような答申をされるよう強く求めるものである。
令和7年12月3日
(63人の元裁判官名略)
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