投書:子ども版『防衛白書』からみた自衛隊のいま

初めての小学校配布

 11月中旬に開かれた、〝知っていますか?子ども版「防衛白書」のこと〟と題した北京JAC(世界女性会議ロビイングネットワーク)のオンライン学習会の参加。フェミブリッジなどの活動をする市民連合あだちの西山千恵子さんのレポートによって新たな情報・問題点を知った。子ども版の2023年版まであった憲法9条の説明が24年版では消え、「日本を他の国から守ってくれる警察のような存在はいりません」「〝日本を攻撃するのはやめておこう〟と思わせることが必要」と抑止力を強調。例として、ウクライナが十分な力を持たないからロシアに侵略を思いとどまらせることができなかったという偏った情報が掲載されている。
 防衛省・自衛隊サイトのトップページを開くと左上に「自衛官募集」「キッズ」「EN(英語ページ)にリンクする小さな3つのボタンが並ぶ。https://www.mod.go.jp/index.html
 キッズのボタンをクリックすると、「まるわかり!日本の防衛」最新版のイラストのボタンを押すと目次ページが開く。
 目次から「自衛隊の災害派遣」「自衛隊員について詳しくなろう」「防ぐ」「務める」「備える」「自衛隊図鑑」などのページにとぶ。この「まるわかり!日本の防衛」最新版は7月にネット公開され、36頁の冊子は無料でダウンロードできるようになり、8月から Amazon や政府刊行物センターで400円+税で販売されている。同冊子と同時期に発売された『防衛白書』(1350円+税)の表紙のイラストの自衛官3人は同一人物だ。
 最新の「白書」は7月15日の閣議で配布され、表紙が付いた販売用が製作される。ちょうど1週間前の7月8日付の長崎新聞サイトに〝子ども版「防衛白書」の小学校配布 長崎県内の関係者、対応に苦慮「差別や誤解生みかねない」〟と題した記事が掲載された。「昨年末、九州防衛局から学校に冊子を配布する旨の連絡が入り、県内の各小学校には5月ごろ、各10部ずつが配られた」という。7月13日付の長崎放送サイトでは長崎市内67の小学校に九州防衛局から「まるわかり!日本の防衛 はじめての防衛白書2024」が直接送られ、「全国約2400の小学校に約6100冊が送付された」という防衛庁情報を報じている。子ども版防衛白書は21年から毎年作られネット上で公開、学校への送付は今年度が初めてだという。報道の数値をみると、全国のほぼ4割が長崎県内で配られたことになる。

子ども版の成り立ち

 22年3月18日の自民党YouTube公式チャンネルで当時のネットメディア局次長だった小野田紀美参院議員が司会をする番組のインタビューや自身のチャンネルで防衛大臣政務官だった松川るい参院議員が成り立ちを明らかにしている。そこで松川は「自身の長女からの(通常の)防衛白書は分かりにくいという一言を受けたのが企画作成のきっかけだった」と語っている。
 キッズサイトの「まんがで読む防衛白書」のページには〝平成18年版から平成元年度版〟までのバックナンバーが紹介され、「配布を希望される学校、団体等に対しては、無料(送料含む)で1団体につき3部まで送付いたします」「在庫がなくなり次第、送付を終了させていただきます」と入手方法が明記されている。これらの記述から、①少なくとも06(平成18)年版から作成されている、②希望があればバックナンバーを無料で送ってきた、③希望なしで送ったのは今年の24年版がはじめてであることがわかる。在庫整理のための小学校への2回目の配布を前提として最新の25年版の制作が行われたのだろう。この配布をやめさせる闘いをはじめようではないか。
 では、7月に公開された25年版の特徴はどこにあるのだろうか。

最新版は自衛隊員に重心

 表紙等を除き34ページの目次を紹介する。1~5が①自衛隊の災害派遣、6が目次、7~16が②自衛隊員について詳しくなろう、17~20が③自衛隊の装備品について詳しくなろう、21~24が④自衛隊の活動や任務について詳しくなろう、25~28が⑤どんな国と協力しているの?、29~30が⑥自衛隊の一番大事な仕事。10ページを占める②自衛隊員についてが食事で2ページ半を占めるなど重心が置かれていることがわかる。
 31ページ以降は巻末資料として広報施設・イベント紹介、防衛省・自衛隊のコンテンツ、理想の未来を実現する多種多様なコースの3つを二次元コード付きで紹介。コースの1つ陸上自衛隊高等工科学校生徒の対象年齢は中卒(見込)を含め17歳未満の男子、28年度から海・空の生徒も受け入れ、男女共学となると書かれていて、二次元コードにスマホをかざすと全20ページの受験案内がダウンロードされる。
 手元にあるバックナンバーである23年版、24年版にも前記の 防衛省・自衛隊サイトトップページの「自衛官募集」にとぶ二次元コードがあるが、最新版はスケールが違う。今年の配布は最新版を来年配布するための予行演習ではないのか。

若者が自衛隊を避ける理由

 自衛隊は2024年度末時点で定員約24万7千人に対し、約2万3千人不足。
 12月3日、テレビ朝日系列のワイド!スクランブルでは次の2つを「深堀ポイント」とした番組を放送した。①兵力増強を進めるドイツ〜徴兵制の復活の議論も、②自衛隊の人手不足どう解消?〜処遇改善やAI活用がカギか。
 海上幕僚長、統合幕僚長を務めた河野克俊が若者が自衛隊を敬遠する理由として、「①機密情報の観点からスマホの使用一部制限。それがスマホが使えて当たり前の若者達の障壁となっている。②いまだに自衛隊は憲法違反とされている」と語ったビデオが放送された。河野は海上自衛隊トップの海上幕僚長を経て制服組のトップである統合幕僚長に就任、3度の定年延長を経て19年に退官、川崎重工と三菱重工の顧問を務める。
 AIに「自衛隊入隊が敬遠される理由トップ10」をきいてみた。5つだけを列記する。①厳しい上下関係と団体行動、②プライベートな時間の制限、③肉体的・精神的な訓練の厳しさ、④危険を伴う任務、⑤希望しない部署への配属や転勤。なお、AIへの質問を「トップ5」や「トップ3」にすると上位が入れ替わる。繰り返し調べた理由は「パワハラ・セクハラ」が出てこないからだった。「自衛隊内で起こる犯罪の上位3つは?」では、トップがハラスメント(パワハラ、セクハラ)関連。2位が特殊な手当の不正受給などの金銭・経済犯罪、3位が規律違反・公務員としての品位を損なう行為であった。
 「週刊かけはし」のサイトに反戦自衛官のアーカイブを加えた特集コーナーを開設してはどうだろう。(KJ/12月5日)
 

週刊かけはし

購読料
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00860-4-156009  新時代社