高市首相の熊本訪問の怪

コラム「架橋」

 首相官邸がXに投稿した高市首相の熊本地震被災地視察の動画が物議をかもしている。当然だと思う。私もその動画を見た時はびっくりした。
 水色の防災服を着た高市首相を前にして、避難所での生活を強いられている女性が「至れり尽せりで、感謝しています」と、何度も何度も感謝の言葉を述べていたからである。
 私はこの動画をSNSで見たわけではない。たまたまニュース番組を見ようとテレビをつけた時に、このシーンが目に、そして耳に飛び込んできたのである。私は一瞬、熊本の被災地で何が起きたのかと思った。
 だって、そうではないか。私は官邸による高市首相の礼賛動画とは思わず、一般的なニュース報道だと思ったのだし、どのテレビ局も被災地の惨状を、被災者の過酷な生活の実情を、そして被災者の悲痛な声を、連日多くの時間を使って報道していたのだから。
 その動画に続き、ヘリコプターの窓から被災地に向かって手を合わせ、飛行機のタラップをカッコよく(?)降りる防災服姿の高市首相の動画が続く。テレビ局のアナウンサーの解説で、感度の鈍い私もこの動画がこのテレビ局作製のものではなく、首相官邸作製の高市礼賛動画だと理解した。
 大震災が起きた時の為政者に対する批判は常にキビシイものである。阪神大震災時の村山首相、東日本大震災時の菅首相に対する批判も厳しかった。首相官邸はそうした批判から首相を守りたかった、いや、震災を利用して、高市早苗推しを広げようと思ったのだろう。
 しかし、私は思うのだ。救援に真摯に取り組み力及ばず批判される方が、震災の時に自らのかっこいい動画を発信した首相と記憶されるよりもマシではないのかと。
 そして、私には楽しみが一つできた。来年4月、食品の消費税が1パーセントになった時、消費者の感謝の言葉を聞く高市首相の官邸作製動画を見ることである。    (O)