熊騒動の10日間
コラム「架橋」
北関東の50万都市・宇都宮の中心街に一頭のツキノワグマが現れた。その体長は約1メートル、体重約100キロの成獣。雄クマだった。最初、住民に目撃されたのは北部丘陵に造成された団地の一角。
もちろん多数の住民が居住し、車の往来も激しい場所である。いままでクマ出没の噂も情報も皆無で、携帯カメラで撮影されたその姿に団地のみならず街中がパニックに襲われた10日間だった。
去年から今年にかけて日本中で、ツキノワグマやヒグマによる獣害が頻発し、多数の死者や負傷者が出ていることは承知の通りだ。山中のブナの実の不作や、山林と市街地の緩衝地帯だった里山の減少、加えて人間が放置した食料の残渣に味をしめたことなどクマ出没の要因は枚挙に暇がない。まして、人間や火を恐れない習性が身についてしまっているらしいから困ったものだ。
動物愛護団体による殺処分に抗議する意見も理解できるが、獣害被害の拡大も地域によっては死活問題に違いない。春先の山菜とりや夏の登山シーズンなどクマと人間が出くわす機会はある意味非日常の出来事ではなくなった。つい最近もハイキング中に、子グマと登山道で出くわし驚いたあまり10メートルも谷に落ちたとか、北海道ではやはり登山道でヒグマの姿を発見し、被害はなかったものの警察のヘリコプターで救助されたというニュースを目にしたばかりだ。
話は戻すが団地に現れたクマはその後、市街地を縦横無尽に動き回り、被害防止の観点から市内の小中学校は臨時休校になったほど。また、市街地の中心である繁華街を深夜に疾走し、危うく通行人と接触しそうになった様が防犯カメラに撮影されていた。
クマの行動範囲は1日数キロから十数キロ移動することは当たり前で、走行速度は時速50キロを超えることもあるという。
街中を走り回ったクマもたぶんパニック状態であったのだろう。最後は、中心地からかなり離れた小河川を泳いで北上し、岸からフェンスをよじ登り住宅街で猟友会の手により殺処分にされた。
人間と野生動物の共存こそエコそのものではなかろうか。 (雨)

