脱成長論とエコロジー社会主義の対話のために ③

「より少なく、より豊かに」は労働者階級の要求だ

生産能力に対する民主的な支配権を取り戻し、豊かな生態系を持続可能にする

労働運動の政治的視野を広げることと、生産・金融に対する民主的な統制を実現すること

 だから労働組合は戦術を変える必要があります。私は外部からの批判者としてではなく、一人の長年の組合員としてそう主張します。私たちはどうやって労働運動の政治的視野を賃金や労働条件をめぐる個別セクターの闘いに狭めてしまい、他のセクターの労働者や労働者以外の人たち、あるいは失業者の福利を全く考えることなく、この不平等で生態系を破壊する経済の全体的な構造を放置してきたのでしょうか?これは間違っています。労働運動の政治的視野は、生産と金融に対する民主的な統制を実現し、福利と生態系を中心にして再編することに向けられるべきです。そこに答があります。
 そのためには雇用保証のような政策が正面かつ中心に据えられるべきです。それこそが環境保護活動家と労働組合の間に広範な合意を築く方法です。この観点から見れば、既存の緑の党のほとんどが正しい方向に進んでいないことがわかります。彼ら・彼女らは環境問題について語りますが、社会的な政策については通常、何も語りません。はっきり言いますが、これでは日々の生計に苦闘している労働者階級コミュニティとは決してつながりません。仲間を軽蔑するような、近寄りにくい印象を与えます。環境保護活動家は労働者階級の「パンとバター」への関心に働きかける政策を前面に掲げる必要があります。緑の党は解散して、エコ社会主義の政策と議論を中心に再構築し、労働者階級的なベースの確立を目指すべきです。
 このすべてが一つの全く異なるアプローチに帰結します。それは人々を中心に据え、罪悪にまみれた個人としてではなく、変革の主体として位置づけることです。私たちこそ人民であり、国家の集合的な富を生み出す主体です。今、私たちは自分たちが生産している物を支配できず、無力化され、資本の人質となり、直面する社会的・生態学的緊急事態を解決できません。私たちは、本来あるべき社会の惨めな陰影の中で生きているのです。この分岐点における私たちの歴史的課題は、自分たちの生産能力に対する民主的な支配権を取り戻し、より良い文明を構築できるようにすることです。

リベラリズムの崩壊、既存秩序への広範な反発に働きかけるチャンス


アハーン:現在の状況は深刻です。ドナルド・トランプが米国大統領に就任し、ガザでは虐殺が続いており、英国の労働党政権は非常に不人気です。あなたにとって、より良い世界が可能だという希望、インスピレーション、信念を与えているのは何ですか? 私たちは誰にリーダーシップと組織化する能力、そしてより良い世界の構築を先導する役割を期待できるでしょうか?

ヒッケル:現在の状況が私たちに教えていることは、リベラリズムが崩壊しつつあるということだと思います。私たちが直面する社会的・生態学的危機に対して、リベラリズムは首尾一貫した対応策を持っていません。これがイデオロギー的な空白を生み出し、その空白を極右が埋めています。しかし、言うまでもなく極右が提示しているのは偽りの政策であり、労働者階級の一部を、最終的にはエリートの階級的利益をさらに打ち固めるようなプロジェクトに引き込もうとするシニカルな試みに過ぎません。これは社会主義的政策にとっては、空白に踏み込み、現在非常に顕著になっている反エスタブリッシュメント感情の深い流れに働きかけて、直面する危機への真の解決策を提示する一つのチャンスです。
 もちろん帝国の中枢を占める支配階級は「社会主義」という言葉を悪魔化するために膨大な努力を注いできました。彼らがそうするのは、社会主義がいかに有望な展望であるか、いかに大衆的支持を獲得できる魅力的な対案であるかを知っているからです。だからこそ私たちはこの現実性の中で行動しなければなりません。ヨーロッパの多くの国では「社会主義」は効果的な大衆向けのスローガンとなるかも知れませんが、米国のようなところではそれはあまりに親しみがなく、恐ろしい響きがあります。そんなことにかまっている必要はありません。大事なのは言葉ではなく、政策そのものです。

アハーン: あなたの今後の計画を教えてください。今取り組んでいるワクワクするようなプロジェクトはありますか?

ヒッケル: はい。私たちは欧州研究会議(ERC)からの資金による大規模なプロジェクトを進めています。40人ほどの研究者が参加し、エコ社会主義、脱成長、不平等な交換、切り離し、政治的転換に関する実証研究に関わっています。このグループから多くの刺激的な出版物が生まれるでしょう。ぜひ注目してください。個人的な活動としては、最新の研究成果は jasonhickel.org/research で公開しています。より気軽に読める文章は jasonhickel.substack.com に掲載しています。また、私たちは資本主義・帝国主義・生態学に関する研究とデータに特化した新しいサイト「Global Inequality Project(グローバル不平等プロジェクト)」(globalinequality.org)も開設しました。次作となる書籍については、現在進行中の刺激的な企画がありますので、ご期待ください!
別掲
*『Break Down』は社会変革をめざすシンクタンク「Common Wealth」が主宰する非営利のプロジェクトで、「気候・生態系危機の政治経済の探求」を目的として2024年5月から年2回刊の雑誌(英語、紙媒体および電子版)を発行している。読者の登録(無料および有料)を募集している。詳しくはホームページ(https://www.break-down.org/)を参照されたい。 
本稿の原典は以下からダウンロードできます:https://www.break-down.org/interview-with-jason-hickel-degrowth-is-a-gateway-into-socialist-thought-for-the-21st-century/
(おわり)

The KAKEHASHI

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