フレデリック・ロルドンの「不服従のフランス(LFI)」批判について①
「不服従のフランス」は反資本主義なのか?
2026年1月6日 アダム・ノバック
はじめに(訳者による解説)
本資料集の②は、①で紹介したセドリック・デュランドとエフゲニー・モロゾフの論争の政治的背景として、フランスの新人民戦線の中心となっている「不服従のフランス(LFI)」の綱領的文書をめぐるフランスの左翼内の議論の経緯と論点の概略を簡潔に紹介した最近の文書である。
関連して日本語で入手できる本およびブログを以下に紹介する:
〇ジャン=リュック・メランション(著) 松葉 祥一(監修, 編集)『共同の未来: 〈民衆連合〉のためのプログラム』(法政大学出版局、2024/7)
https://www.h-up.com/books/isbn978-4-588-60375-4.html
〇フレデリック・ロルドン著、杉村昌昭訳
『私たちの“感情”と“欲望”は、いかに資本主義に偽造されているのか? 新自由主義社会における〈感情の構造〉』(作品社、2016/10)
https://www.sakuhinsha.com/politics/26023.html
〇フレデリック・ロルドン著、杉村昌昭訳
『なぜ私たちは、喜んで“資本主義の奴隷”になるのか?──新自由主義社会における欲望と隷属』(作品社、2012・11)
https://sakuhinsha.com/politics/24173.html)
フレデリック・ロルドン(Frederic Lordon)はフランスの経済学者・思想家。1962年生まれ。2016年の「Nuit debout(ニュイ・ドゥブ)」(夜、立ち上がれ)では理論的リーダーとして先鋭な理論を展開した。哲学者スピノザの思想を現代資本主義社会の社会科学的分析に応用するなど理論家としても注目を集め、経済学を超えて思想・哲学の分野にまで影響を及ぼしている。
著者のアダム・ノバックは「ヨーロッパ国境なき連帯(FSSF)」の活動家・研究者。
原文(英語)はFSSFのブログからダウンロードできる(無料)。表題と小見出しは原文に従っている。脚注は省略。
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哲学者フレデリック・ロルドンと「不服従のフランス(LFI)」の間のやり取りは世界のエコ社会主義者の戦略にとっての中心的問題を提起している。議会主義的な左派勢力が本当に資本主義に挑戦できるのか、また、何が修辞的な反資本主義と真の反資本主義を分かつのか、という問題である。
25年10月にフランスの哲学者であり経済学者であるフレデリック・ロルドンは、フランスの主要な急進左派組織である「不服従のフランス(LFI)」が反資本主義を自称するに値するのかと問う挑発的なエッセイを発表した。彼の答は「まだだめだ。本気で反資本主義だとは思っていないだろう」。
2016年にジャン=リュック・メランションによって設立された「不服従のフランス(LFI)」は2022年大統領選挙の第1回投票で22%の得票率を獲得したが、僅差の3位で、マリーヌ・ル・ペンとの決選投票には残れなかった。LFIは24年の議会選挙で予想に反して最多議席を獲得した左派の連合「新人民戦線(NFP)」の中心となっている。LFIの綱領「共同の未来」はエコ社会主義、第六共和制憲法、60歳定年制、そしてEUの財政制約からの離脱をメインのテーマとして構成されている。LFIは西欧における最も有力な社会民主主義左派の組織であり、政権獲得の現実な可能性がある。
そういう背景の中でロルドンのエッセイは大きな議論を巻き起こした。LFIが運営するラ・ボエティ研究所のアントワーヌ・サレス=パプー所長が『コントルタン』誌に長文の反論を掲載した。ロルドンはそれに反論する形で11月にこの問題について再論した。
知的才能と理論的野心
ロルドンはこの再論を意外と思えるような認識から始めている。彼は第五共和政の政治家の中でジャン=リュック・メランションのような知的才能を持つ者はいないと書いている。彼によると、ド・ゴールの思想は「フランスについてのある種の考え」を超えることはなく、ミッテランの文学的教養は彼に資本主義社会への理解を与えなかった。そしてその後に「愚劣な会計士とファシズムを推進する偏屈者たちの時代」が到来した。メランションの知性は「不服従のフランス(LFI)」を「人々が自分たちで思考する唯一の政治組織」へと作り上げたし、ラ・ボエシー研究所は「驚くべき成功」である。
ロルドンは「不服従のフランス(LFI)」の野心を真剣に受け止めている。なぜなら、運動自体がそれを真剣に受け止めているからだ。最近出版された論集『新しい人民、新しい戦線(Nouveau peuple, nouvelle gauche)』は現代の状況に合わせて左翼理論を刷新しようとする真摯な試みである。ロルドンはこの刷新が重要な分岐点で誤った方向に進んでいると論じている。
テクノ封建制の罠
ロルドンが発言を開始した直接のきっかけは「不服従のフランス(LFI)」の分析の中心概念である「テクノ封建制」をめぐる論争であった。25年8月に技術評論家のエフゲニー・モロゾフは『ル・モンド・ディプロマティーク』紙上でこの概念を痛烈に批判し、巨大テクノロジー企業は封建領主のように貢納を集積しているのではなく、巨額の投資を行い(Meta, Microsoft、Alphabet, Amazonが25年に計画しているAIインフラは約3200億ドル)、熾烈な競争を繰り広げ、生産財を販売する典型的な資本主義企業として行動していると主張した。
メランションは出版記念会でモロゾフについて「私を戒める誰かさん」と軽蔑的な言い方で言及した。ロルドンはこれでは不十分だと指摘し、「モロゾフは村の世間知らずではなく、丁寧な反論に値する」と述べた。
ロルドン自身もモロゾフに対して反論している。彼はモロゾフが資本主義的生産様式の枠内にある体制を、資本主義以前の生産様式を思わせる名前で呼ぶのは奇妙なことだと指摘して、「まるで政治的啓蒙主義という神学的体制が存在すると言うのと似ている」と述べている。
さらに、ロルドンは本質的な議論として、経済学者セドリック・デュランがテクノ封建制を定義するために提唱している3つの基準を検討している。それは、①極度の依存性(人々が広義の「領地」に閉じ込められている)、②個別資本家の権力が経済的・政治的権力と不可分に結びつくほどの支配力を持つこと、③容赦ない略奪、である。しかし、これらの基準はすべて「化石資源資本主義」にも同様に当てはまる。自動車と石油を考えてみよう。自動車への依存はインターネットへの依存に十分に匹敵する。トタルは私兵組織に匹敵する自家用航空機や自分の警備サービスを運用し、独自の地政学的戦略を遂行し、国家元首と直接に交渉し、必要に応じて彼らを堕落させたり打倒したりしている。だからそれを「石油封建制」と定義するべきなのだろうか、とロルドンは問う。
翻訳資料集:巨大テクノロジー企業と現代資本主義
「テクノ封建制」理論と左派ポピュリズムをめぐる論争② (つづく)
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