同性婚の法制化を実現しよう

性的マイノリティの諸権利の法的保障を

 10月30日、東京高裁(谷口恵裁判長)は「結婚の自由をすべての人に」東京第一次訴訟(7人の同性カップル/2019年2月14日提訴)に対して「同性婚を認めない民法規定は『違憲』」だとする判決を出した。
 続いて12月13日、福岡高裁(岡田健裁判長)は、「結婚の自由をすべての人に」九州訴訟(3組の同性カップル/2019年9月5日)に対して同性婚を認めないのは「憲法13条の幸福追求権の侵害」だと判断した。
 このような連続的な違憲判決に対して石破政権はどのような態度をとるのかとして鋭く迫っていることは明確だ。10・30判決は「憲法違反だということが現時点において明白であったとはいえず、国家賠償法上違法とはいえない」として請求を棄却している。同様に12・13判決も国への損害賠償請求は棄却している。つまり、政府・国会の立法不作為、同性婚法制化のサボタージュに対して厳しく指摘しているにもかかわらず、それ以上、踏み込んで提示していない限界性がある。だから言い訳として10・30判決は「憲法上の要請として(同性婚法制化)の帰結が導かれることが認識されるようになったのは比較的最近のことであり、概ね同旨の司法判断が積み重ねられつつあるものの、最高裁による統一的判断は未了であることに照らすと、そのことが現時点までに国会にとって明白になっていたとはいえない」と提示した。
 要するに最高裁判断まで待っていろということだ。数々の踏み込んだ憲法判断をしているにもかかわらず、最終的な結論については最高裁に委ねるという無責任な態度をとったにすぎないのだ。
 10・30判決に対して原告は上告した。原告の小川葉子さんは「東京高裁の判決もかなり踏み込んだ判決でしたが、今の憲法では配偶者と呼ぶことはできないと突きつけられたように感じています。同性カップルが希望を持って結婚でき、ほかの人と同じように生きていける社会になるよう、最高裁には踏み込んだ判決を期待したい」と述べている。司法の無責任な態度を許さず、国は1日も早く同性婚法制化制定を行え!

同性婚違憲判決の共有化を

 これまでの「結婚の自由をすべての人に」の裁判では、以下のように憲法判断をしている。
 ①札幌地裁(2021年3月17日/14条1項の法の下の平等に違反) ②大阪地裁(22年6月20日/合憲) ③東京地裁(1次)(22年11月30日/24条2項〈個人の尊厳と両性の本質的平等〉に違反する状態) ④名古屋地裁(23年5月30日/14条1項、24条2項に違反する状態) ⑤東京地裁(24年3月14日/24条2項に違反する状態) ⑥札幌高裁(24年3月14日/憲法24条1項違反) ⑦東京高裁(24年10月30日/同性婚を認めない規定は「違憲」) ⑧福岡高裁(24年12月13日/憲法13条の幸福追求権の侵害」)。このように司法の流れは、ほぼ「同性婚法制化」の傾向にあることは確かだ。
 ところが石破首相は、12月5日の参院本会議で打越さく良参議院議員(立憲民主党)の「同性婚の法制化を行うべきだ」という質問に対して、「国民一人ひとりの家族観に密接に係る。訴訟の状況について注視していく必要がある。これが政府の立場。苦しむ方、悲しい思いでいる方の気持は十分理解しているつもりだ。指摘を踏まえ、政府として答弁の通り対応したい」と述べた。結局、10・30東京高裁と12・13福岡高裁による不十分な判決に依拠して同性婚法制化の先送りを正当化しているにすぎない。
 選択的夫婦別姓法制化サボタージュと同様に石破と自民党内慎重派は、自民党を支える宗教右派による縛りによって、つまり、天皇制家父長制維持を基本柱とする日本会議、神道政治連盟、旧統一協会の「婚姻・家族制度解体反対」の立場などの反対勢力によってブレーキをかけられているのだ。それだけではない! 日本に根深く存在している女性差別主義に満ちた家父長制の存続、異性愛社会の否定、性的マイノリティに対する差別・嫌悪なども作用している。これらは連動し、連鎖反応を引き出しながら差別主義を増幅、拡大している。このような流れが現実に温存され、助長してきたからこそ、10・30東京高裁と12・13福岡高裁判決が示した人権重視の立場はあらためて確認し、共有化していく取り組みが重要だ。

同性婚法制化は可能だ

 10・30東京高裁判決のポイントは、こうだ。
 ①憲法24条「両性」の文言について、「同性間の人的結合関係に法的な保護をあてないという趣旨ではない」「同性婚を認めないことは、憲法14条1項の法の下の平等に違反する」。
 ②「性的指向による差別は許されない」「配偶者としての法的身分関係の形成ができることが、個人の人格的存在と結びついた重要な法的利益であり、男女間と同様に同性間でも尊重される」。
 ③「自然生殖可能性は婚姻の不可欠な目的ではなく、法的な利益は同性カップルにとっても重要」。
 これらに対し、国は「婚姻の目的は男女が子どもを産み育てながら共同生活を送る関係を保護するもの、カップルの間で自然生殖可能性のない同性カップルは当てはまらない」など差別主義に満ちた生殖関係保護説による反論を平然と主張してきた。ならば生殖関係がなければ法律婚を認めないというのか! このような暴論は両判決によってことごとく粉砕されてしまったと言える。
 12・13福岡高裁判決は、①同性婚を認めない法規定は幸福追求権を保障した憲法13条に違反 ②法の下の平等を定めた14条1項、個人の尊厳と両性の本質的平等を掲げた24条2項 ③新たな家族を創設したいという願望は男女と同性ど変わりがない ④同性婚は幸福追求権を制約する公共の福祉にも反しない ⑤パートナーシップ制度の拡充などでは不平等は解消されない─と鮮明に言い切っている。
 毎日新聞の同性婚に関する衆院議員アンケート(24年10月)によれば、465人中の過半数の52%の242人が「賛成」、「反対」は24%(111人)、未回答・無回答は24%(112人)という結果が出ている。
 政党別でも「賛成」が自民党が191人中26人、立憲民主党が148人中129人、日本維新の会が38人中28人、国民民主党が28人中18人、公明党が24人中21人という結果だった。同性婚法制化は現実問題として可能なのである。(遠山裕樹)

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