投書 「前科者」

SM

 「前科者」(監督・脚本 岸善幸(きし・よしゆき)、2022年製作、制作国 日本、133分、原作 同名漫画(香川まさひと、作画月島冬二))のDVDを観た。
 この映画は「罪をおかした人」の更生をサポートする無報酬の国家公務員である保護司と「罪をおかした人」の交流を描いている。保護司の阿川佳代を有村架純が、「罪をおかした人」(工藤誠)を森田剛が演じている。
 人間は、みんな平等だ。平等でなければならないはずだ。「罪をおかした人」も「おかしていない人」も同じ人間であることに違いはない。だが、私の誤解でなければ、『毎日新聞』が「罪をおかした人」によりそう記事を夕刊に少し載せているぐらいで、社会は、特にマスコミは「罪をおかした人」を人間あつかいしていないのが現状だ。この映画には「前科者」「人間になって、もどってきてください」といった表現もでてくるが、「罪をおかした人」を同じ人間として描いている。私はそう感じた。
 「出所してきても社会はきびしいかもしれない」「つらくなったら私を訪ねてください。私がお手伝いします」という意味の保護司のことばに心をうごかされた。「罪をおかした人」に「友達だから」と保護司がいうシーンが良いと思った。有村架純らの演技に心をうごかされた。「罪をおかした人」は、広い意味で社会の被害者だ。社会の被害者を救うのは、社会の側の責任だ。社会の責任として「罪をおかした人」を救いださなければならない。「罪をおかした人」も「おかしていない人」も、すべての人がひとしく幸せに生きることができる社会をつくらなければならない。私はそう思う。
 この映画はとても良かった。ただ、第1に「前科者」という表現に違和感をおぼえた。第2に「罪をおかした人」に「人間になって戻ってきてください」という意味のセリフに違和感をおぼえた。第3に「刑務所にはいった人」にはその人が悪いことをした場合もあれば、国家の側が全面的に悪い場合もある。後者は、えん罪や「政治犯の1部」の人の場合などだ。「前科者」にはこういう人たちの問題は描かれていない。そう思った。第4に「ホレんじゃねえぞ」というのはよけいなセリフだと思った。第5に元「奥さん」という言いかたに違和感をおぼえた。第6に保護司が自転車にのっているシーンをみて、自転車はキライなので、良く思えなかった。
(2023年3月25日)

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