投稿 徴用工「解決策」を考える

レイバーネット日本の記事を読んで
日本のメディアはひどすぎる
SM

 韓国政府は元徴用工訴訟を巡り、被告の日本企業が原告らに支払う賠償相当額を、政府傘下の財団に肩代わりさせる内容の解決策を発表した(2023年3月7日・火曜日『東京新聞』朝刊5面・社説)。
 岸田文雄首相は国会答弁で、「日韓を健全な関係に戻す」ための措置だと評価し、「歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいるし、今後も引き継いでいく」と述べた(2023年3月7日・火曜日『毎日新聞』朝刊5面・社説)。

 レイバーネット日本は、韓国政府の「解決策」、日本政府・財界の反応、マスコミ報道に批判的だ。
 「帝国日本の植民地支配下で強制動員・不法労働の被害を受けた韓国の人々(元「徴用工」)に対して、ユン・ソンニョル(尹錫悦)政権が6日発表した『第三者弁済』案。……日本の報道(とりわけNHK)や、そこで流された『街の声』があまりにもひどい……」。
 「……6日の報道で特に気になったことがあります。それは、NHKが『日本企業』というだけで三菱重工、日本製鉄(当時・新日鉄住金)の名前を一貫して出さなかったことです……。問題はそもそも韓国大法院(最高裁)が命じた(2018年10月、11月)賠償を被告の三菱重工、日本製鉄が支払うかどうかです。その被告の企業名を出さないのは報道としてあり得ません」。
 「……さらに驚いたのは、同日夜の『ニュース9』で流された『街の声』です。『第三者弁済』案について意見を求められた市民は全員、『これで日韓関係が正常化してほしい』『慰安婦問題でのムン(文)政権のような裏切りが心配』(大要)など、日本政府の主張をなぞるものばかりでした。また、新大久保での『若者の声』は、『歴史より文化』と、日本の侵略・植民地支配の歴史を不問にして『文化交流』を望むものばかり。その『声』をNHKキャスターが称賛する、というものでした」。
 「……強制動員問題も戦時性奴隷問題も、根源は日本の植民地支配・不法行為であり、日本の政府と企業がそれを認めて被害者に謝罪し賠償すること以外に解決の道はありません。これは韓国の問題ではなく、日本の問題、日本人の問題です。にもかかわらず、韓国側の問題であるような日本政府の主張、日本メディアの報道は、被害者と加害者を逆転させ、加害責任にほうかむりすること以外の何ものでもありません」(アリの一言、強制動員「第三者弁済」案は日本人の恥、2023年3月7日)。

 Y・Kさんはのべる。
 「あまりにひどい韓国政府の発表。加害企業が全く責任をとらず、代わって被害国の企業が賠償するなんて、誰が見てもおかしいとわかるのに、日本のメディアは、垂れ流すだけ」(【声明】歴史に目を閉ざし、被害者を置き去りにしたままでは解決にならない! 2023年3月6日 強制動員問題解決と過去清算のための共同行動、2023年3月6日)。
 Y・Kさんは紹介する。
 「……韓国の財団に賠償支払いを肩代わりさせておきながら加害当事者は謝罪もせず、1円の金も出さない、これで強制動員問題が解決するはずがありません。……今回の『解決法』について、生存被害者原告は受け入れられないとの立場を明らかにしています。 私たちは、被害者ととともに、(1)日本政府・被告企業が強制動員の事実を認めて真摯に謝罪し、その証として償いのために資金を拠出し、同じことを繰り返さないための措置を具体的に講ずること、(2)そのために被害者原告及び遺族との協議の場を設けること、……を求めて運動を続けていきます」(【声明】歴史に目を閉ざし、被害者を置き去りにしたままでは解決にならない! 2023年3月6日 強制動員問題解決と過去清算のための共同行動、2023年3月6日)。

 レイバーネット日本は、日韓首脳会談にも批判的だ。
 「3月16日、韓国の尹錫悦(ユンソギョル)大統領が来日し、官邸では岸田首相との会談が行われた。それに合わせて官邸前では、抗議する市民が約50人ほど集まって「糾弾」の声を上げた。しかし取材に来たのは韓国・中国のメディアばかりで、日本のマスコミはゼロだった」。
 「……官邸前抗議行動の呼びかけは、渡辺一夫さん(韓国良心囚を支援する会全国会議代表)ら、日韓連帯運動を進めている人たち。その人たちが次々にマイクアピールを行った。口々に訴えたことは『徴用工問題は、日本政府が植民地支配の責任を認め、被害当事者に真摯な謝罪と賠償を行う以外の解決策はない』
 『今回の日韓首脳会談は、強制動員問題のまやかしの“解決”をテコに、日韓の軍事協力の建て直しにあり、中国と朝鮮民主主義人民共和国に対して戦争を準備している米軍と一体化していく目的をもっている』『石垣島では陸自ミサイル部隊の駐屯地が開所されたが、東アジア、琉球弧の戦場化を絶対許してはならない』そして『韓国・朝鮮人民と連帯し、平和の道を歩もう』というものだった。自作のプラカードをつくって参加した女性は『強制連行がなかったことにされ、日本の侵略をチャラにして東アジアで再び戦争を起こそうとしている。過ちを繰り返させてはならない』と力をこめて語ってくれた」(植民地支配の責任はチャラにできない!~官邸前で「日韓首脳会談」弾劾行動、2023年3月16日)。Mさんは、そう報告している。

 この問題でのレイバーネット日本の報道を私は支持する。日本はこれでいいのか。日本メディアはこれでいいのか。なお、レイバーネット日本の過去の記事はホームページの「Menu」の下の「すべてのニュース」から検索することができる。
  (2023年4月3日)

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