8・25 女川原発再稼働を問うシンポジウムに200人参加

東北電力は、11月に予定している
女川原発2号機再稼働を中止せよ!

 【宮城】東北電力は、5月27日に安全対策工事が完了したとして、7月頃に「核燃料装荷」し、9月頃に「原子炉起動」すると公表していた。宮城県内の再稼働に反対する住民団体は、再稼働強行に対して、もう一度立ち止まって考えようと7月には女川現地での集会とデモ、9月の再稼働の前後には、8・25シンポジウムと9・1県民集会を対置させながら取り組みを準備してきた。
 東北電力は、7月18日突然、再稼働を11月に再延期すると発表した。その理由は、原子力規制庁による使用前規制検査で、重大事故時に原子炉を冷却するために水を送る「可搬型設備」の経路に『仮設建設物』があり、それが地震による倒壊の影響評価がされていないことが指摘され、その撤去に時間がかかるためと述べていた。
 その後も、燃料装荷前にシーケンス訓練、大規模損壊訓練などが実施されるのであるが、8月8日に実施された大規模損壊訓練(テロ対策訓練)で社員など3人が熱中症になったとして中止された。8月15日の実施されたようだが、「11月再稼働に影響ない」というが本当なのか疑わしい。

8・25 女川原発再稼働を問うシンポジウムに200人の参加

 「能登半島地震が突きつけた課題『原発複合災害』を考えるシンポジウム」が8月25日せんだいメディアテークのオープンスクエアで200人が参加して開催された。会場は、入口から入って直ぐにオープンスペースの会場で、正面にステージがある。メディアテークへの来客者も気軽に参加し聞くことが出来る会場を意識して準備した。多くの来客者が立ち止まって、シンポジウムでの討論を聞いていた。
 シンポジウムは、「志賀原発を廃炉に!訴訟」の北野進原告団長が「能登半島地震と志賀原発で起きたこと」と題しての報告、原子力防災問題の第一人者である上岡直見さんが「女川原発再稼働を考える女川原発緊急事態!! そのとき住民はどうなる? どうする?」と題して講演した。

能登半島地震の実態を見れば、女川原発再稼働などもってのほか!

 北野さんは、「能登半島地震の特徴」「能登半島地震の『幸運』と志賀原発」「避難計画の破綻『避難できない』これだけの理由」の3点について、能登半島の現状をリアルに報告した。
 「能登半島地震の特徴」について、「150㎞の活断層が動く内陸地殻内地震としては国内最大級であったこと」「建物倒壊から大規模火災、津波、崖崩れ、広域停電、液状化など、過去30年、日本が経験した地震被害がすべて出現したこと」能登半島地震ではなく「北陸地方大震災」であったと話した。
 「能登半島地震の『幸運』と志賀原発」については、3つの幸運①志賀原発は震度7を免れたこと(志賀原発は震度5)②志賀原発敷地は隆起を免れたこと③志賀原発は短周期地震動に襲われなかったことで、過酷事故に至らなかったと語った。そして、断層に囲まれた志賀原発は次の地震に耐えられるのかと、今回の地震(震度5、基準地震動399ガル)で「変圧器の故障で外部電源ダウン」「変圧器の油漏れ」「燃料プールの水飛散」「発電機やタービンの欠損」などボロボロ状態であること、さらに北陸電力の情報発信は小出しで不正確かつ訂正が相次ぐもので、事故隠蔽行為(油漏れ量、津波の高さ、火災など)を指摘し、社内体制の杜撰さも明らかにした。
 「避難計画の破綻『避難できない』これだけの理由」については、電力会社からは正確な事故情報が発信されず、自治体から住民へ避難情報の伝達もなく、放射能拡散状況の把握(モニタリング)も出来ず、住民は情報を入手できなかったこと。移動手段や避難路の確保(陸、空、海)も破綻し、避難先は壊滅的な被害(家屋倒壊や火災)で確保出来ない状況であり、原子力防災業務を担える人もいないなかで、原発災害が起きれば、閉じ込められ 見捨てられ 被ばくを強いられる。女川原発も同じで、再稼働など「もっての外だ」として報告を終えた。

集団無責任体制と「避難させない避難計画」

 上岡さんは、能登半島の皆さんが原発阻止運動で珠洲原発を止めたことに感謝し、岩手の田野畑村での反対運動を紹介し、建っていたら津波で破壊されていたことを語り、全国各地で原発を止めたところがあり感謝したいと述べた。
 原子力は「令和の玉砕」だと、戦局が不利になるほど客観的な判断を失い、戦術的・戦略的にも 無意味な自滅作戦を繰り返して崩壊した旧日本軍と酷似していると語った。さらに原子力は「集団無責任体制」であり、司法も役割放棄し事業者に追従していることを鋭く批判した。
 政府・自治体の指示によって避難させると事業者に賠償義務が生じるが、自主的避難であれば賠償義務がない。福島第一原発事故に対する多額の賠償の経緯から「できるだけ避難させない」方針に転換 したのではないかと、「避難させない避難計画」になっていることを指摘し、さらにUPZ住民は被ばく前提の避難計画であること、安定ヨウ素剤服用・配布も不能、集団輸送も困難(バスの確保できない)であることも指摘した。
 上岡さんは、独自の被害予測をシミュレーションして、女川原発で重大事故が発生した場合、避難などが必要となる影響範囲が30㎞周辺でとどまることはなく仙台市を超えて出現することを画像で示した。また、東北電力の需給状況、今年の最大日(2024年 1 月 15 日~17 日)を示し、「女川 2 号機が稼働しても大勢に影響ない」ことを明らかにした。

避難計画の破綻を確認したパネルディスカッション

 報告と講演を受けて、女川原発再稼働差止訴訟弁護団長である小野寺信一弁護士を交えて、上岡さん、北野さんの三人と参加者によるパネルディスカッション。
 小野寺弁護士は、女川訴訟の現段階について原告団、弁護団が避難計画の不備を徹底的に暴き、攻勢的に裁判が進められ7月に結審して、11月27日に判決言い渡しを迎えたこと、仙台高裁が避難計画の内容に踏み込んで判断すると表明したことが堅持されて住民側勝訴は充分にあり得ると報告した。
 北野さんは、上岡さんの指摘が能登で実証されてしまった。全国共通の避難計画が破綻したことについて、自治体を相手にした闘いが必要だとした上で、志賀原発廃炉訴訟は人格権・生存権をかけて闘っているが法廷外でもそのような闘いを拡げていくことが大切だと訴えた。「避難計画は有効なのか」という声に「原発を止めるために役に立つ」と応えていると話され、会場から納得の声が上がった。
 上岡さんは、能登での空路も使えない(着陸できない)孤立集落のこと、避難所が観光客であふれたこと、陽圧施設を含め家屋損壊で遮蔽・密閉機能は失い、被ばく対策としての「屋内退避」は破綻したと語った。
 「沸騰型原発(BWR)の女川原発再稼働については、志賀原発も同型であり、能登半島地震を教訓に一緒に廃炉に追込もう」と北野さん、「自然災害は減災しかないが、原子力災害は止められる。再稼働させないこと」と上岡さん、「11月27日控訴審判決は、住民側が敗訴するとしたら一審判決同様の門前払いしかなく、避難計画の破綻を放置することになる。判決を見て今後の進め方を考えていく」と小野寺弁護士。それぞれが避難計画の破綻を語り、シンポジウムを終えた。      (m)

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