投書「ゲバルトの杜」を観た
「人間の生の尊厳なくして、人間の解放はない」
SM
「ゲバルトの杜 彼は早稲田で死んだ」(監督 代島治彦(だいしま・はるひこ)、2024年、日本映画、原案 樋田毅(ひだ・つよし)『彼は早稲田で死んだ』文藝春秋刊)をユーロスペース(渋谷の映画館)で観た。
この映画は、革マル派による川口大三郎(かわぐち・だいさぶろう)君殺害と新左翼の内ゲバを批判している。
樋田毅の本が原案だが、代島治彦監督は「樋田さんの本に登場しない、どちらかというと当時の樋田さんたちの運動に批判的な当事者にも取材し、必要ならば撮影しました」(映画パンフレット11ページ)といっている。
この映画について、花咲政之輔(芸術活動家)は「最悪の歴史修正反共謀略映画だ」(『映画芸術』2024年春号・第487号・47ページ)といっているが、私はそうは思わない。
「早大カクマルの白色テロ暴力を容認する……映画」(『未来』第391号、2024年6月6日発行、大久保一彦、インターネット)であるとも「結局全体を通して「革マル派は強い」といった作品」(『週刊読書人』2024年5月24日・金曜日、第3540号1面、森田暁(もりた・あきら))であるとも思わなかった。
森田暁は「あの自己批判書(佐竹実の自己批判書)自体、要は川口君の事件から一年経って、その後も革マル派にそのまま自治会を続けさせるための収拾策として、公安警察が用意したものにすぎません」(『週刊読書人』2024年5月24日・金曜日、第3540号1面)といっているが、はたしてそれだけだろうか。私には分からない。ただ、映画がラストの方で自己批判書を朗読した意図については理解する。
花咲政之輔は次のようにいっている。
「樋田氏は自衛のための暴力すら否定するけど、圧倒的な暴力によって保たれている秩序=平和に対して、非暴力をいう事は圧倒的な暴力を肯定支持することに他ならない」(『映画芸術』2024年春号・第487号・51ページ)。
はたしてそうだろうか。ベジタリアンにも、ヴィーガンもいればペスカタリアンもいる。非暴力主義者にも、いろいろな人がいていいのではないか。私は、ミャンマー民衆の抵抗闘争や日本の管制塔占拠闘争などを「暴力」として否定するものではないが、内ゲバ主義の暴力は否定する。
中核派の一方的・計画的テロに対して、内ゲバ主義一掃のためとして革命的暴力を限定的にであれ第四インターがもしも行使していたらどうなっていたか。第四インターが暴力に暴力で対抗する道を選ばなくて良かったと私は思っている。新左翼には非暴力というものを軽視する傾向がある(と私は思っている)が、間違っていると私は思う。少数の暴力よりも多数の非暴力の方が強い。そういえるのではないかと私は考える。
―― 「映画の題名は『彼は早稲田に殺された』とすべきであった」という(先行上映会での会場からの)発言は関係者や参加者の多くに突き刺さっただろう。川口さんは革マル派に「中核派と誤認され殺された」わけだが、大学当局と革マル派との共存関係によって何重にも何度も殺されたと受け取った(『かけはし』第2814号・2024年5月27日発行・KJ・インターネット)。
映画パンフレットの3ページには、1971年6月の琉球大生内ゲバ殺人事件として民青による革マル派殺害についても記されているが、もともとトロツキーを暗殺したのはスターリンのソ連共産党だったことを忘れるわけにはいかない。共産党(スターリン主義インター)こそ内ゲバ主義の元凶なのだ。私は、映画が早大解放闘争を「内ゲバ」として描いている(『未来』第391号)とは思わないし、早大当局を支持している(『映画芸術』第487号)とも思わないが、内ゲバ主義を過去の問題のように描いている傾向はあるのではないかと思った。
最後に、映画は、内ゲバをおこなわなかった左翼もいること、とりわけ第四インターは唯一「内ゲバ主義反対」を掲げてたたかったこと・たたかっていること(マスコミも日本共産党も、「内ゲバ主義反対」を掲げてたたかったことはない。マスコミにいたっては、内ゲバ主義者を美化することさえやってきた・やっている)を、私の誤解でなければ、描いていない。プロレタリア民主主義を掲げてたたかった・たたかっているトロツキストの存在をわざと無視して、スターリン主義=共産主義であるかのようなイメージをばらまいて反共宣伝をおこなってきた・おこなっているマスコミのように、だ。
映画は、私の誤解でなければ、はじめて内ゲバを批判した作品だが、私はそんな疑問も感じた。なお、私は内ゲバについては「内ゲバ禁止法」のようなものを作るべきではないかと思っている。内ゲバ自体は内ゲバ主義者がおこなっているものかもしれないが、権力による泳がせもあるのではないかと私は思っている。
敬称は基本的に省略した。「樋田」の「樋」という字はメディアによって二通りの書き方があったが、パソコンの問題から、統一した。
(2024年7月28日)
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