木元茂夫さん(すべての軍事基地にNO!ファイト神奈川)講演会
自衛隊と靖国神社―戦死者と殉職者
【神奈川】10月23日、かながわ県民センターで、 「すべての軍事基地にNO!ファイト神奈川」の木元茂夫さんが「自衛隊と靖国神社―戦死者と殉職者」と題して学習会で話してくれた。
主催は「日の丸」・「君が代」の強制と法制化に反対する神奈川の会。
自衛隊員が戦闘
状態に耐えうるのか
南西諸島に自衛隊の軍事要塞が進出し、米軍などとの軍事演習をエスカレートさせるなか、木元さんは自衛官たちが実際の戦闘にはいっていくことをどうとらえているのかに関心を持ってきた。そのうえで戦闘上の死者が出た時に靖国神社を含む慰霊施設はどう機能するのかということに危機感を持ってきたという。
特にこの1年に起きた靖国神社周辺の動きは木元さんの懸念を大きくしたという。3月、自衛隊の幕僚長などを経験した大塚氏が靖国神社宮司に着任した。1月には陸上自衛隊幹部らの集団参拝報道があった。2月には遠洋航海前の海上自衛官が神奈川県内から夜間行進で靖国神社を目指す集団参拝の報道もあった。宮古神社での自衛官集団参拝も1月に報道された。自衛隊の精神的よりどころとしてかつての靖国神社のような存在とは何なのか、ということが持ち上がってきたかに見える。木元さんにとっては、かつて政府が4回にわたって成立を図った靖国神社国営法案と、これに対するたたかいの一端を知る者として避けて通れないというところもあるという。
過去の石破首相の発言はいくつもとりあげられているが、中に「自衛官の敵前逃亡、上官の命令に従わないことへの罰は死刑でしかない」(「国防軍とは何か」2013年幻冬舎ルネッサンス新書)にふれて、木元さんはこれに対して自衛隊法があげるいくつかの罰則を紹介した。こういった法規の現状を私たちは知らないが、どう変化するのか、それを許さないのかということへの着目は大事かもしれない。
生身の自衛隊員が戦闘状態に耐えうるのかというところも木元さんが注視するところで、実際に自衛隊員と話す機会があれば質問するそうだ。自衛隊員のなかには戦闘への参加をリアルにとらえきれていないという感想もあるようだ。戦闘形態も、接近戦からミサイル配備、遠隔操作駆使、情報・通信戦へと変わってきており、規律面でも大日本帝国軍隊では死刑がふんだんに盛り込まれた軍刑法、軍法会議があり、何より軍人勅諭の存在がある。
文献として石川達三「生きている兵隊」で描写されたような兵士の心理、デビッド・フィンケル「帰還兵はなぜ自殺するのか」が列挙する兵士の後遺症の実態を紹介しながら、自衛隊員(防衛省職員)の自殺者数の推移が紹介された。統計では、毎年35人から50人の自殺者が記録されている。2004年から2006年にかけて65人前後を記録しているのは、イラク侵攻に伴う自衛隊艦船などのインド洋派遣の影響だという。2017年だけ60人を超しているのは、もしかすると、のちに日報改ざんが問題となった南スーダンへの「警護活動」(2016年、第10次、11次)が影響しているかもしれないと思った。自殺だけでなく、戦死、事故死が殉職扱いを含めどういう扱いになるのかという問題が、慰霊施設のあり方とかかわってくる。
また、木元さんが紹介したのは、現在の自衛隊の殉職者が防衛省内の慰霊施設に「まつられる」と同時に、各地の護国神社にもまつられてきた事実である。これまでに2000人あまりの殉職者が数えられているが、神奈川県のように護国神社がない地域もある。この護国神社への合祀をめぐって中谷康子さんが、山口県において自衛官である夫を勝手にまつるのは信教の自由を侵害すると訴訟を起こしたのが1973年なので、当時の防衛庁は通達を出さざるを得なくなった。
1974年の
防衛次官通達
木元さんの話を聞いているときは浮かばなかったが、2006年に公表された富田メモによって昭和天皇裕仁がA級戦犯合祀の靖国神社にはいかないという逸話が紹介されたことや、2018年に靖国神社宮司である小堀邦夫が会議において「陛下が一生懸命、慰霊の旅をすればするほど靖国は遠ざかっていくんだよ。(中略)はっきり言えば、今上陛下は靖国をつぶそうとしているんだよ、わかるか」などと発言したことが週刊誌に流出して、小堀は宮司退任に追い込まれたことが記憶に残る。
会場からは天皇崇拝と結びつかない靖国神社の先行きについてどうなのだろうという反応が多かったように思うが、予想しない形で戦死者が出れば靖国神社のような慰霊システムに何が起こるか予測は難しい。
1月の集団参拝報道の直後には、木原防衛大臣が1974年防衛次官通達に触れて、その見直しに言及したが、その後うやむやになっていることにも、木元さんは注目した。この事務次官通達は、自衛隊員の宗教的行事への関与、部隊としての便宜供与を禁止、宗教上の礼拝所への部隊参拝の禁止、宗教上の身分取り扱い差別の禁止、特定の宗教施設の設置、特定の宗教による慰霊の禁止を列挙している。この訴訟での勝訴を含め、自衛官に関する様々なことに対して、声をあげることの重要性を木元さんは訴えている。
集会の最後に共通番号いらないネットの宮崎さんがアピールした。保険証との一体化に続いて運転免許証と「マイナンバー」カードの一体化がまもなく始まる。運転免許証については一体化の強制はされないが、健康保険証については一体化を既成事実かのような構えを崩していないが、強制できるものではない。こういった矛盾の中でマイナンバーカードと様々な個人情報の紐づけが進むならば、カード携帯しないと非国民扱いをする監視社会へと進む恐れもあるだろう、ということを宮崎さんは言っていた。
人民への監視と参戦国家の進行に抗して、行動していこう。(海田)
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