11.16 南海トラフ巨大地震が来る前に 2024関西集会
原発・核燃からの撤退を!
【大阪】脱原発政策実現全国ネットワーク関西・福井ブロック主催で、大阪平和人権センター、原発反対福井県民会議、「しないさせない!戦争協力」関西ネットワーク、緑の大阪、が共催する集会が11月16日、大阪ドーンセンターで開かれた。
池島芙紀子さん(ストップ・ザ・もんじゅ)は主催者あいさつの中で、「今年の集会は3つのこと、ひとつは被曝問題、2つ目は原発・核燃からの撤退を阻んでいるものは何か、3つ目が核燃サイクルの目的は何かということを重点に準備し、午前中プレ企画をもった」と語った。
続いて、青木美希さん(新聞記者)が「脱原発を阻むもの」と題して講演をした。
講演
「脱原発を阻むもの」
原発にこんなにお金がいるとは知らなかったという話を聞く。世間では原発事故はもう終わった、避難者はもういないと思われている。政府の官僚の場合も同じだ。実情を言っても受け止めてもらえない。それで客観的な事実を本にした。その本を官僚に届けに行った。その人は既に読んでいて、避難者がこんなに苦しんでいるとは知らなかったと、頭を下げて詫びを言われた。彼は老朽原発問題で動いたが、配転させられ、退職した。
なぜ日本は原発を止められないのか。この問題を考え調べてきた。新聞社名の入った記者名では出版できず、個人で出版した。
キノコの出荷制限
日本ペンクラブのなかまと福島第1原発1号機の現場調査をした。線量は事故前の0・03~0・05マイクロシーベルト毎時が230マイクロシーベルト毎時だった。
ここでクイズをひとつ。福島原発から何キロまでキノコの出荷制限(100ベクレル毎キログラムを超えたらダメ)が行われているか(会場に質問)。何と正解は380キロ。富士山のキノコも出荷制限、青森県から静岡県までが出荷制限がかかっている。出荷制限されてもネットなどで販売されているが、今でも福島原発事故は終わっていない。マスコミはほとんど報道しなくなった。林野庁のHPを開くと出てくる。
住宅提供の打ち切り
日本の原発で、現在稼働しているのは12基(女川原発は再稼働して直ぐ事故で停止)、設置変更が許可されたのが4基、新規制基準審査中が9基、未申請が10基、廃炉が決まっているのが24基である。事故は終わっていないのに、政府と県は避難者の住宅提供を次々と打ち切り、避難者の数から外し、避難者は自分の存在すら消されている。事故から13年経った現在、避難者は公式上は2万9000人だが、各市町村が出している避難者の人数を合わせると、これより数万多い。支援が打ち切られても、避難世帯の7割近くがそのまま残っている。残っている世帯の3割は年収100万円未満だ。
議員立法で原発事故子ども・被災者支援法がつくられたが、実態はこの通りで、それを主導した議員もその後のことに関心はなかった。(浪江町の鵜沼久江さんが自宅に帰るとき同伴)駅も役場も新しくできた。道路に設置された門扉を開けてもらって自分の家に入る。田んぼは背の高い雑草で覆われている。昔飼っていた牛小屋。線量が高く、警報音が鳴り続ける。安全だからと言われても、それを信じている人はほとんどいない。政府は2050年までに880トンのデブリを取り出すといっているが、それが実現できると思っている人はいない。復興のふの字もわからないと鵜沼さん。昨日も専門家の人をインタビューしていたが、まあ100年か200年かなと言っていた。
原発事故の怖さ、わかっていない人々
どうして脱原発できないのか。政官業学とメディが原子力村と呼ばれる共同体を形成し、その利益で潤う構造ができてしまっていて、それを打ち破ることができない。「絶対安全なものしか許されないとすれば、自動車・飛行機・列車をすべて拒否して原始の生活に戻らなければいけない。原始生活には飢えや疫病、凍死など別の危険がつきまとう」、と主張する人もいる。「原発が心配な人は、飛行機から退治した方がいい。飛行機が落ちて下敷きになる危険性の方が数百倍もあるのだから」(大熊由紀子)。
2011年3月10日、朝日新聞の元論説主幹に朝日新聞の原発に対する基本態度を聞いたら、イエス・バット(厳しい条件付き容認)だといわれた。その翌日事故が起きた。朝日新聞は、その後態度を転換し、原発ゼロ社会をめざすとなった。麻生太郎さんは、事故から3ヶ月たった頃、「太陽光に代替したら、電気料金が10倍になる」と言った。電力会社は麻生さんのパーティ券を購入していた。とてもわかりやすい話だ。20万円以下だと報告書に名前を書く必要がない。この度の政治資金規制法改正で20万円が5万円になった。秘書の人に聞いたら、「全然事情は変わらない。小分けにすればいいだけだから」の言。
原発には金がかかる
関電の原発マネーの還流が問題になっている頃、関電は2度電力料金を値上げしている。本当に、原発は安いのか。消費者から電気料金と税金で2重に原子力既得権益集団にお金を吸い上げる仕組みがある。原発賦課金は明らかにされていない。例えば、敦賀2号機は稼働していないのに、他の電力会社から補填されるから、13年間で1兆4000億円の収入がある。再稼働申請して認められなくても電力会社はまた申請すると言っている。再申請に10年かかったら、その10年間電気料金で支え続けることに? 再申請を妨げるすべはないということだ。
なぜ福島の被害を報じないのか。記者「企画を立てたがダメでした(認められなかった)」、どうして?「世の中の興味関心がない・報じてほしくない人たちもいる」。原子力専門家「避難が必要でない原発ができると思う」、ある大学教授「寄付講座を受けているから、原発に否定的な本の紹介は難しい」、別の大学教授「原発の被害についてコメントすると名誉教授になれなくなるかもしれない」。
何という発言! この実態を知ってほしい。イタリアは国民投票でこのシステムを止めた。日本はなかなか難しい。政府は、電気会社・ガス会社に、消費者を補助するという名目で4兆円出している。だが料金は値下げされていない。
避難者2人から
分断と闘う・避難する権利
この後、福島からの避難者2人(鴨下全生さん・森松明希子さん)のアピール。
ローマ教皇に手紙を出した鴨下さんは、その手紙を読み上げた。以前、幸いにも東京に避難できた自分という言い方にひどく抗議をした人がいた。その人は避難せずに福島にいる人だった。17歳の高校生になぜそんなことを言うのか、それこそが分断なのだと思うと語った。
森松さんは、国と東電を相手に闘われた東京訴訟は最高裁で負けたが、国策でつくった原発が事故を起こして、損害賠償裁判で負けたからと言って、事故が終わったわけではないと語った。損害賠償請求と同時に、避難の権利、被爆を避ける権利がある。基本的人権としての避難する権利のために裁判を闘っていることを強調した。
現地報告
六ヶ所処理工場
続いて、浅石絋爾さん(核燃サイクル阻止1万人訴訟団団長)のアピールと六ヶ所再処理工場を見学した守田敏也さんと大椿ゆうこ参議院議員の現地報告があった。
浅石さんは、原子力の平和利用という名目で日本に原発が導入された過程を述べ、原発でつくられる廃棄物からプルトニウムを取り出し再利用する核燃料サイクルが機能していない現状を分析。再処理工場の完成が25年も延期されているのに、あくまで再処理にこだわる理由はどこにあるのか? と問う。それは潜在的な核保有を意図しているからとしか考えられない。自民党は、岸内閣の頃に核兵器保有は九条に違反しないと主張し、以後一貫してこの態度を変えていない。日本が現在保有しているプルトニウムは約29トン。プルトニウムのない世界を目指して運動していくと呼びかけた。
守田さん・大椿さんら9名は六ヶ所再処理工場を視察した。日本原電からは4人が参加。工場群のいろいろなところを見たが、バスの中から、しかも写真撮影と録音は禁止だった。驚いたのは再処理のために集められた3000トンの使用済み核燃料を入れたプール。非常に恐ろしい光景だと思った。屋根が2重になっていて、飛行機が落ちても大丈夫と言われたが、地震に大丈夫かな。1993年に7600億円の予算で建設が始まったが未だに完成していない。プールを説明してくれた職員が、誇らしげにしていたのが印象的だった。
先行きは見えない、完成の目処は立っていないのに、大丈夫やがて完成しますみたいな姿に、考えることを止め、洗脳された人のような感じを受けた。この間どんな仕事をしているのか聞くと、メンテナンスをしているとのこと。そのために多額のお金が溶け落ちていくことを痛感した。
若狭には4000トン超の使用済み核燃料
石地優さん(福井県)が、原発が最もたくさん動いている若狭の現状を報告。関電の高浜・大飯・美浜原発で7機が動いている。その中には老朽原発3機が含まれる。各原発のプールにたまっている使用済み核燃料は合わせて4000トンを超えている。若狭の原発のプールはあと3年ほどで満杯になる。そこで関電は、原発敷地内での乾式貯蔵を申請している。その目的は中間貯蔵するまでの一時的な処置と言っているが、関電の本当の狙いは、原発を止めたくないということ。原発が動けば使用済み核燃料が益々たまっていく。このことはなんとか止めなければいけない。
講演/新ヒバクシャと『能力減退症』
最後にもうひとつ、「4000人の子どもの血液を調査して」と題して、三田茂さん(医師)が講演をした。質疑応答は省略する。
三田さんのクリニックは東京の小平市にあったが、三田さん一家は福島原発事故による被曝で、2014年岡山に移住した。定説にこだわりすぎていると、まともな考えができないのではと三田さんは力説する。
原発事故後、原因不明の体調不良が多く見受けられるようになった。東京の中野電車区では、運転手の体調不良で、オーバーランした後に乗務中断するケースが過去3年間に40件も発生。外房線の運転手が居眠りをしている所をスマホに撮られ問題になった。運転手の間では「中電病」といって不安がられている。健康状態急変による事故が急増している。富士フイルムから、レントゲンフィルムが数カ所感光していたという苦情が来ているとの知らせがあった。レントゲンフィルムは、どこでも奥の隅に置かれているから、普通なら感光などあり得ない。だから、場所によっては福島事故による放射線は相当強かったと想像される。東京都金町浄水場では、放射性物質が暫定指標値を超えて検出されたという報道があった。
生来外部の刺激にとても敏感な(HSP)な人がいる。HSPは心理学用語で医学にはそれに相当する言葉がないが、三田さんは、福島事故後に急増したこれらの症状に苦しむ人々を、「新ヒバクシャ」と呼んでいる。「間違いなくとても大きなダメージを負わされてしまった。昔はブラブラ病といわれても為す術がなかったが、今は治療もある程度できるので、無理せず楽しく過ごしていこう」と患者を励ます。HSPの人にとっては、相当体にこたえる被曝を受けたと思われる。これは勿論定説からはずれており、今のところは三田さんの仮説にとどまる。
三田さんは、一つ一つの症例をあげながら、医学的にもくわしい説明をした。三田さんの子どもも、岡山に移住して、てきめんに体調が回復したという。2016年頃から、『能力減退症』(記憶力の低下・疲れやすさ・集中力、判断力、理解力の低下・コントロールのできない眠気など)と呼ばれる症状が増加傾向にあり、その程度が強くなっているという。
この症状の原因が放射能被曝単独であるとの証明はまだできないが、旧来のヒバクシャたちの経験した症状との強い類似性がある。学問的に未解決であるとの理由で供手傍観することはできない、と三田さんは述べた。岡山の三田医院に通う患者が相当数いるとのことで、質疑応答でも、当該者の発言があった。 (T・T)
福島からの避難者/森松明希子さん、鴨下全生さん(11.16)
福島からの避難者/森松明希子さん、鴨下全生さん(11.16)
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