12.2 25けんり春闘発足総会・学習集会

誰もが安心して働ける職場・暮らせる社会の実現を!
不安定雇用と低賃金との闘いへ

 【東京】12月5日午後6時半から全水道会館を会場に、全労協、全港湾、全造船関東地協、民間中小労組懇談会、おおさかユニオンネットワークを幹事組合とする「25けんり春闘全国実行委員会」が同春闘発足・学習集会を開催し、同実行委員会に結集する労働者によって同春闘の方針を決定、ストライキで大幅賃上げを勝ち取ること、特に不安定雇用と低賃金の打破を求める運動の積極的な展開を確認した。合わせて、日本労働弁護団幹事長の佐々木亮弁護士から「労基研の議論を問う!―労働基準の緩和なんてとんでもない―」と銘打った講演を受け、厚労省の「労働基準関係法制研究会(労基研)」でこれまで14回行われている議論を確認した上で、そこで必要になる闘いについて意思統一した。

何より生活危機に応える闘いを

 発足総会は、同春闘共同代表の渡邉洋全労協議長の、ドイツでもストライキが始まっている、ストライキの重要性をあらためて確認しようとの呼びかけを口火としたあいさつで始まった。そしてまず、例年にない賃上げと言われた24春闘でも実態は実質賃金低下継続、特に中小、非正規の低賃金放置、という現実を指摘し、この間暴露されたトヨタや日産の下請法違反とそこへの関係労組の発信不在なども例に挙げ、先の現状には連合に結集する大労組の内向き春闘に大きな責任があること、さらに25春闘でも連合の賃上げ要求(5%以上、中小6%以上)が実質賃上げに届いていず、労働者の生活実態を基準とする観点が後退していることを批判、それを打破する闘いが必要だと呼びかけた。
 渡邉さんはその上で具体的な課題として何よりも、最低賃金引き上げの重要性を訴えた。特に最賃影響率(最賃引き上げにより賃上げが必要になる労働者の割合)の近年の急上昇を指摘し、家計補助というこれまでの最賃概念が完全に現実と乖離していることを直視した生計に足る最賃実現を強調した。そして1500円/時という要求にはもっと高くとの議論はあるが、ワーキングプア状況への差し迫った対処という意味を込めて、けんり春闘として「今すぐどこでも1500円/時」の闘いに全力を挙げよう、と呼びかけた。
 またこの問題に関連し今話題にされている「年収の壁」問題にふれ、低賃金構造や格差や女性差別という根本的な問題を基底に据えた観点の必要を強調し、さらに移住労働者を仲間として受け容れる闘い、エッセンシャルワーカーの低処遇との闘いなど、差別や不合理を許さない闘いに一層力を注ぐことを訴えた。
 そして渡邉さんは最後に、今厚労省が進めようとしている労働基準見直しに関し、労働規制緩和を許さない闘いに向け第2部の学習集会で理解を深めよう、と呼びかけた。

闘いの3本柱

 このあいさつを受け以下の同春闘方針案が関口広行同春闘全国実行委員会事務局長から提起された。
 先ず、渡邉さんのあいさつを詳述する形で闘いの柱が3本に整理され提起された。具体的には次の3本だ。
○貧困と格差の拡大を許さず、生活防衛と権利の向上、大幅賃上げ実現へ。
○8時間労働制をはじめとする労働基準法の破壊、労働者性の否定を許さない闘い。
○改憲・軍拡・基地建設を許さない、汚染水海洋投棄を許さない闘い。
 この中では特に、過労死が増加している事実が具体的に指摘され、この事実をもっと問題化し、労基研には労働規制の強化こそを求めようと呼びかけられた。なお、賃上げ要求としては、月額2万5千円以上、時給労働者では150円以上、物価上昇分の上乗せ、が提案された。
 その上で基本スローガンは「◎誰もが安心して働ける職場・暮らせる社会の実現を! ○どこでも誰でも、いますぐ最低賃金1500円を! ◎ウクライナ戦争の即時停止! ロシア軍は直ちに撤退を! ◎ガザへの攻撃をやめ、即時停戦を!」が提案された。 
 また闘い方として、○職場・地域で闘い、生活できる大幅賃上げの実現、○失業・貧困全国労働相談の実施、協力、○全国キャンペーンの追求、○社会運動としての労働組合の役割、が提案され、それらを支える組織・体制・財政、および現時点で確定している来年のけんり春闘スケジュールが提案された。
 そしてこれらの方針は、一定の文言修正要求を取り入れ全体の拍手で承認された。

「労基研報告」への警戒と対抗

 続いて行われた佐々木さんの講演は、14回の議論を経て出された「労基研報告」に向けた「たたき台」の解説と警戒点の説明。この研究会は、経団連のデロゲ―ション(労使合意を楯に法定労働基準を逃れる条件設定を可能にする制度)を盛り込んだ「新しい時代の働き方に関する研究会」報告を踏まえて設置された。したがって大きな警戒が必要な動きだ。
 佐々木さんは、先ず結論的に、今回のたたき台にデロゲ―ションに直接触れるものはないとした。しかしその上で、たたき台の「原則的な制度をシンプルかつ実効性のある形に定める」という考え方について、「シンプル」でない現状は規制緩和に対する労働者の抵抗の反映で使用者に使いにくくしているものと指摘、「実効性」に関しても何の実効性か見極めが必要、と注意した。
 次いで、具体的な検討点になっている労働者性、事業、労使コミュニケーション、労働時間の各論に進み、最初に最後の2点を要警戒点に挙げた上で、各検討点について解説を加えた。 
 先ず労働者性については、現行の40年前の基準が現実的でなくなっているのは事実だが、継続議論になったことを踏まえ、労働者性の枠を広げる要求を強めることが呼びかけられた。
 事業については、引き続いて事業場単位での適用が適切とされたものの、選択肢として労使合意を条件に複数事業場も挙げられていることに注意が喚起され、労働者の声がかき消されないようにする必要が強調された。
 問題は労使コミュニケーション。事業上の過半数代表が中心論点で、たたき台は労組の活性化が重要とされ、それ自体は利用できるものの、少数労組の差別やデロゲ―ションにつながる余地など具体的な問題が多々あることが要警戒とされ、労組の積極的な対応が求められた。
 さらに問題となるのが労働時間。最長労働時間規制が先延ばされたこと、テレワークに対する見なし労働時間という危険な要素の提案、勤務間インターバルに対する消極性、副業・兼業の労働時間通算を割増賃金支払いでは外すという提案など、容認できない点が多いと指摘され、規制強化を求める運動の強化が必要と訴えられた。
 この講演には会場から、少数派労組の無視や労組否定につながる危険など、過半数代表に関係する質問、意見が続き、労働運動側に十分な対抗が必要であることが共有された。

大胆な要求と果敢な組織化へ

 これらの議事を受け、最後に3労組が25けんり春闘に臨む決意を表明した。
 最初は官公労を代表し全水道東水労。公務員賃金がこの間2%台に抑えられてきた経緯を打ち破る闘いに挑んでいる、とまず現在の闘いを報告した。そしてそれを基礎に、都が民間への業務移転に突進していることに、移転先の組織化に挑戦しつつ官民連携で公共サービスを守る闘いを進めたい、と決意を述べた。
 2番手は民間を代表して全国一般東京南部。青年委員会の若者が3人登壇し、パワハラのない職場を作る、残業に頼る低い基本給の引き上げに挑む、と力強く宣言した。
 最後は争議労組を代表し全統一労組。技能実習管理団体から解雇された当事者が、労働法規違反が野放しになっている実情を許さないと決意を述べると共に支援を訴えた。さらに雇用主と衝突し恣意的に解雇され即刻帰国の危機に直面したベトナム人技能実習生を守る闘いが紹介され、小さな勝利を積み重ねて大きな変化につなげよう、と呼びかけられた
 これらの決意表明には結集した仲間から大きな拍手が送られ、連帯と闘いの共有が確認された。そして全体は、全造船関東地協代表の音頭で団結ガンバローを三唱、25けんり春闘の行動組織化に向け会場を後にした。
 資本の生活破壊攻撃が続く一方、世界の危機的混迷状況や衆院少数政権となった石破自・公政権など、支配層の側にも困難が際立っている。労働者民衆の自立した闘いが痛切に求められる情勢であり、そのツールとして労働組合の重要性は殊の外高まっている。特に非正規の仲間が直面する苦境に対し、大胆な要求を基礎にした果敢な組織化への挑戦が求められている。25けんり春闘と連帯し、われわれもその挑戦に踏み出そう。     (神谷) 

春闘勝利・団結ガンバローを三唱(24.12.5)

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