能登半島地震から1年
「原発複合災害と避難」で政府交渉
動いているすべての原発を止めるべきだ
【宮城】原発複合災害と避難」について、1月20日参議院議員会館で院内集会と政府交渉が、原子力規制を監視する市民の会とFoE Japanが主催して開催した。政府交渉の前に院内集会がもたれ、各地からの報告があった。
各地からの報告
「志賀原発を廃炉に!訴訟原告団」団長の北野進さんが「能登半島地震と避難計画の破綻」について報告した。北野さんは、内閣府と規制庁への質問(政府交渉)に沿って、1、能登半島地震と志賀原発の「幸運」、 2、避難計画の破綻・「避難できない」これだけの理由、3、原子力防災訓練とはなんだったのか。と三点について報告した。
能登半島地震での被害状況について、通行止め箇所は178箇所であり、死者、住宅被害は奥能登の方が甚大で、孤立集落も奥能登で多数発生し、解消に20日かかり、7日目にしてやっと把握されたところもあったと報告。
内閣府が「志賀地域原子力防災協議会作業部会」で検討するために「被害状況調査」を実施したが、その対象地域は30㎞圏内(いわゆるUPZ内)と狭く、調査対象も、多数の道路の寸断、孤立集落の発生、放射線防護施設の損傷と項目も少なく、被害が甚大な奥能登を調査対象から外し、「志賀原発周辺は、奥能登のような被害は起こらない」と能登半島地震の被害をいくらでも小さく見せようと過小評価していると批判。志賀原発の「三つの幸運」について、①震度7を免れたこと、②敷地内の隆起を免れたこと、③短周期地震動に襲われなかったことだが、志賀原発周辺は断層だらけで過去30年、日本が経験した地震被害がすべて出現したと語った。
避難計画についても、広域避難の前提条件(電力会社から事故情報が届かない、自治体から市民へ避難情報の伝達ができない、移動手段、避難路、避難所の確保ができない)などすべて破綻し、バスはこないし、走れなく、屋内退避はできず、放射線防護施設も損傷、職員は参集できず、外部からの支援も入れず孤立し閉じ込められ被ばくを強いられるだけと批判した。
石川県は、11月24日に市民らの反対を押し切って強行実施した原子力防災訓練についても、孤立地区想定がなく、UPZの即時避難の想定もなく、孤立対策はヘリコプターと船舶の移動と、現実と乖離していると批判、一方では「無人航空機を使ったモニタリングシステム」「ドローン搭載のモニタリングポスト」「テント型簡易シェルターシステム」など「新商品の見本市・商談会」の様相であり、「避難計画の破綻」を新たなビジネスチャンス、と原子力業界のしたたかさも紹介した。
住民避難は
絶対不可能
「女川原発再稼働差止訴訟原告団」の日野正美さんは、東北電力が被災原発で老朽化した危険な沸騰水型原発である女川原発2号機を市民や周辺住民の反対を押し切って再稼働を強行したこと、11月27日には石巻市民が「避難計画の実効性を争点」に闘ってきた再稼働差止訴訟について、請求を棄却する不当判決が言い渡されたこと、一方で仙台高裁が「避難計画に実効性がない場合は、運転差止めの要件になる」と初めて避難計画に関する「判断基準」を示したことを報告した。上告に関しては現在の最高裁の状況を見た時、第一審の「門前払い」の判断に戻る可能性が高いこと、この判断基準を全国の原発訴訟で活かしていってもらいたいことも含めて「上告を断念」したと報告があった。
裁判で敗訴しても、女川原発のPAZや準PAZでは、原発に向かって避難するしかない地域があること、東日本大震災時の牡鹿半島の事態を紹介しながら、避難は不可能なこと、屋内退避も収容人数が住民数に足りる放射線防護対策施設が設置されていないこと、複合災害時には、命のリスクを第一に原子力災害対応より、津波など自然災害に対する避難行動を優先することと被ばく前提の計画であることを指摘し、住民置き去りの避難計画であり、このような状況で原発運転を一日でも早く止めることが必要だと報告した。
「原子力発電に反対する福井県民会議」の石地優さんは、福井県の南部に原発が立地されているが、福井新聞が報道している「災害時孤立集落が46箇所有る」ことを示して、県南に7つの原発が集中して立地されているが、この地域は孤立集落ではなく「孤立地域」だと指摘し、国道も一車線で海抜1mのところもあり、津波や道路の損壊があれば避難道路として使えないし逃げられない。また、海底に活断層があり、地震が起きることは免れずこんな危険なところにある原発を止めていかなければならないと報告した。
「原発反対刈羽村を守る会」の武本和幸さんは、原発の再稼働を180万人の県民の意志で決めるということで県民投票条例制定の署名活動で14万筆を集約したこと、新潟県は、大雪が降れば一週間動けなくなることが毎年起きていて、雪下ろしなど排雪作業しないと動けなく避難などできないこと、複合災害時は、自然災害を優先するとしているから被ばく前提であるし、放射線防護対策施設もキャパはなく、PAZ2万人、UPZ41万人の県民は逃げられない。原発を立地したとき「周りには迷惑を掛けない」と言ってきたのだから、逃げられないことがわかった以上、元に戻せ(原発をなくせ)という要求を突きつける時期に来ていると今後の運動の方向を示した。
国は、住民を守るつもりはあるのか!
政府交渉では原子力防災に関して、事前に提出した質問をもとに、参加者とともに質疑を行った。内閣府(原子力防災担当)と原子力規制庁からそれぞれ一人が出席した。
能登半島地震に係わる内閣府の「被害状況調査」が、志賀原発30㎞圏に限られて行われたことに対して、奥能登の状況も含めて調査し、項目も通信の寸断、インフラ被害なども考慮して地震の教訓を引き出すべきだとし、能登半島地震を過小評価している政治判断が働いているのではないかと迫ったが、「調査は、原子力防災ということでの調査だ」「頂いた意見は、『緊急時対応』等で検討する」という回答に終始した。
石川県が11月24日に開催した原子力防災訓練について、孤立集落の想定がないことを追及、事前避難が必要なPAZ地域などが孤立したときの対応や避難道路が使えない場合の空路や海路が困難であり現実と乖離していることについて質した。
国の避難計画は
被ばく前提
政府側は「原則、PAZは事前避難であるが、避難が困難であれば最寄りの指定避難場所に屋内退避して、避難できるようになったら移動して頂く」との答弁。
「原子力災害対策指針」は、事前避難が軸になっていることに反するのではないか、また重篤な放射線被ばくを回避するという避難計画にも反する。被ばく前提の計画であり、国は住民の生活を守るつもりはあるのかと紛糾する場面もあった。
「地域の緊急時対応」については、東日本大震災時に孤立した女川原発周辺の寄磯浜の実態について追及し、孤立集落数の実態について尋ねたが「把握していない。孤立集落の対応については、各自治体から相談があれば備蓄品の支援など実施していく」と把握すらしていないことが明らかになった。
屋内退避する放射線防護対策施設の収容数と集落の住民全員が収容できないことについても、「事前避難を実施して頂き、道路決壊等で出来ない場合は、道路啓開後に避難するとし、その間は屋内退避をして頂く」と繰り返すのみで、収容できなければコンクリートの建物などに屋内退避してもらうと答弁し、収容数については回答を避けた。
最後に、能登半島の原子力防災の観点から奥能登も含めた調査を検討すること、全国の孤立集落を把握すること、孤立集落対応の時間軸について検討すること、放射線防護対策施設べすぺてのところで住民が収容出来るようにすることを要請して、それが実現できなければ、運転している原発をすべて止めるべきだと述べて交渉を終えた。 (m)

「女川原発再稼働差止訴訟原告団」の日野正美さんが報告(左)
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