9条が世界に輝くとき(7)
たじまよしお
中国・韓国・朝鮮敵視は今も続く
日中国交回復の時代的背景
1972年の「日中国交回復」当時の中国は、お隣りソビエトとは大変な緊張関係にあり、その力関係の中で「日中国交回復」を必要としていた。当時の日本は1950年6月に勃発した朝鮮戦争による「朝鮮特需」そして1964年8月2日のトンキン湾事件に象徴されるベトナム戦争の勃発によるベトナム特需などによって1970年には西ドイツを抜いて世界第2位の経済大国となっていたのです。そのような情勢を睨み中国政府は戦後賠償・補償を免責してでも経済大国日本と国交回復をせざるを得なかった。それが「日中国交回復」であったというのが私の理解です。しかしこれは日中の支配階級の利益のすり合わせであって両国の民衆には関係のないことなのです。その矛盾が地底にマグマとなっていて、中国経済成長の失速から貧富の格差を機に、蘇州・深圳事件などとなって噴出したというのが私の見方であり、キーワードは「仇討ち」なのです。
しかし日本社会では現在進行形で今何が起こっているのか。日本がかつて侵略し、植民地化した朝鮮半島出身者へのヘイトデモから、コリアンの施設・住居への銃撃、放火などが相次いでいるのです。これらのことは「地震と虐殺(1923~2024)安田浩一/中央公論新社」に詳しく記述されていますので、抜粋を紹介しながら考えてみたいと思います。
◦2009年、排外主義と在日コリアンへの憎悪を煽る在特会(在日特権をを許さない市民の会)は京都朝鮮第一初級学校に押しかけ、「北朝鮮のスパイ養成機関」「朝鮮学校を日本から叩き出せ」などと怒号を発し、授業を妨害。メンバーらは逮捕された。
◦2017年、在日コリアンを顧客とする名古屋市内の民族系金融機関「イオ信用組合」に「愛国者」を自称する男が侵入、放火未遂事件を起こした。
◦2018年、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部(東京)が極右活動家によって銃撃された。本部の正面門扉に銃弾が撃ち込まれたのである。この活動家はヘイトデモの常連参加者でもあった。事件後にはこの活動家の支援者らが事件現場近くで街宣活動を行い、銃撃を「義挙」だと称賛。今回はドア一枚で済んだかもしれないけど、次々にやってくるかもしれませんよ」「火炎瓶を投げられて燃やされればいい」などと叫びながら気勢をあげた。
◦ウトロ地区放火事件について
2021年には在日コリアン集住地域であるウトロ地区(京都府宇治市)が22歳の男性によって放火され、7棟が全半焼した。
私(安田)はこの裁判を全て傍聴したが、犯人の男性が主張したのは、差別に満ち満ちた在日コリアンへの敵意だけだった。何か頼りなげな印象を与える彼は、しかし法廷でははっきりと、こう述べている。
「韓国に対する嫌悪感情、敵対感情があった」そのうえで「嫌悪感情」が生まれたきっかけを問われた男は、次のように訴えた。
「日本で現在使われている教科書においては、中国・韓国といった諸外国の検閲権と言いますか、諸外国条項というものが認められるようになり、今現在、社会教育で伝えられているというものは、韓国や中国の主張に基づいて改竄されたり部分的に日本の主張を抹消する等の書き換えがなされている」。
この部分だけをもってしても、いかに男がでたらめな知識に基づいて犯行に及んだのかじゅうぶんに理解できよう。男が勝ち誇ったように口にした「諸外国条項」とは、おそらく日本国の高等学校教科用図書検定基準に定められている「近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がなされていること」なる規定についてだと思われる。
男は勝手な思い込みで、これを韓国などによる「検閲権」だとしているが、全くの間違いだ。諸外国が日本の教科書を検閲する仕組みなど、どこにもない。つまりネットで仕入れた不正確、というよりも完全なデマを信じ込み、犯行に及んだのだ。
101年前の関東大震災時の朝鮮人虐殺について
日朝協会発行の「日本と朝鮮2024年10月号」の「一衣帯水」に次のような記述が見られます。「今年の9月1日、両国横網町公園内で百一年前の朝鮮人虐殺追悼式が行われた。ここ数年前からこの追悼式を妨害する団体が小池東京都知事が追悼文の送付を取りやめたことをきっかけに、歴史の事実を否定する活発な嫌がらせが起き始めた。TVや新聞などの報道で状況に関心を持った市民や団体、マスコミと年々参加者が増え始めました。公園内の会場周辺は妨害を防ぐ為に東京都はシートによるフェンスを張りそのシートの裏側で妨害団体は今年については特に過激な大声で『6000人虐殺というのは嘘。慰霊碑、これを必ず撤去する。破壊する!』」と。そしてこの『一衣帯水』のビラには「日本の社会主義者。労働運動の指導者たち10人も国家権力によって殺害されました」という記述も見られます。大杉栄・伊藤野枝ら社会主義者が憲兵大尉甘粕正彦らに殺害されたことは年表にも載っていますし、広く知られていますが「労働運動の指導者たち」が殺害されたこと、そして当時の労働運動がどのようであったのかも私は知りませんでした。「朝鮮人」と「日本の社会主義者、労働運動の指導者の虐殺」がほぼ同時に行われたのですから、富国強兵まっしぐらの日本政府にとってその運動は獅子心中の虫であったに違いありません。
日本労働運動と
ロシア2月革命
この頃の労働者の闘いを「日本史年表・歴史学研究会編」で見ますと「1917年6月18日三菱長崎造船所職工1万人、賃上げスト、28日解決 /同年7月21日大阪鐵工所因島工場の職工6000人賃上げスト、敗北」その3ヶ月前「3月12日(露)2月革命勃発・労働者代表ペトログラート・ソビエト成立。15日ニコライ2世退位」「1918年8月17日 山口県宇部・福岡県峰地炭鉱で暴動、軍隊出動 /同年9月4日三井三池万田坑の採炭夫ら、検炭の不満から暴動、軍隊出動」「1919年9月18日神奈川造船争議サボタージュ戦術を採用」「1920年2月5日八幡製鉄所2万3000人がスト、溶鉱炉の火を消す/同年年5月2日
日本初のメーデー、上野公園で一万余参加、治安警察法第17条撤廃・失業防止・最低賃金法制定を決議」「1921年4月28日大阪電灯会社争議発生(以後、阪神地方に団体交渉権要求争議続発)同年4月日本共産党暫定執行委員会成立
/7月7日神戸三菱・川崎両造船所スト(ー7軍隊出動、8月7日惨敗、戦前最大の争議) /8月20日山崎今朝弥ら自由法曹団結成」「1922年1月21日 極東民族大会(モスクワ)に片山潜・徳田球一ら出席 『前衛』創刊 /11月11日東京朝鮮労働同盟界結成」 「1923年3月8日 東京で初の国際婦人デー / 9月1日関東大震災(死者不明14万2807人、全壊消失57万5394戸). 朝鮮人暴動の流言広がり、市民の自警団による朝鮮人虐殺始まる。2日 京浜地区に戒厳令 4日川合義虎・平沢計七ら軍隊に射殺される(亀戸事件)/13日 横浜入港のソ連救援船レーニン号に退去命令/16日大杉栄・伊藤野枝ら社会主義者が憲兵大尉甘粕正彦らに殺害される(古井戸に投げ込まれる)。
この4日の「川合義虎・平沢計七ら軍隊に射殺された亀戸事件こそが、労働運動の活動家虐殺であったのです。関東大震災による治安悪化を理由に、以前から労働争議で敵対関係にあった亀戸警察署に捕らえられた社会主義者の川合義虎、平沢計七、加藤高寿、北島吉蔵、近藤広蔵、佐藤欣治、鈴木直一、山岸実司、吉村光治、中筋宇八ら10名が、9月3日から4日(あるいは9月4日から5日)に習志野騎兵第13連隊に引き渡されて、亀戸署内あるいは荒川放水路で刺殺されたのです(Wikipediaによる)」。これらの方たちは賃上げや待遇改善を求めるにとどまらず、社会主義思想の持ち主で、体制側にとってみれば1日も早く抹殺したい「獅子身中の虫」であったのでしょう。以上、関東大震災の頃の社会情勢を、主に労働運動の視点からまとめてみました。さらに遡って年表に目を通してゆきますと、関東大震災の朝鮮人大虐殺の発端が見えてきます。「1909年7月6日閣議、韓国併合の方針を決定」とあり、そして1910年8月22日韓国併合に関する日韓条約調印。
Wikipediaによれば「1910年8月22日に韓国併合に関する日韓条約調印、29日韓国の国号を朝鮮と改め、朝鮮総督府をおく旨交付・1910年(明治43年)6月3日には「併合後の韓国に対する施政方針」が閣議決定され、7月8日には第3代統監寺内正毅が設置した併合準備委員会の処理方案が閣議決定された。8月6日に至り韓国首相である李完用に併合受諾が求められ、8月22日の御前会議で李完用首相が条約締結の全権委員に任命された。統監府による新聞報道規制、集会・演説禁止、注意人物の事前検束が行われた上に、一個連隊相当の兵力が警備するという厳戒態勢の中、1910年(明治43年)8月22日に韓国併合条約は漢城(現:ソウル特別市)で寺内正毅統監と李完用首相により調印され、29日に裁可公布により発効し、日本は大韓帝国を併合した。これにより大韓帝国は消滅した。
つまりなぜ関東大震災のとき朝鮮人大虐殺が起きたかといえば、大韓帝国を植民地化したことの不当性の意識が恐怖へと変形して、政府が流言飛語をばら撒いて朝鮮人大虐殺となったのだと思うのです。この大虐殺については1923年の国会でも問題にされています。そのことについては昨年、2023年6月15日の法務委員会で社民党の福島瑞穂議員が質問していますので、次回にそれを述べたいと思います。
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