日本の食と農が危ない!
政府の農業政策が危機をつくっている
川田龍平さん(立憲民主党参院議員)が講演
戦争あかん!ロックアクション主催
【大阪】戦争あかん!ロックアクション主催の講演会が2月8日、大阪PLP会館で開かれた。
昨年夏の終わりに突然スーパーの棚からお米がなくなり、食料供給への不安が広がった。それ以来マスコミでもしばしばこの食料安全保障の問題が取り上げられている。
食料供給困難事態対策法成立
ウクライナ戦争を契機に起きた食料不安を背景として、昨年5月食料農業農村基本法が改正され、それに基づいて24年6月21日食料供給困難事態対策法も成立した。
政府が食料困難事態と判断した場合、事業者に対して出荷・販売の調整や輸入生産の拡大を要請したり、その計画の作成を指示できるようになった。対象品目は、コメ・小麦・大豆・畜産物に加え、肥料や種子などの生産資材が想定されている。さらに政府は、特定の食料の供給が難しくなる兆候が認められた段階で供給目標数値や対応方針を決定し事業者に要請し、供給量が平時と比べ2割以上減少するなど、国民生活の安定に支障が生じると判断した場合、「食料供給困難事態」と認定し、輸入・生産拡大や出荷・販売調整の計画作成と届け出を指示し、従わなければ20万円以下の罰金を科す、とした。
この法律は、G7の中でも極端に低い日本の食料自給率を改善しようとするのではなく、食料は相変わらず輸入に依存することを基本にしているので、農業政策は従来と変わりがない。優良な種子を生産・普及し、国内の自給率を高めることを目的として1952年に制定された種子法は2018年4月1日に廃止された。また良い種苗を育てた人の権利と農家の自家増殖の権利を保護するために1947年につくられた種苗法は、2020年12月に改正された。育成者の種苗は出願により認められると登録品種になり、登録品種全ての自家増殖は許諾制になった。それによって作物を自由に自家増殖する農家の権利は奪われた。一見農家の努力の成果を保護しているように見えながら、種子の遺伝子組換えやゲノム編集を使ったアグリビジネス大手の介入を容認することに道を開いたことになる。
自民党により推進された農業政策は、この10年以内でも以上のように、民間企業、特に米国企業の要望に沿う方向で推移してきたといえる。ちなみに、日本は1986年からの関税や貿易に関する一般協定(GATT)に参加するため、最低限の輸入機会を提供する必要があるとされ、ミニマ・アクセス米の導入が決定されて、77万トンの米をアメリカやタイ中国などから輸入している。この農業政策が日本農業の危機を招いていると言えよう。
川田龍平さんが講演
ロックアクションでは今まで、日本の食料・農業問題の講演を何度かに分けて開いてきたが、今回は川田龍平さん(立憲民主党参院議員)が、「日本の食と農が危ない」というテーマで講演をした。講演要旨、別掲。この後質疑応答の時間があり、7つの質問に川田さんは丁寧に答えたがこの報告では割愛する。 (T・T)
川田龍平さんの講演から
農家と提携し、農業の支援を
川田さんは、なんと言っても薬害エイズ被害と闘ってきた人として知られている。講演の冒頭、川田さんがまだ10代だった頃の映像が映された。街宣車の上でマイクを持って訴えている青年の映像だ。本当に若い頃から闘ってきたのだなと実感する。彼は10歳の時に血液製剤の使用でエイズウイルスに感染した。お母さんは、治療を受けるために、あえて名前を公表した。小学校ではひどいいじめを受けた。彼が触ったものは汚いとか、それを触ったら感染するとかといういじめだったという。
川田さんは、農薬は薬ではなく毒だという。日本は農薬に対する規制が緩い。日本から西欧に輸出される日本茶には無農薬の茶が使われているが、国内で販売されているお茶はそうではないそうだ。2018年モンサント(後にバイエルン社が買収)が製造したラウンドアップ(グリホサートを主成分とする除草剤)が原因でガンになったと訴えられた裁判で、モンサントは敗訴し320億円の賠償(後80億円に減額)を命じられた。この裁判の影響で、農薬の使用が見直されるようになり、西欧ではオーガニック商品が売れるようになっている。中国やロシアもその方向に進んでいるが日本は遅れている。
キーポイントは学校給食
オーガニック食品を広める契機は学校給食だ。日本で進んでいるのは千葉県いすみ市や木更津市そして兵庫県豊岡市だ。豊岡市はコウノトリを野生で育てている。コウノトリが産卵してくれるように、農薬の使用を見直している。そのことが、人間にとってもよい。農薬の影響は乳幼児ほど大きい。だからこの問題にはお母さんたちが熱心だ。豊岡のJAはとても協力的で、有機の取り組みをしている。長崎県佐世保市の菌ちゃんふぁーむで有機野菜を作る農法を広げている吉田俊道さんの活動がある。有機食品で育った子どもは、免疫力が高く、体温も1度位高いし、学校出席率もよいという。川田さんは10歳の頃薬害エイズに感染してから、風邪を引くなと言われた。10歳の子どもには酷な話しだが、とにかく免疫力を高めることに気をつかってきたという。食は本当に大切だ。
種子法が廃止された頃に何があった? 森友問題の籠池さんの国会喚問があって、すべてのテレビはずーとそれを放映していた。全メディが同じことをしているときは、その裏に何かがある。国による種子の管理を定めた種子法は廃止され、種子の情報を無料で民間に提供し、民間がつくったものは企業秘密として扱うことになった。三井化学がつくった多収穫米の種「三つ光」はそのような品種の一つ。その種袋に産地を記載することになっているが、三井化学は記載を偽造し、発芽率の悪いものが混ざっていた。私は山田正彦さんらと告発提訴した。種子は、その地域・風土によって発芽が違ってくる。
ローカルフード法案参議院に提出
その地域に適した種苗を保護していくため、各県毎に種子条例を作っていく運動が広がっている(大阪はダメだが)。だから地域にあった品種を保存し、その種による地域循環型農業をつくっていく、そのためのローカルフード法が必要である。外国から輸入した種は発芽率が悪い。ローカルフード法を各県毎につくっていくため、食を守る協議会をつくった。現在、種苗法で規定されている品種登録は全体の10%程度しかない。と言うことは、その他は外国からの輸入種に頼ることになるが、これは発芽率が悪い。
ローカルフード法は、地域在来種が農業用植物の品種多様性の確保・地域における農業の振興を目的にしている。民間において十分に行われないおそれがあることに鑑み、国・地方公共団体が積極的な役割を果たし、農業者の権利利益を保護することを目指している。
日本では、大豆はほとんど輸入に頼っているが、日本の食を支える味噌・醤油の原料だ。農業労働の対価は安く、しかも実質上コメの生量は国によって調整されているため、経済的に苦しい上に、高齢化が進んで農業人口が一気に減少していく。輸入に依存すればこの傾向が加速度的に進んでしまう。家畜の飼料や肥料の輸入依存から脱却しよう。学校給食のオーガニック化と結んで循環型農業をめざそう。
実は、今自治体も人材不足で、基本法は作らないでくれという声がある。でも、いざという危機の時期に、食糧の供給をお願いできる農家との関係をつくっていくことは大切だ。大阪の和泉大津ではいざというときのために周辺の農家にコメを供給してもらう契約をかわしている。
平時から農業とのつながりを
このように農家と提携し緊急の場合の提供を確保し、普段は農業を支援することが大切だ。あまり知られていないが、広島に原爆が投下されたとき、その翌日周辺自治体が広島市に握り飯を差し入れたという話しが残っている。この差し入れは契約に基づいて行われた。このような経験を活かすべきだ。
条例プロジェクトにより種と農を守り、学校給食システムを災害時に活用できないだろうか。大阪維新だけでなく他でも、学校教育無償化の声が大きくなっているが、無償化それ自体はいいとしても、質が保てるのか。
一方で、公立高校(や公立小中学校)の老朽化や疲弊が目立ち人気が落ちている。やはり公立学校の充実が大切だと思う。大都市集中は住民サービスの低下や格差をもたらす。これからは、お金ではなく食糧支援をすることも一つのやり方ではないか。
(発言要旨、文責編集部)

「日本の食と農が危ない」と訴える川田龍平さん(2.8)
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