完全無罪判決勝ち取る
2・26関西生コン・京都事件1審判決
【大阪】関西生コン・京都事件の判決公判が2月26日京都地裁であった。被告は2名で、武前委員長、湯川現委員長ともに完全無罪の判決だった。
早朝8時半から京都地裁前の歩道でミニ集会が開かれ、歩道が支援の労働者や市民であふれた。集会での発言は、論理的に考えれば無罪しかあり得ないが、司法の反動化を思うと予断は禁物、たとえ有罪でも引き続いて闘おうという趣旨の発言だった。判決内容を伝えるので、10時10分まで待機してほしいとの連絡があった。9時から傍聴券を求めて会社側の人がたくさん並んでいたが、ミニ集会を終えた支援側も傍聴券の列に並んだ。結審のときも傍聴希望の人の列は長かったが、今回はその比ではないように感じた。
無罪の判決に拍手の嵐
裁判が開廷すると程なく、法廷から出てきた七牟禮副委員長は、途中「どうだった?」と聞く声には答えず歩道へ急いだが、かすかに喜びをこらえているように感じ、直感的に悪くない判決だと推測した。歩道に出た副委員長は『無罪』と朱色で印刷された横断幕を垂らし、満面の笑みを浮かべ、とても嬉しいですと短く発言し、そこにいたすべての人が拍手をした。しばらくその場は拍手で充満した。その後しばらく幾人かの人が発言し、報告会の会場と時間が知らされた。
恐喝の事実がない
京都事件というのは、①ベストライナー事件(恐喝)、②近畿生コン事件(恐喝)、③加茂生コン事件(強要未遂、共謀)の総称である。
ベストライナー事件(恐喝)
①のベストライナー(ベスト社)は、京都の生コン協同組合である京都協組が設立した専属の庸車会社。ここに関生の分会ができる。会社は団交拒否。分会員は解雇されるが、交渉で解雇撤回、正社員化を勝ちとる。会社は倒産をもくろみ、暴力団を使い閉鎖を図るが実現せず、金銭解決(1億5000万円)の道を探る。組合は、解決金の他、組合員の協組内での雇用保障・ミキサー車6台の無償提供を求めるが合意できず、協組加盟5社でストライキ決行。協定書を交わすが、会社が履行しないので再びストライキ実施。京都協組は協定書の履行を約束し、ストライキを解除。分会員7名は退職届を提出し、うち6名は別の会社に移籍。ミキサー車6台は無償譲渡され、京都協組はベスト社に1億5000万円を貸し付け、ベスト社が解決金として組合に支払った。恐喝行為は存在しない。
近畿生コン事件(恐喝)
②は、ベストライナー争議が解決した後、値戻しに向けた協議が続く中、アウト社と値下げ合戦を続けようとする京都協組の執行部F氏の抵抗で、進展せず。2016年近畿生コンの破産申立ての動きがわかり、支部組合員がプラント占拠。アウト7社と友好関係を築き、労使共催の値戻し決起集会が行われた。値戻しに賛成のアウト7社が中央協組をつくり、京都協組と中央協組が受注物件を5:5で分け合い、統一価格で立米11000円から17400円に値戻しを実現。組合は、プラント占拠費用について協議、京都協組理事会から6000万円が組合湯川氏に支払われた。被害者届けは出ていない。恐喝行為は存在しない。
加茂生コン事件(強要未遂、共謀)
共謀とは言えない
③は、争議の現場についての事件が第1事件、その争議を指示した指導部(委員長)の共謀が問われた第2事件と二つに分かれている。今回の判決に関係するのは第2事件の方。
第1事件とは、分会員の労働条件の件で団交。会社は営業を停止するとして団交拒否。分会員は子どもの保育所通所のため就労証明書の作成を依頼するが、会社は応じず。交渉中、取締役が市に問い合わせても作成すべしとの返答。そのとき取締役は突如救急車を呼ぶように求め交渉中断。その後会社は生コンの製造運搬を停止し、組合員は偽装閉鎖の確認のため監視を続ける。この事件の京都地裁の判決は強要未遂の有罪判決だったが、大阪高裁は無罪判決。その後上告審で大阪高裁に指戻された。
報告会
彼らをやり得にさせない
報告会は京都弁護士会館のホールで行われた。
最初に湯川委員長があいさつ。「滋賀の事件から京都事件へと続く6年間で、ようやく1審で無罪を勝ち取れた。今まで、最悪の事態を踏まえ闘いを続けてきた。産別組合が認められ無罪になったのは、とても嬉しい。労働法学者が証人となった裁判はこの京都事件が初めてだ。判決文には、吉田美喜夫先生(立命館大教授・労働法)の言葉も引用されていたように思った。京都事件は、大阪広域協が警察・検察と癒着し、滋賀県警・大阪府警・京都府警が癒着し、事業主に圧力をかけて作り上げた事件だ。警察の証人は1人も出廷しなかった。こんな経営人が支配している協組の下で働いていたら、労働者も大変だ。この構造を根底から変える運動をしたい。決して、彼らがやり得にならないように、大阪広域協を変えていく」と、簡潔で今後を展望したあいさつをした。
続いて、5人の弁護士が登壇し、判決を解説した。
事実を積み上げた判決
裁判官はベストライナー、近畿生コン、加茂生コン第1、第2と順に説明して、すべて無罪とした。この判決は、京都事件だけではなく、すべての関生関係の事件に影響するだろう。ベストライナーの1億5千万円の解決金は脅しで取ったと検察はしたかったが、事実を一つ一つ積み上げていって、恐喝ではないと判断した。組合との関係が協調関係になっているのだから、恐喝はあり得ない。会社側の証人については、組合から脱退して広域協に付いたのだから、証言は信用できないとした。具体的な団体交渉の場面で(加茂生コンの場合)些細な一つ一つの行為について、現場にいない上部が予め指示し共謀したとは言えないとした。事実関係については、原告・被告に大きな違いはなかった。判決文の中には、憲法28条(労働3権)の言葉こそ出てこなかったが、一つ一つ事実を積み上げて判断しているという意味で、実質的に28条の立場に立った判決だった。組合員が現場を監視したのは、偽装倒産かどうかを確かめるための行為で、その目的は問題ないとした。弁護側は、有罪の場合の保釈金の準備もしたとのことだった。
最近の裁判官は労働法を知らない。恐喝行為が存在しないのに刑事事件としてでっち上げるから、被害があり、被害者がいるというような話になる。むしろ、民事裁判に長けた裁判官なら、一つ一つの事実を判断していく、それが良かったのではないかとの説明には大いに納得した。労働事件として判断する事がポイントであると強調された。
裁判闘争を支えた、兵庫、北海道、東京、東海、奈良、滋賀、京都、大阪の各支援する会からの発言があった。1936年の2・26ではなく、今日を労働者市民の新しい2・26にしようとの発言があった。
続いて、韓国NITTO電工の争議で、遠征闘争で日本に来ている争議団がアピールした。NITTO電工は韓国に進出し、無償で土地を借り、大もうけした後は工場撤収するというやり方で、労働者は解雇され、7名が残って籠城闘争をしている。
遠征団は職場を取り戻して帰国したいと決意を述べた。最後に、毎週水曜日に関生ニュースを流しているTANSAの編集長があいさつし、当事者の生のインタビューを届けたいと述べ、県警同士は仲が悪いのに、府県をまたいで共同対応するのは、上からの指示があるからだと語った。 (T・T)

京都事件1審・湯川委員長

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