2・15『沖縄報告』~辺野古・高江 10年間の記録~出版記念講演会

サンシンの演奏と歌唱など
辺野古に新基地作るな

 【東京】2月15日、東京・江東区の江東区総合区民センターで新刊書籍『『沖縄報告~辺野古・高江10年間の記録』の出版を祝うイベントがあった。主催は「沖本裕司さん出版を祝う会」。著者の沖本裕司(ひろし)さんの講演をはじめ、サンシンの演奏と歌唱など、盛りだくさんの内容で構成された。
 「沖縄報告」は著者・沖本さんが辺野古基地反対闘争を担った10年間の記録。翁長雄志沖縄県知事の登場を機に書き始めた。
 会は沖縄の民族衣装に身を包んだ「とぅるるんず」によるサンシン演奏から始まった。「祝い節」「繁盛節」が披露された。進行役を京極紀子さんと稲垣豊さんが務めた。
 本書を出版した柘植書房新社の上浦英俊さんが開会のあいさつをした。「本書の定価を4000円と設定していたが、著者からできるだけ安く、と言われ3000円とした」。沖本さんはスライドを上映しながら約一時間にわたって沖縄の闘いの10年間を振り返った。(要旨別掲)
 休憩中もサンシンで「涙そうそう」「花」などの楽曲が演奏された。会場後方でサーターアンダギーとコーヒーが参加者に振舞われた。
 プログラム後半では、沖本さんの運動関係、友人、知人ら同世代の人々らが著者と著作や自身が関わった運動への思いを語った。

 労組で沖縄を訪れて

 「郵政シルバーユニオン」の棣棠浄(ていとうひろし)さんが口火を切った。「学生時代に沖縄に行った。返還前のことだ。労組として沖縄に行こうと。石垣島、宮古島にも行った。オール郵政の沖縄連帯ツアーだ。その際に沖本さんにお世話になった。私は今、横田基地訴訟原告団の事務局を担っている。沖本さんはいろんな闘いをつないできた。それはまさに人柄と言えるだろう」。
 佐藤定夫さん(ブログ「呆け天残日録」)が発言に立った。「出版おめでとうございます。私は65歳でリタイアし、ブログを始めた。今回発売されたこの本は、著者の移住後の集大成と言える。沖縄闘争の第一級の資料だ」。「二つの点で素晴らしい。まず、ジャーナリストの視点で事実をありのままに記録している。非暴力で闘いながらあくまで客観的に書いている」。「学生運動では声の大きい奴が注目され勝っていく。しかし彼は違う。昔のまま、変わらない」。「もうひとつは、実践的な国際主義だ。彼は韓国語を学んで翁長知事の通訳にまでなった。しかしそんなことを決して自慢しない。語学力を生かして国境を越えた闘いを実践した」。

 沖縄の民意とは何か

 本書は、「本土復帰闘争」もていねいに追っている。沖縄の民意とは何か。日本の中での沖縄の位置づけについて、「連邦論」「琉球自治政府」「自治共和国論」などにも言及していると佐藤さんは紹介し、「本書ではこうした数多くの課題を淡々と述べている。ひたすらラジカルであることが評価される時代にあって沖本さんは正反対。謙虚で声の低い人だった」。「これからも私はこの本をコツコツと売っていきたい」と、本書に凝縮された沖本さんの姿勢を絶賛した。
 会場には全国各地で運動を担う人々が集い、ディスカッションでは沖本さんが指名して発言を求めた。
 「ヒロシマ連続講座」を開催している元高校教員・竹内良男さんは、沖縄の戦跡を一日30キロも歩く一橋大の女性の活動を紹介した。「最近は沖縄に行けていないが今日の講演を聞いて、やはり現地に行かなければと思った」。
 京極紀子さんの友人の女性は、中国から来日し東京で働いている。「私はピースキャンプに参加してきた。海を越えて手をつなごう。来週にも沖縄に行く。中国や台湾から辺野古に集まる」。

 隠される米軍の犯罪

 「一橋歴史学研究会」の男性は「沖縄の産業や観光ばかりが喧伝され、米軍基地とその犯罪が隠ぺいされている。この現実をどうするか」と問いかけた。「現地のバスやタクシーの運転手は、平和ガイドとしての役割も担っている」。「明治大学OBらが親睦会を作り、若い人たちに沖縄の闘いを伝え、首都圏で連帯運動をやっている」。「全共闘世代の人たちの声を残しておきたいと、沖本さんはじめ約50人にインタビューをした。今年中にはまとめて世に出したい」。
 「三里塚闘争に連帯する会」の柘植洋三さんは「今日の講演とこの本に大変感動した。沖縄研究の第一級の文献、学術論文ではないか。全国に広めていきたい」。
 自宅の庭に「PTSDの日本兵と家族の交流館」を建てた黒井秋夫さんが発言した。「戦争PTSDの人を支援する活動をしている私は、アジテーターとして生きてきた。年も年で再び皆さんに会えるかどうか。トロツキストだと自称してきた。非暴力で世界を変える。東アジアに白旗を掲げる。天国のトロツキーも褒めてくれるだろう」。

 新しいアジアを

 会場からの発言を受け、沖本さんが語った。「明日、沖縄に帰る。闘いの日々がまた始まる。本土と沖縄と連携して新しい日本、新しいアジアを作っていく」。
 最後に本紙編集部を代表して松下知さんがマイクを握った。「この会について最初は公開講座のスタイルで考えていた。大仲尊(一坪反戦地主会)さんにも参加を願った。横田基地の闘いと一体の闘いとして進めていく」。「沖本さんの家族と共に集会を作った。この豊かさは、沖本さんの人柄のなせる業だ」。閉会に合わせて、「沖縄を返せ」「豊年温度」を参加者が合掌した。3時間半に及ぶ和気あいあいとした、旧交を温めようとする同窓会さながらの出版記念会が幕を閉じた。     (大仲恵)

沖本裕司さんの報告から

対立のないアジアをめざして

 翁長知事の登場と共にこの本を書き始めた。最初は「瀬長亀次郎」のイニシャル=KSを使っていた。10年間をまとめるにあたって写真も膨大な量になった。カメラは4台も買い替えた。写真の取捨選別を繰り返して何とかまとめた。
 この10年の闘いのポイントは4つの出来事として取り上げることができる。
 ひとつは「翁長雄志知事の誕生(2014年11月16日)」。次に「セルラー球場県民大会(2015年5月17日)」。三つめは「辺野古埋め立て承認取消(2015年10月13日)」。最後に「埋め立ての是非を問う県民投票(2019年2月24日)」だ。この闘いは自公政権の絶頂期とも重なっていた。
 2015年5月、那覇市のセルラー球場での集会に5万人が集まった。スタジアムの定員は3万5千人だ。そして10月には翁長知事が辺野古の埋め立て承認を取り消した。歴史的な闘いの始まりだった。主権者は誰か、政府か,県民かと。
 2016年、私たちは建設用のブロックを背に座り込みをした。工事が中断すると区域に自由に入っていけた。カヌー隊と海上保安庁との闘いだ。高江のヘリパッド建設を阻止しようと、橋上に車を結集させバリケードを作った。韓国、中国、香港など国境を越える闘いも推進した。日米合同軍事練習は強度を増している。日本の軍事化の一方で国民は生活防衛で精一杯だ。
 米兵は沖縄戦で多大な犠牲を出した。沖縄の米軍基地は二つを除いて戦死した兵士の名前が付けられ、死亡は5月に集中している。三つの提起をしたい。
 ひとつは、南西諸島を非武装中立地帯に。二つ目は「日本という国の中に、沖縄というもう一つの国のタマゴがある」ということ。三つめは、尖閣諸島をめぐる領有権争いをやめさせることだ。大国の思惑に支配されない自治を作る。対立のない一つのアジアを作っていく。

講演、サンシンと歌、労組活動、ブログでの紹介(2.15)

講演する沖本裕司さん

週刊かけはし

購読料
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00860-4-156009  新時代社