11・15第24回リニア勉強会・リニア新幹線の『いま』

公共性・地域の未来・市民参加の具体的な対案で開発と環境破壊の流れを止められる!

 【大阪】11月15日、リニア市民ネット・大阪の主催で「第24回リニア勉強会・リニア新幹線の『いま』─沿線住民の動き」が開催された。
 主催者あいさつで春日直樹さんは、最近はメディアでも頻繁に取り上げられるようになったリニア沿線各地での環境破壊の実態、大深度地下工事をめぐる相次ぐ地盤沈下への不安、計画見直しの声などを取り上げて、「リニア新幹線は本当にできるのか?」、10年後・20年後のことを考えるのならリニアではなく、別の未来をいっしょに語り合いませんかと問いかけた。まず自分たちで知り、周りの人たちに知らせていくことが大事だが、情報が手に入りにくいことを指摘し、ジャーナリストの樫田秀樹さんによる新著「最新報告・混迷のリニア中央新幹線」(旬報社)などの書籍を紹介した。

米国のリニア計画を市民運動が止めた!

 メインの報告は国際環境NGО「FOE Japan」委託研究員の柳井真結子さん。環境問題とコミュニティー開発をテーマに国内・海外、特にインドネシアの気候変動適応プロジェクトに関与している。10年以上前に長野県南部に移住したが、近隣の町や村がリニア中央新幹線のルートになっていることを知り、それ以来、取材や調査活動、運動と情報のネットワークづくりに関わってきた。
 報告では、はじめにリニア中央新幹線の事業計画の概要について確認した後、米国でも同じ時期に、リニア技術を使った同様の計画「マグレブ」(磁気浮動式鉄道)がワシントンDCとボルチモア間で進められていたが、環境影響調査の段階で多くの問題が明らかになり、住民の運動が広がり中止になったことに触れ、なぜそのようなことが可能になったのかを説明した。
 報道によると「(今年)8月1日に米運輸省は、首都ワシントンと東部メリーランド州ボルティモアを最高時速500キロで結ぶ超伝導リニアの高速鉄道計画について、環境影響評価を中止し、補助金2600万ドル(約38億3000万円)を撤回すると発表した。進行が遅れていた同計画の、事実上の頓挫を意味するとみられる。同省は先月、西部カリフォルニア州の高速鉄道計画に対する連邦政府の補助金40億ドルの撤回を決めている。運輸省は200億ドル規模のマグレブ・プロジェクトに対する補助金を撤回すると表明。『10年近くもの不十分な計画作業、リニアが通る予定の地域の強い反対、費用が想定をとてつもなく超過していること』などを理由に挙げた」(「ロイター」8月1日付)。

リニア工事の難航、次々と発生する水枯れ・地盤沈下、沿線住民の期待と不安

 柳井さんはこの決定に至る経過、環境影響調査で明らかになったこと、住民側の動きを詳しく説明した後、「アメリカではリニア計画が①計画性、②建設費、③地域住民への影響」を理由に中止されたが、日本ではどうか」と日本国内の問題に話を戻した。スライドの随所に挿入されているリニア計画が浮上する前の沿線各地の原風景、工事の無残な爪痕、大型車両や巨大掘削装置(シールドマシン)が森や川、地域の住民、生きものに襲いかかる恐ろしい光景を映し出す。①計画性については、当初計画の「2027年度に品川・名古屋間開業」が最近では同区間が「2035年度」に。名古屋・大阪間は2045年以降になる。②建設費は当初計画が5・5兆円だったのが今では11兆円に(品川・名古屋間)。③地域住民への影響については、春日直樹さんが主催者あいさつの中で触れた通り、工事の進行につれて水枯れや残土の処分、地盤沈下など予想されていた問題が次々と現実になっており、隠しきれなくなっている。
 柳井さんが生活拠点としている長野県南信地域ではリニア駅を地域振興のシンボルとして開発行政を進めてきた飯田市だけでなく、何の恩恵もないような農村部まで、リニアへの期待が強く、反対の声を上げられない状況、あるいは飯田駅周辺開発の用地や近隣の住民の移住という形でのコミュニティーの分断・崩壊が進んでいる。最近では開業の遅れで期待が不安に変わり、説明会や行政との交渉などに参加する人たちも増え始めている。一方、長野県でも北部・東部・中部に住む人たちにはリニアへの関心は低く、沿線住民は孤立しがちである。飯田市や長野県に限らず、地方行政が開発や公共事業(土木事業)に依存しているという問題はコミュニティーのあり方を考える上で重要だ。
 いったん工事を受け入れてしまったら、飯田市のように地域が分断され、トンネル工事で排出された「要対策土」(ヒ素などの重金属を含む土)を市内を流れる川の橋脚の基礎部分に活用するということまで計画されていた。長野県豊丘村では1961年6─7月の雨による土石流災害を経験している虻川上流の谷に130立方メートルの残土を置く(高さ50メートルになる)という計画があり、そこに「要対策土」も受け入れる案が浮上している。
 そこまでしていつ完成するかわからないリニアに未来を託すのか? 必要なのは市民の側からの代替案だ。米国の市民運動の経験に照らしても、今、市民が求める社会は「①スマートな成長、②長時間移動からの脱却、地域内での雇用・消費・文化活動の活性化、③徒歩や自転車での移動によるCO2排出削減、④老若男女が地域で生活しやすい交通のあり方、⑤既存の鉄道、インフラの改善によってそれらを実現すること」が基本となるだろう。

北陸新幹線延伸をめぐる京都と大阪・交野市の運動


 後半の各地の報告では、まず京都で北陸新幹線延伸計画(敦賀・京都間)に反対する「北陸新幹線延伸計画の環境アセスメントの一旦停止を求める会」共同代表の榊原義道さんが運動の経過と現在の状況について話した。
 いち早く計画を知り、地元での説明会開催や自治体・JRへの申し入れなどに取り組んできた美山環境影響調査の美山町の住民たちの訴えに応えて、京都市内でもすべての区で住民による自主的な学習会が重ねられ、政党や行政への働きかけ、署名集めなどを展開してきた。市内および府下の34団体によるネットワークが連携しながら地質学的条件や水・生活環境などへの影響についての情報開示を請求し、独自に分析・調査を行い、そのような事実の積み重ねをベースにわかりやすくインパクトのあるリーフレットやバナーなどを活用して人々に働きかけてきた。
 政党だけではなく、産業界や仏教界などからも懸念が表明される中で、7月参議院選挙では現行の小浜・京都ルートの見直しが大きな争点となり、同ルートに固執する候補の得票は20%弱にとどまり、ルートの変更または延伸計画自体の中止を求める候補の得票が合計で8割を超えた。6月には京都市議会で延伸計画反対の決議が可決されている。確実に流れが変わってきているが、JR西日本は小浜・京都ルートに固執している。米原ルートや湖西ルートでも問題は多い。むしろ公共交通を充実させるという観点からは在来線の強化と活用が重要であり、この点では党派を超えて一致している。それをどう具体化するかが課題だ。
 交野市在住の青木道夫さんはリニア市民ネット・大阪で月1回のリニア・カフェとその宣伝を兼ねた京阪枚方市駅前での宣伝活動を通じてつながりができ始めていること、交野市では9月に市民グループで春日直樹さんを講師にリニア問題の学習会を開催し、地元のミニコミ誌にも詳しく掲載されたことを報告した。
 この学習会には同市の山本市長も参加して、交野市の水と環境を守る市の姿勢と、JRに引き続き情報公開や対策の実施を迫っていく方針であることを語った。まだまだ計画を知らない住民がほとんどだが、沿線では過去に高速道路建設計画をめぐる住民運動があり、行政側が地下トンネルの危険性を理由に高架式にした経緯もある。情報を知らせていけば反対の声が広がるはずだ。青木さんは沿線各自治体でも行政に同じような取り組みを迫っていくことが重要だと訴えた。
 東淀川区在住のリニア市民ネット・大阪の会員からはリニア中央新幹線と北陸新幹線の両方の終着点となる新大阪駅の周辺で急速に進む再開発の動きと、同駅の近くで2件目のボーリング調査が実施中であり、ルートの確定に向けて水面下の動きが続いているという情報提供があった。
 司会の末岡友行さんは島本町で駅前再開発に反対する運動をきっかけに公共交通をメインに掲げて住民との対話を重ね、昨年の市議選挙で大きな支持を得たことを報告し、公共交通、特にコミュニティー内の移動のための循環バスや自転車道は切迫した問題であり、リニアではなくそのような事業のためにこそ予算を回すべきだと訴えた。

名古屋と大阪で止めよう


 参加者は会場に30人、オンライン参加が20人。オンラインを含めて活発な質疑や議論が展開された。
 柳井さんは報告の結びで、「まだ工事が始まっていない名古屋・大阪間のみなさんには、リニア新幹線が開通するとされている2045年にどんな社会で生活していたいかを考える中で、沿線の人たちといっしょに考えられるようになればいいなと思っています」と語った。主催者からは大阪から大鹿村に移住したリニア市民ネット・大阪の会員からの現地の変化を知らせるメッセージが紹介された。閉会あいさつで春日さんは「品川や名古屋ではすでに道路の陥没や地盤沈下が起こっている。起こってからでは遅い。大阪では今ならまだ止められる」と訴えた。  
    (大阪支局A)

NGO「FOE Japan」委託研究員の柳井真結子さん(11.15)

週刊かけはし

購読料
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00860-4-156009  新時代社