6・16三里塚─横堀農業研修センター裁判判決
千葉地裁の不当判決を糾弾する
成田国際空港会社の主張を追認
6月16日、千葉地裁(斎藤顕裁判長)は、成田国際空港会社による柳川秀夫さんら共有者4人と三里塚芝山連合空港反対同盟(柳川秀夫代表世話人)を被告とする(「横堀農業研修センター」(旧・労農合宿所)の破壊に向けて)「所有権確認、持分全部移転登記手続き、共有分割、建物等収去土地明渡請求事件」の提訴に対して①空港会社の土地の所有権を認める ②登記名義の回復を原因とする各持分全部移転登記手続きをせよ ③判決が確定したときは工作物を収去して、土地を明け渡せなどとする不当判決を言い渡した。以下は、不当判決に対する批判である。
(山下一夫〈一般社団法人三里塚大地共有運動の会事務局〉)
地裁は、ことごとく空港会社の要求を認めたが、空港会社の建物等収去土地明渡請求に向けた仮執行宣言については判決が確定するまでは認めなかった。
被告と弁護団は、このような横堀農業研修センター破壊の強行を阻止するために控訴の準備をすすめ、新たな闘いに向けて全国の仲間に支援を呼びかけた。
①土地収用法に基づく収用と民事訴訟手続きによる収用は、いずれも土地強奪を目的にしている
地裁は、土地収用法に基づく収用と民事訴訟手続きによる収用は違うとでっち上げ、「(90年代のシンポ・円卓会議での)運輸大臣の表明等や、空港公団が隅谷調査団の所見等を受け入れたことをもって、空港公団が、民事訴訟手続きによる権利の実現をしないことまでも表明したとは認められない」などと空港会社の主張を認め、追認した。
被告は、歴史の偽造に対して90年代のシンポ・円卓会議の議事録、柳川秀夫さん、平野識靖さんの証言によって「あらゆる意味での強制的手段はとらない」の「あらゆる意味」という以上、当然、全面的価格賠償という民事裁判的手続きも含まれることを立証してきた。
地裁は、土地収用法に基づく収用と民事訴訟手続きによる収用(民法258条に基づき、全面的価格賠償〈2021年民法改正で明文化〉によって土地強奪を正当化するための悪法である)は違うと言っているが、いずれも土地強奪を目的としていることは同一の性格である。たしかに民法258条は、「共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる」と位置づけているが、そのための要件の一つとして「共有者間の実質的公平を害しないこと」についても明記している。
地裁は、①空港会社の一方的な「土地をよこせ」の手紙と提訴②「あらゆる意味での強制的手段はとらない」の合意内容について「民事訴訟手続き」による土地強奪は含まれないなどという空港会社のねじまげた解釈を追認している。これだけでも「公平を害」していることは明らかだ。しかも空港会社の提訴は「信義則違反」が成立しており、権利濫用まで否定する始末だ。
全面的価格賠償の分割共有の強制は、横堀農業研修センターを軸にした長年にわたって積み上げてきた利用者間のコミュニティーの破壊を狙っていることは確かだ。被告や利用者の陳述書は個人の自由や権利を不当に侵害する行為であり、憲法13条違反(個人の尊重と幸福追求権)であることを証明している。
千葉地裁は、全面的価格賠償適用について「共有分割の申し立てを受けた裁判所としては、……共有物の利用状況……総合的に考慮し……全面的価格賠償の方法による分割をすることも許されるものというべきである」などと土地強奪の正当性を強調し、居直った。
判決は、言う。
「(2023年)令和5年6月、被告柳川らに対し、共有持分の譲渡を申し入れたが、被告柳川らはこれに返答しなかったことなどに鑑みると、現状において、原告と新C滑走路の建設予定地を共有する被告柳川らとの間で本件に関する協議がつくされたものではないが、客観的にみて、訴訟手続外において任意の協議が開始され、これによる紛争解決を期待できる状況にはほど遠いといわざるを得ないから、運輸大臣の表明等や空港公団が隅谷調査団の所見等を受け入れたことなど被告らが指摘する諸事情をしんしゃくしても、本件訴えが信義則に反するものとは認められない」と述べ、空港会社の主張を持ち上げ、バックアップするのだ。
ならば地裁は、わざわざ「協議がつくされたものではない」と認めていながら、一挙に飛躍して「紛争解決を期待できる状況にはほど遠いといわざるを得ない」などと断定することができるのか。もっと「協議」せよというのが論理的結論ではないか。
さらに「諸事情をしんしゃくしても、本件訴えが信義則に反するものとは認められない」とまで断定している。一連のプロセスに対して被告は「信義に反する」ことについて立証してきたが、ことごとく排除してしまった。
これだけではない。空港会社の拙速で強引な、(被告らが)「何らの返事もなかったため、本件訴訟を提起するに至ったものである」と述べているが、しかも返信期間は2週間でしかない。この時間設定はあまりにも乱暴である。つまり、最初から司法を使った全面的価格賠償方式を使って強制的に権利取得する手法を選択していたのである。繰り返すが、これは権利濫用であり、「共有者間の実質的公平を害」していることは明らかだ。控訴審であらためてこの対立点を浮き彫りにさせ、歴史の偽造と手前勝手な解釈を粉砕しなければならない。
②緊急性がないことを証明する誘導路建設構想
判決は、「本件土地を上記誘導路を含む空港施設の敷地とすることは不合理な計画ではない。そして、現時点において、本件土地が空港施設の敷地として利用されない具体的な見通し、可能性があることを認めるに足りる的確な証拠はない」「権利の濫用であるなどとして、不適法となるものではない」と空港会社を擁護する。
だが、空港会社のHPによれば「新しい成田空港」構想(新旅客ターミナルと新貨物地区)では第3滑走路からの誘導路はへの字には曲がらず、B滑走路方向へ一直線に伸びている想定図を掲載していた。誘導路建設構想の変遷は、設計がいまだに流動的であり、緊急性がないことを証明している。つまり、設計変更が可能だということだ。
空港会社の傲慢な姿勢に対して地裁は、「横堀農業研修センターは、現在、居住や生計を営むといった恒常的な利用がされていることを認めるに足りる的確な証拠はない」から強奪してもいいのだと言っているに等しいのだ。しかも「原告が被告柳川らに対して各26万1527円の賠償金を支払う方法により、分割するのが相当だ」という金銭解決に応じろとまで言っている。
横堀農業研修センターは、反対同盟・田んぼくらぶ・支援によって維持管理され、農作業・集会等のたびに使われている。空港会社のみの都合(空港拡張)によって、広く人々に活用されている施設を一方的に破壊するのは、「共有者間の実質的公平を害しないこと」に反しており、全面的価格賠償を適用するための前提が成立していないことを自ら明らかにしてしまっている。横堀農業研修センターの破壊を撤回しろ!

不当判決を批判する柳川秀夫さん(左)、清井礼司弁護士(右)(6.16)
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