沖縄報告 過ぎし10年を振り返り、これからの10年に立ち向かう

辺野古新基地建設反対!自衛隊ミサイル基地化反対!
沖縄を日米の軍事のくびきから解放しよう!

2024・12・15 沖縄 沖本裕司

はじめに

 10年前の2015年の新年は、前年11月の知事選挙で元那覇市長の翁長雄志さんが当選し、「辺野古新基地NO!」「もうこれ以上基地はいらない」「基地のない誇りある豊かさ」を掲げて、安倍政権との対立が深まっていこうとする時期であった。知事選に続く12月衆院総選挙でも、四つの選挙区すべてで、新基地反対の議員が当選。全国的には自公が勝利する中で、辺野古新基地をめぐる安倍政権対沖縄県の抜き差しならない対決が浮上していた。上京して何度も首相をはじめ閣僚との面談を求めても、安倍首相や菅官房長官など主要閣僚は翁長知事に決して会おうとせず、「工事を粛々と進める」とくりかえすのみであった。中央集権の伝統が連綿と続く日本では、こうした強硬な対応が地方の反抗を屈服させる手近な方法だということを権力者たちはよく知っているのだ。
 中央政府対地方自治体の過去の一般的な関係なら、これほど強硬な政府の態度に屈服し妥協してしまうのが通例だったであろうが、翁長知事は違った。翁長知事は、県民の多数により知事に選ばれた責任、公約の重みを知る誠実な政治家であった。知事は辺野古を止めるために、沖縄県の有する行政権限を最大限に活用し安倍政権との対決の道へと進んでいった。まず手始めは、岩礁破砕許可の取り消し(2015年3月)により、「海底面の現状を変更する行為のすべての停止」を命じた。さらに、前知事の埋立承認を検証する検証委員会を法律専門家・環境専門家合わせて6人で発足させ、埋立承認の取消ないし撤回へ向かって行った。県民の大多数は知事を熱烈に支持した。沖縄と日本政府との全面対決が開始された。
 そして、10年が経過した。この10年を振り返り、これからの10年を闘い抜く道筋を考えてみよう!

1.沖縄基地の現状

 2022年12月の安保三文書の閣議決定をスプリング・ボードとして、自公政権は軍事大国への道を公然と進み始めた。「防衛費」という名の軍事費は、まもなくGDP(国民総生産)比2%に達する。SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)の2023年度軍事費ランキングによると、日本は10位(約500億ドル)にランクされている。金額は対前年比11%アップ。トップ10では、ウクライナ、ロシアに次ぐ高い伸び率を示した。ところが、円安のためドル建てでは軍事費が約7%低下したことになる。数年後には日本は、
米国、中国、ロシアに次ぐ世界第4の軍事力を有する国家となることは確実だ。
 量は質に転化するの諺通り、高額軍事費はいわゆる専守防衛の枠を超えて敵基地攻撃能力を獲得するに至る。琉球列島を前進基地として長射程ミサイルを配置し、航空機や海軍力の増強と高性能化を常にはかるという軍拡スパイラルに突入する。そして、「継戦能力」を高めるために、弾薬庫の新増設、司令部の地下化、兵士用シェルターの建設、血液製剤の備蓄など実戦に向けた準備が与那国・石垣・宮古・沖縄・奄美を最前線にして九州・西日本から全国におよぶ。
 こうした自衛隊が憲法で「戦争放棄」と「戦力不保持」をうたう国にふさわしくないことは明白であるにも関わらず、「防衛力の強化」といううたい文句の前に、自公だけでなく、維新、国民、保守、参政、さらには立憲の一部まで右に倣え、という「翼賛体制」ができている。国政政党のレベルでは、日米軍事同盟と沖縄基地の強化に反対する政党は主に、共産・社民・れいわと少数派だが、沖縄レベルで見ると、まさしく生活の場を舞台とした戦争準備に危機感を持ち反対する声が大多数を占めるのである。

 この一年間の主だった動きを簡潔にまとめよう。

  ①辺野古埋立

 政府・防衛局は県知事から権限を奪う代執行のもとで、大浦湾の埋立に着手した。2024年1月から海上作業ヤード設置のための石材投入をはじめ、8月からはN1、N2護岸の施工を開始した。12月には、軟弱地盤を「改良」するためのサンドコンパクション船を金武湾に搬入した。遠目からも高さが70m前後になるというその巨大さが見て取れる。3連装の筒によって固められた砂杭が海中に打ち込まれる。その数は他の方法によるものも合わせて計71000本。初回分は13300本の砂杭を打ち込む内容(工期は4年後の2028年3月)で、入札結果は2月に発表されることになっているというが、サンドコンパクション船が入ってきたところを見ると、防衛局と業者との密約が交わされているのだろう。
 日本埋立浚渫協会のHPには、この工法のアウトラインが紹介されている。サンドコンパクション船は、この間改良されたとはいえ、せいぜい60~70mまでの工事能力しかない。最深90mにおよぶ軟弱地盤は「改良」できない。埋立工事費は昨年までに5300億円を越えた。今後いくらかかるか、政府は示せない。結局、大浦湾を破壊しつくして工事は途中で頓挫することになる。大浦湾の埋立に手を付けてはならない。日本で随一の生物多様性を有する大浦湾を保存しなければならない。
 いま国会で論議されている「103万円の壁」などをめぐって、税収減がネックになるとテレビ・新聞が報道している。辺野古を中止すれば財源が生じる。国家予算には限りがある。軍事が拡大すれば福祉が縮小することは不変の法則だ。所得税・消費税等の減税、健保料の減額、年金はじめ給付金の増額など国民福祉の充実の財源は軍事費の削減にある。軍事増強を進めながらのさまざまな政策はすべて一時の目くらまし、つくろい策に過ぎなくなる。
 石破内閣は国会で少数に落ち込んでも、安倍―菅―岸田と受け継がれてきた軍拡政策を進め、辺野古埋立を強行している。琉球セメント安和桟橋での6月の死亡事故以来止まっていた安和・塩川での土砂搬出が再開された。11月からはうるま市の宮城島からの石材搬出が始まった。奄美からの土砂搬出へ向けた調査が継続している。戦没者の遺骨が眠る沖縄島南部、糸満・八重瀬からの土砂搬出のめどが立たないため、防衛局は本部(もとぶ)、国頭、宮城島、奄美から土砂を運ぼうとしているが、いずれ南部に手を付けようと機会をうかがっているに違いない。
 11月新たに就任した小堀龍一郎沖縄県警本部長は、12月6日の県議会で、自民党県議の質問に対し、県内の基地反対運動に「一部には極左暴力集団も確認している」と答弁した。極左暴力集団とは「暴力革命による共産主義社会の実現をめざし、民主主義社会を暴力で破壊することを企図している集団」とのことだ。現地行動への警備はさらに厳しくなるだろう。安和では、ネットを持った民間警備会社の職員が合法的な牛歩行動を規制するという不法行為を続けている。だが、辺野古・海上・安和・塩川・宮城島で連日、抗議・阻止行動が続けられている。2018年の埋立土砂投入から6年となる12月14日、ヘリ基地反対協の海上チームは抗議船3隻、カヌー11艇を出し、「美ら海まもれ」と声をあげた。沖縄の決して屈しない現地行動は終わらない。

②陸自訓練場の新設をめぐって

 「自衛隊訓練場設置計画の断念を求める会」が12月7日、解散総会を開いた。住民ぐるみの反対運動で計画断念に追い込んだことから一つの区切りとして組織の解散を決めたものである。
 うるま市石川のゴルフ場(東山カントリークラブ)跡地に陸自訓練場を新設する計画は、2023年12月、突如として持ちあがった。閣議決定された予算案に、訓練場用地の買収費が盛り込まれていたのだ。陸自第15旅団の師団化に伴う人員増強に対応するミサイル部隊の展開訓練、迫撃砲の取り扱い訓練、夜間の行進・偵察、警戒・警備などを想定しているとした。岸田が安保三文書を内閣の独断で決めたのと同じように、木原をはじめ防衛省の職員たちは、地元には何の連絡や相談もなく、閑静な住宅地に近く、学びの森として多くの子どもたちが利用する青少年の家に隣接する訓練場建設という国策を押し付けようとしたのである。
 地元の旭区をはじめ、周辺4区や旧石川地区全体に反対の動きが急速に拡大した。防衛省は「実弾・空包、照明・発煙筒は使用しない。ヘリは緊急時を除いて飛行しない」と説明したが、地元の保革を越えた反対の声はさらに大きく広がった。玉城デニー知事は木原防衛相と県庁で会談し、計画の白紙撤回を要請した。「国の専管事項」と言っていたうるま市の中村市長も沖縄防衛局に白紙撤回を要請した。県議会が白紙撤回を求める意見書を全会一致で採択した。自民党県連も白紙撤回の要請をした。うるま市議会が計画断念を求める意見書を全会一致で採択した。3月20日にはうるま市石川会館で市民集会が開かれ、会場をあふれる1200人が結集した。そして代表が上京し、決議文と断念を求める署名を防衛省に提出した。
 防衛省はついに用地取得を断念した。4月11日の記者会見で、訓練場計画の白紙撤回と地元への謝罪を述べた木原は、「うるま市長や自民党県連からの要請を受けた結果、計画を取りやめる」と繕ったが、地元を中心に燃え上がった大衆運動の力が、岸田内閣の強行策を阻止したことは明らかだ。団結こそ力。
 沖縄の戦後の歴史で、住民運動の盛り上がりによって、米軍の軍事政策を阻止した例がいくつかある。1970年、国頭村安田の実弾射撃演習を阻止した伊部岳闘争、県道104号線越えの実弾訓練を中止に追い込んだ喜瀬武原闘争、1989年、恩納村のキャンプ・ハンセン内都市型訓練施設での訓練中止など。さらに、米軍占領下で米軍政の横暴に対峙し一つひとつ自治を勝ち取り本土復帰を実現したのも壮大な住民闘争の高揚によるということもできる。
 日本政府は陸自訓練場の新設を諦めていない。自衛隊基地の新設には、今回の石川だけでなく、宮古でも石垣でも、ゴルフ場跡地が利用されてきた。用地買収が手っ取り早いからだ。石川から撤退した防衛省は、別のゴルフ場の買収に乗り出す可能性がある。うるま市の求める会では、「同様の計画が他の地域で持ち上がり住民が反対した場合には支援を惜しまない」との方針を決めている。なお、この間の運動の記録集『住民運動が国を止めた!』は700部作成され、配布中である。

③琉球列島のミサイル基地化

 沖縄駐留米海兵隊は2023年、第12海兵沿岸連隊(12МLR)を発足させたが、琉球新報2024・12・7によると、2024年10月に兵站支援を担う第12沿岸兵站大隊が立ち上がったのに続き、このほど地対空ミサイルを扱う第12沿岸防空大隊(12LAAB)がキャンプ・ハンセンにつくられた。連隊を構成する三つの大隊のもう一つの大隊は、対艦ミサイル部隊であり、2025年9月までに発足予定だという。
 対空ミサイル、対艦ミサイル、兵站の機能を有する海兵沿岸連隊(МLR)は、小規模の部隊を離島などに分散させてゲリラ的に戦う作戦構想「遠征前方基地作戦(EABО)」の中核部隊である。2023年1月の防衛省・外務省「在日米軍の態勢の最適化について」によると、EABОとは「事態発生前から部隊を分散展開。展開した部隊は、防空、機動・分散等の能力により、敵の攻撃から残存。また、情報収集しつつ、対艦ミサイルで敵の行動を制約するとともに、海軍・空軍を中心とする作戦を支援」とされている。琉球列島に似た島々が描かれた図に、「対潜戦拠点」「対水上戦拠点」「前進武装・補給拠点」「ISR(共同の情報収集・警戒監視・偵察)拠点」「ミサイル防空拠点」などと記されている。完全に沖縄を戦場にする作戦計画だ。
 沖縄の島々の陸自ミサイル基地化はこの米軍のミサイル戦争構想に沿ったものである。2016年陸自与那国駐屯地が開設されたあと、奄美、宮古、石垣に陸自部隊が次々と駐屯を始め、2024年3月に勝連駐屯地に地対艦ミサイル部隊が新設され、奄美から与那国に至る陸自ミサイル基地網ができつつある。地対艦ミサイルの射程距離は今のところ、200km前後というが、防衛省は長射程化の研究開発に全力を挙げている。1000kmで上海、2000kmで北京に到達する。1972年、田中首相と大平外相が訪中して周恩来首相と結んだ日中国交回復の原点を忘れてはいけない。
 フィリピンでも米軍がミサイル部隊を配置する。鹿児島から奄美、沖縄、台湾、フィリピンに至る中国大陸の大陸棚の縁にあたる島々が「第1列島線」と位置付けられて、対中国の最前線基地をされているのである。日本は、政府安全保障能力強化支援(ОSA)を当面50億円規模として、第1弾をフィリピンに対し沿岸監視レーダー類を供与することを決めた。
 実戦訓練も激しさを増している。2024年10月下旬からの日米統合演習「キーン・ソード25」は、自衛隊約33000人・米軍約12000人、艦船約40隻、航空機約370機が参加する最大の実動演習であり、豪軍・カナダ軍も加わった。実戦さながら、ミサイル戦闘訓練、生物・化学・核兵器への対処訓練、滑走路復旧訓練、弾薬投下訓練、部隊輸送訓練、電磁波訓練、医療施設訓練、対空戦闘訓練などを行なった。全国で自衛隊が利用する民間空港は12か所、民間港湾は20か所に上る。沖縄では、那覇、新石垣、与那国の3空港、中城湾、那覇、平良(宮古)、石垣、久部良(与那国)の5港。軍事が膨張し、軍隊と民間との垣根が消滅していく。ウクライナでも使用されている米軍の高機動ロケット砲システム・ハイマースが新石垣空港経由で持ち込まれた。
 12月には、陸自と米・豪軍による共同演習「ヤマサクラ」が実施され、沖縄の米海兵隊が参加した。J・ヴァウル米太平洋陸軍副司令官は、中国・朝鮮・ロシアの名を列挙し「日本は自由の剣が峰、最前線だ」と強調したという。アメリカは、いわゆる第1列島線のミサイル基地化だけでなく、グアムをはじめミクロネシアなど、いわゆる第2列島線でのミサイル基地化を進めている。太平洋の彼方の国・米国にとって、第1列島線も第2列島線も捨て石に過ぎない。米国と共にウォーゲームに手を染めるのは愚の骨頂だ。
 それに対し、沖縄・九州・西日本をむすんだ反基地運動のネットワークが形成されてきている。
 
④浦添軍港の建設

 辺野古新基地建設が現在進行形の大問題としたら、浦添軍港は中期的な大問題である。新しい軍事基地はいらないという県民の願いとは裏腹に、「那覇軍港の代替」を口実とした浦添軍港建設は、中南部で唯一残っている珊瑚の海を埋め立て、港湾施設を拡張し、リゾート施設と共に軍港エリア49ヘクタールを造成するというものである。県および那覇市・浦添市当局が前のめりになる中で、地元を中心に粘り強く続いている反対運動を大きく展開していかなければならない。
 実際のところ、那覇軍港は遊休化している。ホワイトビーチ、天願桟橋、安謝新港を通じて、米軍は弾薬類、兵士たちの休養、生活物資などの搬入を十分行っている。その上、辺野古新基地の大浦湾側岸壁、浦添軍港まで求めることは、諺にある通り「盗人猛々しい」と言う他ない。ちなみに、軍港予定海域の陸側のキャンプ・キンザーも遊休化しているが、代替の倉庫群が造られていないことを理由に、米軍は返還しようとしない。
 キャンプ・キンザーの名前は、1945年5月沖縄戦で戦死したE・L・キンザー伍長に由来している。沖縄の海兵隊基地の名はみんな沖縄戦で戦死した米兵の名が付けられている。米軍は沖縄を「尊い犠牲を払って獲得した戦利品」だと考えている訳だ。沖縄戦終結から今年で80年。もう十分ではないか。米軍は太平洋の彼方の故郷へ帰れ。遊休化した那覇軍港とキャンプ・キンザーは無条件に返還せよ。沖縄の長期駐留は米国の名を貶めるだけである。

2.過ぎし10年とこれからの10年

 この10年間、県民大多数の新基地反対!の声を背景に、辺野古・海上・安和・塩川での連日の現地行動、全県各地での取り組み、そして沖縄県は日本政府に対し県が有する行政上の権限を行使して闘い抜いてきた。水深の浅い辺野古側の埋立は終わったが、投入土砂量にして十数パーセントにすぎない。軟弱地盤が広範囲に広がる水深の深い大浦湾側の埋立に着手し、年末には地盤改良工事船を配置したが、埋立の工期・工費はますます膨れ上がるだろう。辺野古新基地建設のメドは立っていない。しかし、政府部内のどこからも、埋立工事の一時中止や見直しの声が出てこない。どんなに酷い国策であっても、いったん決めたことはひたすら遂行あるのみという習慣が明治以来の中央集権国家・日本という国の在り方であるからだ。
 2014年翁長知事の誕生と共に開始されたオール沖縄としての県民ぐるみの闘いは10年を経てなお、継続している。知事の急逝を受け継いだ玉城デニー知事が現在二期目の半ばに入った。
 とはいえ、日本政府の「辺野古唯一」との頑迷な壁に直面して、闘いの熱気とエネルギーが後退してきたことも事実である。それは、現地行動や県民大会の結集力の縮小、財界を始め保守勢力の離反、各種選挙での後退などとなって現われてきた。国会レベルでも、自公・維新のみならず、国民・立憲の一部も「辺野古容認」を公言している。国民民主党の玉木代表は、12月3日のインタビューで「かなり埋立が進み、あれをまた海に戻せというのも現実的じゃない」と、かつて「プランB」に言及した公約の撤回を合理化した。
 国政選挙でこれまで政権を担ってきた自公が少数派に転落したにもかかわらず、維新・国民といった中間政党が助け舟を出し、これまでと同様の国策が推し進められるという構造が明らかになっている。
 有害物質と廃棄物に関する国連特別報告者であるマルコス・オレリャーナさんが沖縄を訪問、PFAS汚染の現場をめぐり、11月20日に記者会見を開き、次のように述べた。「基地の周辺に工場など汚染源になる可能性のあるものはない。PFAS汚染と米軍基地の間に関連性があるのは明らかだ」。2025年に「軍事活動と毒物」と題する報告を国連に提出するという。米軍の傲慢と日本政府の追従を打破する一つの方向だ。
 また11月14日、韓国済州(チェジュ)道の呉知事が沖縄県庁を訪問し、玉城デニー知事と面談して、済州道と沖縄県との「友好協力都市協定」を締結した。済州の4・3事件慰霊祭や沖縄の6・23慰霊の日の相互訪問などを通じて築いてきた両者の絆がさらに強まったと言える。沖縄県は「21世紀の万国津梁」を地域外交の柱として掲げている。日本政府から独立した独自の地域平和外交の歩みを強化しなければならない。
 県民の結束が大事だ。何に基づいて結束するか。戦略的に議論を深めることが重要である。一つは、沖縄からすべての軍事施設を撤去させ非武装中立地帯とするという課題である。日中国交回復を回想して、河野洋平元衆院議長は「新たな軍事拠点の整備に膨大なコストを費消していくのではなく、むしろ緊張緩和のため、日本側から積極的に、南西諸島を非武装地帯としていく提案を行なってはどうか」と述べた。実際、さまざまな人々が「沖縄の緩衝地帯化」について言及し始めている。尖閣諸島の領有権問題の棚上げが日中の突発的な軍事衝突を避ける当面の課題だとすれば、琉球列島の非軍事化・非武装中立地帯化は日中の恒久平和をもたらす戦略的課題であろう。
 ノーベル平和賞を受賞した被団協は、原爆で壊滅した広島・長崎から「核のない世界」を懸命に訴えている。戦争で焦土と化した沖縄から「武器のない地域社会」を訴えよう。多くの地方自治体が「非核平和都市宣言」をしているように、沖縄県と県内市町村が「非武装中立地帯宣言」を行なうことは万国津梁、平和の架け橋の鮮明な旗印となるだろう。
 もう一つは、東京の中央政府と対等の権力を有する沖縄の政府をつくり上げるという課題である。辺野古新基地建設をめぐり翁長―玉城と続いた県の行政権限の行使は、警察・司法も含む日本政府―沖縄県という中央集権支配構造のもとで抑え込まれてきた。ここのところを打ち破らなければならない。
 母親が沖縄県久米島出身の佐藤優さんは「大日本帝国は滅びましたが、現代の日本も、均質な国民国家ではなく、沖縄という外部領域を持つ『帝国』であるという視点が必要です」(『大世界史』文春新書)と述べている。日本は「沖縄という外部領域」と日本本土からなる複合国家なのである。薩摩の琉球侵攻と明治の琉球併合により、琉球・沖縄という「異国」が日本の中に取り込まれ同化されないまま存在している。おそらく将来にわたって同化されることはないだろう。
 日本という国の中に、沖縄というもう一つの国(のタマゴ)があると考えればよい。やがてヒナがかえり成長して政治的覚醒を遂げれば「沖縄自治共和国」という新しい国となり、日本本土との連邦制を求めることになるのではないかと私は思う。
 こうした戦略的課題について議論を深めなければならない。情勢は流動化している。様々なきっかけで政権の危機や大衆運動の爆発が起こりうる。直面する闘争課題に全力で取り組みながら、沖縄を軍事植民地から解放する戦略を明確に描いて進もう!

宮城島からの石材搬出に反対するうるま市島ぐるみ会議のメンバー

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