事実調べを実現させ再審開始へ
石川一雄さんの完全無罪を
部落解放同盟支部が決意を新たに
【東京】10月13日、東京・荒川区の区立さつき会館で「事実調べを実現させ、狭山差別裁判の再審を勝ちとる荒川集会」が開催された。部落解放同盟東京都連荒川支部員と支援者ら約50人が集まり、石川一雄さんの完全無罪を勝ち取る決意を新たにした。
荒川区民共闘会議が総会
午後6時30分からのこの集会に先立ち、6時から「部落解放荒川区民共闘会議」の年次総会が同じ会場で開かれた。同会議長の坂本繁夫さんが集会基調を提起した。
「この一年間、区民共闘の仲間は毎月の『23デー』街頭情宣をやりきった。通行人への署名の呼びかけと裁判所へのハガキ運動など、新たな参加者も加わり精力的に続けてきた」。「この行動で反応も徐々に増えていったが、荒川区や東京都レベルではまだまだ不十分だ」と総括した。総会は活動報告、会計報告、幹事会体制などを提起し会員の拍手をもって承認された。10分間の休憩の後、「10・23 狭山荒川集会」が始まった。
10月31日の日比谷集会へ
荒川集会では司会者さんによる開会あいさつの後、前記の坂本繁夫さんが主催者あいさつをした。
「金木犀の香りがどこに行っても漂ってくる。石川さんも嗅いでいるのだろうか。もう84歳になる。裁判の引き延ばしは許されない。司法の改革、政治の改革が必要だ。今日は山本志都弁護士の話を聞いて、これからも『23デー』を続けていきたい。10月31日の日比谷集会にも皆さんが集まってほしい。よろしくお願いします」。
この後、石川一雄さん、早智子さんからのビデオメッセージが上映された。
石川さんは「皆さんがた、署名や活動をしていただきありがとうございます。目が悪いので書類が読めないが、鑑定人尋問を実現させたい」。「裁判所へハガキで要請をしてほしい。万年筆のねつ造を明らかにしたい」。「ぜひ声を届けてほしい。お力添えを心から願っています。よろしくお願いします」。
寺尾判決から50年目に
続いて早智子さんが発言。「8月の三者協議で検察は不誠実な態度に終始した。腹が立って仕方がない」。「現調が再び増え始めた。コロナが終わったが毎日緊張の連続だ。石川一雄は皆さんに会うことが元気の源だ。真実を自分で話したいからだ。家に閉じこもっている時とは全然違う」。
「狭山は60年の闘いだ。6月には51万筆の署名を提出している。10月31日は寺尾判決から50年の節目だ。皆さんに感謝の気持ちを伝えたい。本当にありがとうございます」。
狭山弁護団の山本志都弁護士の講演が始まった。山本さんは44枚のスライドを使い、事件の基礎知識と第3次再審開始のためのポイントを解説した。(講演要旨別掲)
反戦Tシャツで入廷拒否
続いて支援団体からアピールを受けた。「平和憲法を守る荒川の会」の森本孝子代表は元小学校教員。教育現場で精力的に組合活動を展開してきた。掲げた一枚のフリップにはいくつかの数字が並んでいる。クイズ形式で参加者に問いかけた。答えは食料自給率、防衛費、インボイス反対署名数などだ。
森本さんは、山本弁護士が担当し自身が原告になっている「安保法制女の違憲訴訟」でのエピソードを紹介した。
「この『NO WAR』と書かれたTシャツを着ていた男性が、裁判所職員によって入廷を制止された。私は『裁判長の指示か』と聞いたら『隠してほしい』との指示だと。小競り合いや応酬があり埒があかないので弁護団に抗議をしてもらい、最終的には持ち物でロゴを隠して入廷した」。「次の公判では多くの人が『NO WAR』はじめ、沖縄のロゴなど様々なメッセージの服を着ていたが入廷禁止はなかった。弁護団の力はすごい」。
山谷で30年間炊き出し
「ほしのいえ」の三上一雄さんが発言した。「ほしのいえは30年間、毎週火曜日に山谷への炊き出しを続けている。食料をもらう人と作る人の壁をなくそうという趣旨で夜の8時に出かける。労働者が帰ってくる時間だ」。
「かつては700個のおにぎりを作ったが今は約200個。生活保護を受給しアパートに入る人が増えた。私たちは毎年恒例のクリスマスコンサートを12月に開催する。関東大震災から100年。大虐殺の悪魔性をどう表現すればいいのかと考えている」。
司会者が今後の行動を確認した。狭山10・30集会への呼びかけや「23デー情宣」、女性部による高裁前でのスタンディング、裁判所へのハガキを会場で書いてもらい、受付で集約することなどが呼びかけられた。
解放同盟が先頭に立って
集会の最後に、解放同盟荒川支部書記長の小野崎篤さんが閉会のあいさつをした。「今日は墨田、足立そして国立からも仲間が駆けつけてくれた。今日の山本弁護士の講演は、先日の河村健夫弁護士とは内容が重ならないよう工夫されていた」。「石川さんが1994年に仮釈放された時、この会館の1階の和室で歓迎会をやった。部落民だから犯人にされた。地域の支援も大切だが、私たち同盟員がまず主体的に、あきらめずに闘うことだ」。
※山本弁護士は、講演が終わって質疑応答に入る直前に、本来話すはずだった「全国部落調査裁判」について触れた。限られた持ち時間の中で配分ができなかった。「示現舎」によるこの差別事件については本紙紙幅の都合もあり、別の機会に解説したいと考えている。 (佐藤隆)
山本志都弁護士の講演から
「いよいよ大詰め 狭山第3次再審 鑑定人尋問の実現を」
狭山事件が発生する以前、「偽千円札事件」や「連続爆破予告脅迫事件(草加次郎事件)」が発生した。警察はいずれも犯人を捕まえられずに大失態を続けていた。「警察は何となく無能だ」という人々の感覚が「警察は明らかに無能」へと変わり、世論の厳しい非難を浴びていた。篠田弘作国家公安委員長(当時)は「狭山では何としても生きた犯人を捕まえる」と発言。地に落ちた警察の威信をかけたでたらめな見込み捜査が開始された。
石川さんは「窃盗容疑」で典型的な別件逮捕をされた。当時は今では考えられない違法捜査のオンパレードだった。取り調べの内容も窃盗事件ではなく少女誘拐事件そのものだった。警察の持ち時間は23日間。微罪から始め罪名を追加して拘留を延長していく。国際的にみても長すぎる拘束だ。手錠をかけたままの取り調べは、冬にはとても手が冷えるそうだ。
当時は起訴まで弁護士がつかなかった。実は石川さんには私選弁護士がすぐについたが、警察の面会妨害が続いていた。今では警察署で数分待たされるだけで時間制限のない面会ができる。
弁護団は寺尾確定判決を打破するために2022年8月、裁判所に「事実調べ」を請求した。その概要は11人の鑑定人尋問と1件の鑑定要求だ。法律上「事実調べ」は、再審開始の要件ではない。再審開始(または不開始)の判断を下すのに必要な手続きは「求意見」で、裁判所が請求人と検察から意見を聞くだけ。しかしこれまで事実上、事実調べが再審開始の決定的な要件になっている。だから今が重要な時期だ。東京高裁への任官は、この国の裁判官のエリートコースの登竜門。だからハードルが高い。
(要旨・文責編集部)

山本志都弁護士がスライド使い説得的講演(10.13)
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