コメは安くなるのか
コラム「架橋」
農林水産省は3月に入ってから、コメの小売り平均価格が4077円(前年同期比99・3%増)だと発表した。消費者が「コメが買えな~い」と悲鳴を上げるなか、政府は備蓄米の放出を始めたが、これがどうもうさん臭い。
入札された備蓄米14万2000tの94%を、集荷業者であるJA全農が落札している。100%ではまずいと考えたのか、福井・佐賀・奈良・熊本・愛知の農協などにもわずかばかり落札させている。平均落札価格は、玄米60㎏で2万1217円だ。JAはこれに運賃・保管料・事務費を加算して流通させるとしている。
この落札価格の評価はいろいろあるだろう。高値で買わされて在庫を抱えるスーパーなど小売りや、「安いコメ」を作らされてきた農民への影響などだ。
ここからいくつか計算しなければならない。玄米を白米にするには精米する必要がある。精米歩合は8%(酒の場合は25%以上)なので、60㎏の玄米は55・2㎏の白米になる。したがって今回落札された玄米は、重量比だけで計算してみると、5㎏で1922円の白米ということになる。JAはこれに諸経費を加算するとしているが、ここに卸売業者が加わって「相対的取引価格」が決まる。今年1月時点での24年産の玄米60㎏の相対的取引価格は、平均2万3715円であった。この価格で計算すると、5㎏の白米は2148円になる。
昨年の夏ごろから始まった米価の高騰だが、6月の相対的取引価格は、23年産米が前年比で11%値上がりしていた。それでも玄米60㎏が1万5865円であり、白米5㎏の価格は1437円で、22年産米は、同1279円だった。そしてその当時のスーパーなどでの小売価格は、この価格に千円強ほど加算されていたのではないだろうか。
そう考えると、確かに相対的取引価格は高騰しているが、卸売業者と小売業者そして消費者までの流通過程のどこかで、米価が「不当に」吊り上げられているのではないかと疑問を持たざるをえないのである。相対的取引価格で5㎏、2148円の白米が4千円になっているのだから。
現在、コメが不足しているわけではない。スーパーの一角には、5㎏の袋が山積みにされている。ただ値段が高すぎて、気安く手が出せないだけなのだ。2㎏の袋でしのいでいる人が多いようだ。
(星)