小旅行の記憶
コラム「架橋」
自治体が栃木県那須にあるホテルの部屋を確保し、区民向けに安価で提供する制度を、私は利用し続けている。最小の部屋なら一泊6千円程度。数カ月先まで予約が埋まっている。
忘れた頃にネットで検索すると、「平日で一週間先」という空室を見つける。先月も急きょ予約し、年休を取って出かけてきた。
現在運休中の高速バスを利用していた頃。JR王子駅前で待ち、終点「那須温泉」で下車、片道4時間の行程だった。SAでの休憩では銀嶺が遠く輝いていた。一般道へ降りると気温が急激に下がり、雪に覆われた牧場や木立を縫うようにバスは進んだ。
夕食は豪華そのもの。地元産の牛豚のすき焼き、しゃぶしゃぶ、会席で肉は食べ放題。客の誕生月にはワインやカラオケのプレゼントまであった。運営会社の変更と、コロナ禍による休業期間を経て、今も営業が続いている。
往復には電車を使っている。上野から新幹線で1時間10分。那須塩原の駅から車で30分である。駅前の大手居酒屋のランチも毎度のこと。ホテルの迎車時間から逆算して自宅を出発する。スマホなら簡単に計画が立つ。
大手旅行会社の「日帰りバスツアー」にも慣れた。集合場所が上野駅前のプランだけを選び、関東近県を巡る。
「ミステリーツアー」なる企画では、コースが事前に客に知らされない。車中でスマホのGPSから行き先を予測しても当たらない。主催者も考え抜いており、有名な観光スポットを巧みに避けている。口座引き落しの後払いで、総額1万円前後のプランを選ぶ。すべてお膳立てされた旅だから気楽ではある。
過去に小欄執筆者が熱海に集まり、一泊二日の合宿を開いた。翌朝は箱根へ足をのばした。強羅には会社の契約施設があり、ここにも連れ合いとよく宿泊した。
職場の同僚は北海道、韓国、台湾、エジプトなど、私とは桁違いの距離にあっさりと出かけていく。まあ分相応。硫黄の匂いを家まで持ち帰る温泉旅行で、当面は心を癒すつもりだ。 (隆)

