タケノコご飯のない春
コラム「架橋」
「今年は蛾に竹の葉がやられて全然タケノコが出ないんです。去年は京都の方がやられて全滅し、その蛾が今年はこっちに移動してきたようなんです」
私はこの20年あまり毎年春に「京タケノコ」を贅沢に食べてきた。若竹煮に始まって、タケノコご飯、タケノコの味噌汁、タケノコのてんぷらと約一週間近く、年によっては2週間ほどおいてまた一週間、京タケノコを食べてきた。
京都の方とは京都の西山地域、京都市西京区、大山崎町、長岡京市、向日市を指す。言わずと知れた京タケノコの産地である。
こっちとは、その西山と地続き山続きの大阪府島本町の山里、尺代地区である。ここでとれるタケノコを、地続きでもあるし、私は勝手に京タケノコと称している。
私が始めて尺代を訪れたのは20年ほど前、この集落を流れる水瀬川の上流に掛かる小さな滝を訪ねた帰り道であった。4月も半ばを過ぎ、桜は終わっていたのだが、山裾のあちこちでヤマフジが咲き、ピンクと白の花を同じ木につけた花木があちこちで満開になっていた。
集落の多くの家の庭には竈が据えられ、タケノコが炊かれている。その甘い香りが歩いている私をどこまでも追いかけてくる。そして、幸運なことに、集落の終わり近くでタケノコの小さな集積場を見つけたのである。
2025年、京タケノコは異常なほどの大不作であった。「シナチクノメイガ」、中国南部原産の外来種の蛾、芋虫状の幼虫が竹の葉を食い荒らし、竹の葉を枯らし、タケノコの生育を阻害する。20年に愛知県で初めて確認され、現在、京都、大阪、東京、静岡、山梨、神奈川、千葉等でも発生が確認されている。
尺代だけではなく、長岡京市の郊外でも日の光が入るように間伐され、竹の葉をきれいに敷き詰められた竹林に沿って歩いたことが何度もある。まさに、タケノコの畑である。私が今年、京タケノコを食べることができなかったのはともかく、生産者の苦労を思うと本当に胸が痛む。(O)

