最低賃金、31の県で千円以下の「目安」
異議ありの声を地域から!
最低賃金大幅引き上げキャンペーンの闘い続く
格差完全解消を行え
【宮城】中央最賃審議会は7月25日、引き上げ額を50円とし、昨年の1004円から1054円(全国加重平均)とする目安を決定した。岸田政権は「過去最大の引き上げ」を強調して政局の巻き返しに懸命だ。しかし、物価上昇に追いつかない額であり、地域間格差もそのままだ。
最低賃金大幅引き上げキャンペーンは「時給1500円をすべての労働者のために」と訴え、共同の闘いを継続してきた。地域審議会では答申が続いており、各地で「異議申出」の取り組みが始まっている。
(仙台U・J/8月8日)
宮城審議会、目安と同額を答申/採決で異例の決定
宮城審議会は5日、公益委員側が提出した改正案(目安と同額)を賛成多数で決定し、労働局長へ答申した。923円から973円への引き上げとなる。
〈目安と同額〉という点では昨年と同じだ。しかし内容は大きく異なる。昨年、東北地方などCランク県の審議では大幅な引き上げ答申が続いたが、宮城(Bランク)は目安からの増額を行わなかった。今年、労働者側が引き上げ額の上乗せを求めるなど労使の開きが大きく、公益側が提出した目安と同額とする案が採決によって決定された。宮城ではこの間、採決なしの全会一致による決定が行われており、異例の展開となった。
「これだけの物価高が続いているので、労働者の生活は明らかに厳しい。中小企業、零細の事業者も、同様に賃金の支払い能力には一定の限界がある。公・労・使で審議を尽くした」と審議会会長は語っている。
答申には中小企業・小規模事業者が継続的に賃上げできる環境整備、および「構造的な価格転嫁」を実現するための施策を政府への要望とすることが付記された。
3つのランクで同額引上げの目安
最賃中央審議会は今年、3つのランクで同額の引き上げとした。昨年はそれぞれ1円の差をつけたが、それでは目安の段階で地域間格差の拡大を認めることになる。「地方の危機感」が噴出し、Cランク県を中心に大幅な増額があいついだ。東北では山形、青森、秋田で5円以上の引き上げとなった。
昨年、目安は全国加重平均で1002円だった。各地の地域審議会の答申によって1004円となった。岸田首相は1004円をあたかも政府の手柄のように持ち上げたが、2円をプラスさせたのはCランク県をはじめ地方での切実な声が審議会を動かしたからだ。
昨年と同様、目安に対して地方の危機感が表明されてきた。河北新報社説は次のように指摘した。「目安通り引き上げられても(東京都と岩手県の)差は220円で現状と変わらない。岩手のほか、青森、秋田、山形の各県もC区分で、目安通りの引き上げが実現しても時給1000円に届かない。こうした状況が放置されれば、東北からの人口流出はいっそう加速しかねない」(「最低賃金50円アップ/実感できる「底上げ」効果を」7月26日)
引き上げ額を同額とする今年の目安は、地域間格差の是正を求める声に配慮したものであったとしても、目安通りであれば格差はそのまま引き継がれることになる。各県での審議が注目される。
「1500円の実現」求め、異議申し出へ
宮城全労協は最賃改定審議の開始にあたり「物価上昇を上回る引上げ」「早急に1500円の実現」などを労働局長に要請した(資料参照)。
また7月29日の審議会では宮城合同労組の組合員が意見陳述を行った。「介護現場では人手不足が続いている。最賃とあまり変わらない私たち介護職や低賃金の職種では、今後を担う人材がいなくなることを懸念する」、「(同時に)小さな事業所では価格をあげたことで取引、契約が解除されるというリスクがあり、値上げに踏み切れない環境にある」など職場の現実を訴えた。答申に対しては異議申し出の予定だ。
全労協は7月31日、「目安額答申に抗議する」との事務局長談話を発表、「低賃金構造、格差構造を温存する」として答申の内容を批判。「大企業による下請け叩き=利益独占」など「企業構造の矛盾を労働者が引き受けることの理不尽さ」に抗議することが必要だと強調した。
また同額目安については「絶対額での格差拡大を容認した昨年の目安額答申への批判を一定程度反映したと受け止める。しかし私たちが目指すのは、都道府県間格差(220円)を縮小・解消、全国一律を実現することである」「引き続き、格差完全解消に向けて取り組みを進めて」いく。
談話は「全労協は、引き続き『どこでもだれでも今すぐ1500円』を掲げ、ナショナルセンターを越えたすべての労働組合と共に、各地方審議会での真摯な議論を求めて取り組みを進めていく」と結んでいる。
資料
宮城県の2024年度最低賃金を審議するにあたっての要請
(6月28日/宮城全労協)
(1)物価上昇を上回る最賃引上げにすること、早急に1500円を実現をすること
厚生労働省は6月5日、4月分の毎月勤労統計調査(速報)を発表しました。物価の影響を考慮した働き手1人あたりの「実質賃金」は前年同月より0・7%減り、過去最長を更新する25カ月連続減となりました。依然として物価の上昇に賃金の伸びが追いついていない状況が続いています。電気料金を見ても東北電力は6月1日から25%値上げしており、夏場の冷房需要期に負担が増えます。僅かの所得税減税も役に立たず、賃金引上げ以外に物価高、料金高をクリアする方法はありません。
24春闘の結果が、33年ぶりの高水準だったとしても、労働組合に組織されていない、中小零細企業労働者、非正規労働者、外国人労働者などに及んでないことが、5人以上の零細企業も調査範囲とする毎月勤労統計の数値で明らかです。これらの労働者の生存権は、法定賃金である最低賃金を引き上げによってのみ守られます。
宮城労働局長に対し、物価上昇を上回る最低賃金を念頭に入れた審議を推進させることを要請します。岸田首相は2030年代半ばに1500円に引き上げるようなことを述べましたが、早急に1500を実現させるよう要請します。
(2)全国の最低賃金を一律にすること、東北からの労働力流失を阻止すること
昨年度は、最低賃金額の地域間格差を解消することを目的として、全国各都道府県をAからDの4段階からAからCの3段階としました。しかし、最も高い東京都の1113円と最も低い岩手県の893円の差は220円となっており、地域間格差は全く解消されていません。
こうした地域間格差の拡大が地方の人口減少・衰退を促進する要因のひとつであることは明らかなため、近年、多くの地方議会において全国一律を求める意見が出ています。地方では自動車は生活必需品であり、その自動車保有費用を考慮に入れると全国どこでも最低生計費は大きく変わることはありません。全国一律最低賃金制度は、若年労働者の都会への流出を防ぎ、地方の疲弊を阻止する役割を果たすことができます。220円まで広がった地域間格差を解消するには、全国一律制度確立に踏み出すことが求められます。 全国どこでも1500円に引き上げるべきです。
(3)中小零細企業への最賃引き上げ支援策を強化すること
最低賃金を引き上げていくに当たっては、独占禁止法、下請代金支払遅延等防止法を積極的に運用し、中小零細企業と大企業などその取引先企業との間で公正な取引が確保されるようにする必要があります。中小零細企業の価格転嫁はそのうえでしか成り立ちません。さらに業務改善助成金の簡素化と拡充も必要です。社会保険料の事業主負担分の減免などの中小零細企業支援策を実現することも求められています。審議会がこれらの課題についても議論できるよう要請します。
(4)地方審議会の審議を全面公開すること
最賃決定についての県民の関心は非常に高まっています。全ての審議を公開の場で行うことを要請します。
(5)最賃近傍で働く労働者を委員に選出すること
審議会が労働者の生活実態を把握するため、今後最賃近傍で働く労働者を委員にするよう要請します。
(以上/2004年6月28日)
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