袴田さん再審無罪勝利! つぎは狭山

事実調べ・再審開始を

11.1狭山事件の再審を求める市民集会

 【東京】11月1日午後1時から、東京・日比谷野外音楽堂で「袴田さん再審無罪勝利!つぎは狭山!東京高裁は事実調べ・再審開始を! 狭山事件の再審を求める市民集会」が同集会実行委の主催で開かれ、全国から部落解放同盟や同共闘会議の仲間たちが集まり、日比谷野音を埋め尽くした。
 紅龍さん(上々颱風 シンガーソングライター)の歌と演奏のプレイベントがあり、その後集会が開始された。

インクの再鑑定の実現

 部落解放同盟中央本部委員長の西島藤彦さんが開会のあいさつ。
 「袴田さんの完全無罪判決は狭山の取り組みに大きな励みを与えてくれた。いよいよ次は狭山だ、そんな思いをこの集会の中で、意思統一しながら、闘いを進めていきたい」。
 「この間、有罪判決の大きな決めてになってきた、万年筆をめぐる問題。被害者の万年筆が石川さんの自白によって初めて『石川の家から発見』とされた。有罪証拠とされた万年筆は被害者のものかどうか、争ってきた。3回による家宅捜索で見つかった万年筆、われわれはねつ造されたものだと立証してきた。第三次の再審請求では2013年に被害者が使っていたインク瓶、2016年に発見万筆で当時書かれた数字が証拠開示された。これらのインクの関連資料が検察庁にある。専門家に依頼して、開示されたインクの資料の蛍光エックス線の分析を行い、その結果被害者が事件当日の授業で書かれたペン習字の文字のインク瓶のインクからクロム元素が検出され、発見万筆で書かれたインクからはクロム元素が検出されなかった。その裏付けを発見万筆のインクが被害者が使っていたインクと元素が違う、異なるインクである。このことを科学的裏付けをもって、明らかにしてきた」。
 「検察官は長い月日をかけながら、その反論の中で、水で洗えば出ないこともありうると。われわれは科学的な根拠を示しているにもかからず、非科学な答弁をするという始末であった」。
 「弁護団は8月の第60回の三者協議で、弁護団で『数字』のインクと『ペン習字浄書』『被害者のインク瓶』のインクが同じかどうか、別の専門家による鑑定を実施することを申し入れた。裁判所は、資料が検察庁にすべてあるので、弁護側鑑定の実施に検察官の協力を要請した。このことが実施されれば、間違いなく、石川無実は万年筆・インク問題で証明されるわけだ。われわれは早期にこの実施を求める。裁判所の中で、鑑定を実施するということなので、このことによって明白な状況が生まれてくるだろう」。
 「他方で、再審法の問題が袴田さんを10年間も苦しめた。再審開始決定に対して、検察官の不服の申し出を禁止すること、証拠開示の保障を、再審法の改正を求める。331の自治体の決議と再審法改正を求める意見書が採択をされた」。
 「世論はいよいよ、狭山の勝利に向けて動きだしている。私たちは何としてでも袴田に続いて、次は狭山、石川勝利を勝ち取る」。
 次に参加した各政党の近藤昭一さん(立憲、衆議院議員)、福島みずほさん(社民党党首、参議院議員)、櫛渕万里さん(れいわ、衆議院議員)、大島九州男(くすお)さん(れいわ、参議院議員)が再審法の改正、死刑制度の廃止、差別禁止法の制定など連帯の発言をした。

何としても早期の決着を

 続いて再審請求人の石川一雄さんと早智子さんがアピールした。
 石川一雄さん。「今日は来るとき二回転んだ。それだけ足が弱っているわけだけれど、えん罪が晴れるまでは闘っていく。次の5・23は中央本部の集会はないと確信している。イワ(袴田巌)さんが無罪を勝ち取ったことは非常にうれしい。ねつ造ということを認めたことは何よりも勇気づけてくれた。私もイワちゃんの判決を聞き、涙を流した」。
 「皆さんのお力添えがなければ、狭山を動かすことはできない。今回も全国各地から、狭山を勝利するんだと自信を持って来てくれたことをありがたい限りであり、感謝の気持ちでいっぱいだ。石川一雄が何とか元気な間に、無罪を勝ち取るために、さらなるご支援ご指導をこの場を借りてお願いしておきます。何としてでも5・23までに決着をつけなくてはならない」。

寺尾判決をくつがえす時がきた

 早智子さんの訴え。「徳島から参加した方が徳島新聞に載っていることを持ってきてくれた。毎日新聞も埼玉新聞も、最近マスコミが大きく取り上げてくれている。10月30日、福岡の添田から現調に来てくれた。その人が『19歳の時に、始めて10・31の狭山集会に参加した。装甲車や機動隊がものものしい警備に不安がよぎった。あれから50年、私の闘いの中心は狭山で、集会参加は欠かしたことがない』と話された。東京の人の便りでは、50年前のあの悔しさがよみがえってくる。一雄さんの悔しさ、怒り、憤り、寺尾判決に一雄さんが『聞きたくない』と叫んだ声が、日比谷に集まった私たちの耳にも聞こえたように思えた。その寺尾判決をくつがえす、その時が来ていると思いますと書かれていた。……」。
 「未だに検察に証拠開示を求めている。検察の不正義に本当に激しい怒りを覚える。このような現実を多くの人に知ってもらいたい。石川はなかなか動かない狭山の闘いに、怒りや無念そういう思いを抱えながら、それでも、皆さんから毎日のように届くお手紙、ニュース、そういうもので各地での闘い、そして個人のがんばり、激励に接し、希望や展望を持って闘うことができている。崩れそうになる心を皆さんの闘いが支えて、闘っている」。
 「袴田さんの判決で検察と警察がグルになっている。そしてねつ造した。そのように裁判長が断定した。このことに、一雄は狭山もハードルを越したと目から光るものであった。中学生を殺害したとして、犯人にでっち上げられた前川さんの再審決定があり、検察が不服申し立て上訴を断念した。袴田さん、マスコミの大きな力、世論がバックにあったと思う。マスコミもえん罪やねつ造、再審法それに光を当てている」。
 「一雄はまもなく86歳になる。何としても生きている間に、再審開始、無罪判決を勝ち取りたい。ご支援をよろしくお願いしたい」。
 次に「絶対無罪を勝ち取ろう、必ず勝ち取ろう」という地域の皆さんが書いた檄布が石川さんに渡された。
 続いて、狭山事件再審弁護団の竹下政行事務局長が万年筆のインクの鑑定をめぐる問題を説明した。そして「福井の女子生徒の殺人事件で再審決定があり、無罪判決が出るだろう。また飯塚事件でも証拠の開示勧告が出た。再審裁判の流れが変わった」と話し、「狭山もこの流れに乗りきって、近く迎えるであろう重大な判断で、石川さんの再審開始決定、そして再審無罪につながることを勝ち取っていきたい」と話した。
 次に片山明幸さん(部落解放同盟中央本部副委員長)が基調提起を行った。
 「①今年から来春に向けて全国統一行動を継続する。②再審法改正を求める運動の強化。③万年筆のインク実験を実施することになった。決着に大きな期待をしたい。最後の決戦の時だ」と奮闘を促した。

再審開始の波がきている。次は狭山だ

 「袴田再審無罪に続け!次は狭山だ!」とえん罪事件で闘い、無罪を勝ち取った人たちが駆けつけた。
 最初に、袴田秀子さん(袴田巌さんの姉)が「やっと再審が開始し、無罪となった。これも皆様の応援があったからだ。ありがとうございました。一番最初に選挙権が40年ぶりに返ってきた。ちゃんと候補者の名前を書いたので尊い一票になった。死刑囚という肩書が取り外された。たいへんうれしく思っている。巌はまだ半信半疑でいるようだ。静岡県警の本部長が誤りに来た時も、本部長が前に立って最敬礼した。そうしたらすくっと立ち上がったので、こゃあ殴るのかと思った。殴りもしないで、敬意を表したような顔をしていた。私は巌だけが助かれば良いと思っていない。えん罪で苦しんでいる皆さんが悔しい思いをしている。そういう方たちの力になればといいと思っている。今度は石川さんの番だ。再審開始の波に乗っている。この機会を逃したらまたという機会はない。石川さんのご支援をよろしくお願いしたい」。
 この後、山崎俊樹さん(袴田巌さんを救援する清水・静岡市民の会)、菅谷利和さん(足利事件えん罪被害者)、青木惠子さん(東住吉事件えん罪被害者)、西山美香さん(湖東記念病院事件えん罪被害者)が連帯のアピールをした。この集会に青木さんと共に、今市事件で犯人とされた勝又さんの母親が無実を訴えた。栃木・今市事件とは、小学1年生の女児が行方不明となり、翌日、茨城県の山林で、遺体となって発見された。事件発生から約8年後の2014年、勝又拓哉さんが逮捕・起訴され一審で無期懲役、高裁でこの判決がいったん破棄されたが訴因変更を認めた上で、情況証拠によって犯行を認められるとして、あらためて無期懲役判決を出し、最高裁で確定した。本人はえん罪として闘っている。

えん罪被害者を繰り返す国を変えていく

 鎌田慧さん(狭山事件の再審を求める市民の会事務局長)がアピール。
 「思い出してほしいのは、石川さんは一審判決が死刑だった。高裁で無期懲役になった。日本の司法は無実の者を捕まえてきて、死刑の宣告をするということが何度も繰り返されてきている。袴田さんの無罪判決に検事総長は何の反省もしていない。無実の者を死刑判決にした。これは謝っても謝っても謝りきれない。人間を否定した、存在を否定したことだ。ねつ造がはっきりした場合はちゃんと謝る。どうしてこんなことをやったかと徹底的に反省しないと本当の解決にはならない。80年代に4人の死刑囚が続けて無罪になったことがあるが、何の反省もしていない」。
 「前近代的な警察をどのようにして変えていくのか。日本はこんなにえん罪事件をほったらかしにしていて、民主主義国家ではない。そういう世論がもっともっと高まらなくちゃいけない。無実の者を死刑にするような国家を変えていく」。
 「石川さんの元気なうちに無罪にしたい」。
 この後、集会アピールが読み上げられ、閉会のあいさつ、プラカードを掲げてのパフォーマンスの後、東京高裁の横をとおり、霞が関を一周するデモを行い、再審開始・石川無罪を訴えた。狭山闘争もいよいよ重大な局面に入っている。各地で奮闘しよう。    (M)
 

再審開始を強く求める石川一雄さんと早智子さん(11.1)

日比谷野音を埋めつくす大結集の市民集会(11.1)

次は石川さんと訴える袴田秀子さん

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