12.13リニア新幹線工事差止訴訟第16回口頭弁論

説明もなく信頼性に欠ける工事は容認できない

 【静岡】12月13日、リニア中央新幹線静岡工区の工事差し止めを求める第16回口頭弁論が静岡地裁で開かれた。
 公判前には毎回、静岡市の繁華街で街頭宣伝と署名活動が行われ、裁判開始前には地裁前の西門橋上でミニ集会を開催する。第16回公判は原告準備書面12の提出とその要旨について原告訴訟代理人である柳川侑馬弁護士が8項目にわたり陳述を行った。

諸問題・矛盾点に対して批判を行う

 陳述は⑴焼津や藤枝市などの下流域の住民の水使用に関する平穏生活権、南アルプスの自然を享受する権利、環境保護ボランティア活動に従事する権利を過去の古い裁判例に捉われることなく適切に判断されること。
 ⑵権利侵害の蓋然性について ①工事施工によって河川流量が減少すること②被告(JR)による湧水低減措置が奏功しないこと。
 ⑶立証責任について 十分なコアボーリングができていないことから工事の影響についての科学的知見が不明確であること。
 ⑵のように本件工事による深刻な損害が生じる蓋然性が高いこと。被告による資料の隠蔽や「全量戻し」の具体的計画が示されず説明にも応じないことから原告の負う立証責任を緩和することが妥当である。(※被告が資料を隠す、説明を求めても応じないなど原告が立証したくてもできないことを指す)
 ⑷水収支解析の問題点 ①被告の設定した年間降水量が実際とかけ離れている。(2倍以上の数値を提示)②透水係数も現実とかけ離れている(自身の計算結果が河川流量の実測値と整合するよう恣意的に数値を操作)
 ⑸トンネル湧水のポンプアップ
 ①ポンプアップに関する計画の問題性 被告も水収支解析の不確実性を自認しており、ポンプアップの計画に際し想定する数値の根拠が不明、ポンプの商品化の確認はポンプアップの具体的準備行為に当たらない。また、依然として補償を永久的に行うかどうか、ポンプアップの期間を明示しない。
 ②中流域の河川流量は維持されるとの主張 「全量戻しをしなくても大井川の中下流域の河川流量は維持される」といった理屈は水循環の観点からあり得ない。田代ダム案については総量500万トンの湧水が毎秒0・2t同じペースで流失することを前提にし、かつ渇水期を考慮しない、トンネル湧水量の想定も不確実性が高いこと、都合の悪いデータを除外したり、計測をしない日が1000日もあるデータを基に検証を行うなど全量戻しの方策の検討は極めて不十分。
 ③長野県側へ流失するトンネル湧水対策の不十分(デタラメ)。被告提出の準備書面乙2627号証では取り組み資料とされているが対策を講じるのかしないのかさえ不明。
 ⑹発生土の問題
 ①発生土の具体的対処法の不明瞭 ②既発生の発生土の問題点 長野県大鹿村でのヒ素検出、山梨県早川町の事案、被告によるモニタリングの不備 ③原告らの権利の侵害 被告が具体的な説明をしない状況下では原告らに対する重大な権利侵害が生じる蓋然性が高い。
 ⑺国交省有識者会議の問題点
 ①設置理由の問題点 委員からも本件工事の不確実性やリスクについて再三にわたる質問や意見表明がなされたことから被告による不確実性を前提とした説明を十分に行っていないことが明らか。  ②委員の選任及び座長の選出方法 委員の選出方法が恣意的であること(静岡県推薦候補の2名が不採用)、中立であることが求められる国交省が独断で座長を決定する選出方法の不透明。
 ③議論の不十分 静岡県作成の「引き続き対話を要する事項(地質構造・水資源専門部会)整理表」中30項目は議論が未了。
 ④有識者会議の非公開 報道関係者の傍聴や議事録の開示がされていても会議が公開されたわけではない。
 ⑤議事録作成、座長コメントについて 議事録、座長コメントは会議の内容を歪めるもので不適切。
 ⑥有識者会議における被告の不誠実対応 有識者会議においても資料の隠蔽、水収支解析の虚偽データの使用 ⑻結語 原告の主張に対し未だに説明がなされない。信頼性に欠ける本件工事には容認できない。
 この日の裁判は以上のような内容だった。公判後に進行協議が行われ今後の公判日程が決まった。(次回公判は3月14日(金)14:30から、以降は6/13、9/19、12/19、12/15(予備日)いずれも14:30~
 裁判の報告会が終了してから「訴訟の会」の第5回総会がもたれた。 議題は①役員の選任 ②衆参議長あてのリニアトンネル工事の中止を求める請願署名の提出を今春行うこと(いま一度、格段の署名集めを)③会計報告について 財政が逼迫していることから、会員のみなさんの会費の確実な納入とカンパが訴えられた。 (S)

人権・環境破壊のリニア中央新幹線はいらない(12.13)

週刊かけはし

購読料
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00860-4-156009  新時代社