ウクライナ決議対案 (3)

第4インターナショナル第18回世界大会

ヨーロッパの軍事化について

 「ヨーロッパ防衛」は、ウクライナ戦争のおかげで推進・正当化された古いEUプロジェクトである。それは、支配的な資源略奪主義論理でアフリカの資源を支配しようとする―とりわけ混乱の中でEUの「ハードパワー」を強化したいという願望を言い換えている―ものであるだけでなく、相関する力関係を考えると実現可能とは思えない世界的な帝国主義支配のプロジェクトにおいて、アメリカを補完する従属勢力としてのEUの役割を強化することを目指すものでもある。同時に、ヨーロッパの軍備増強は、アメリカの内部危機によってヨーロッパの指導者たちの間に生じた不安を反映した動きである。
 プーチン主義者の侵攻により、NATOはフィンランドとスウェーデンに拡大することが可能となり、ロシアとの新たな緊張が加わって、こうした国々の(冷戦中の重要な緊張を部分的に和らげた)長い中立の歴史に終止符が打たれた。これらすべては、スウェーデンがスカンジナビア諸国に亡命していた数人のクルド人活動家の本国送還を容易にすることに同意し、トルコのエルドアン政権がイラクとシリアのクルド人地域への全面侵攻(ちなみに、この戦争は西側マスメディアではまったく注目されていない)を開始している間、NATOがそれに見て見ぬふりをするという条件のもとでおこなわれなければならなかった。よく知られていることだが、NATOは、冷戦以来、今日もトルコにおける民主主義的価値観を擁護してきた。それは、EUが過去にサラザール支配下のポルトガルや軍事政権下のギリシャを受け入れたのと同時期のことだった。
 ロシアとの関係において、EUは長年にわたって外交をおこなっていない。EUは「人権政策」、つまり敵国に圧力をかけるために人権を選択的に政治利用する政策をとっている。EUはイメージ政策や文化戦争プロパガンダをおこなっている。ネオコンのアン・アップルバウム[アメリカのジャーナリスト・歴史家]から、ロシアのあらゆるものに対する文化的差別主義が主な功績であるウクライナの作家セルヒ・ジャダンやアンドレイ・クルコフ、嫌われ者でフランス軍のウクライナ派遣について自慢しているフランス大統領エマニュエル・マクロンに至るまで、文学賞や市民賞を授与するロシア嫌いの多さを見てみるとよい。EUはまた制裁政策もとっているが、現時点ではそれはEUに不利に働いている。そして最後に、軍事政策も有している。ブリュッセル世界[EU]にはこれらすべてがあるが、外交がないのだ。「戦場で状況が決まる」というEU外相のジョゼップ・ボレルの発言などは、純粋に軍事的な論理を示すものである。
 ヨーロッパの軍事化と、ヨーロッパおよびNATOのウクライナへの軍事介入の間には構造的つながりがある。一方では、[ヨーロッパ]大陸の軍事化は、軍事介入の必要性そのものと、紛争へのヨーロッパの関与の増大に関係している。他方では、ウクライナ戦争は、ヨーロッパの軍事化というさらに遠大な戦略的アジェンダを加速・再導入する口実を作り出し、それに対抗することが非常に困難な政治的環境を作り出している。したがって、ウクライナが[ヨーロッパ]大陸の軍事化の主な推進力であるときに、ウクライナへの増大する終わりなき軍事介入を支持する一方で、ヨーロッパの軍事化に公式に反対するのは矛盾している。

ウクライナ人民とロシア人民にとって破局的な戦争

 この戦争は、考えられるあらゆる観点から、つまり、死と破壊のレベル(死者は百万人近くと推定される)、大国の間に広がった軍国主義と反動のスパイラル、エネルギー転換と緊急の気候安定化対策に巨額の投資をしなければならない世界での膨大な資源の破壊などのゆえに悲惨なものだった・・・。端的に言えば、それがロシア・ウクライナ両国だけでなく、ヨーロッパと世界の他の国々でも、超ナショナリズムのスパイラルに典型的なファッショ化という力学を煽ったからである。現在の戦争を助長し、NATOの介入主義を支持することは、ウクライナでの死と破壊のスパイラルを増大させるだけの終わりのないエスカレーションにつながり、実際の結果の見通しはなく、状況が制御不能になり、紛争が第三国に広がるリスクがある。
 ウクライナの自決のための唯一の解決策は、敵対行為を終わらせ、ウクライナが中立に戻り、NATOへの加盟を放棄するための交渉である・・・。2022年3月から4月の交渉が妨害されなければ、ほぼ3年間にわたる戦争は避けられ、何十万人もの命が救われただろう・・・。そして、プーチンによる最初のキーウ攻撃が撃退された直後であれば、ウクライナの交渉上の立場ははるかに有利になっていただろう。いまやNATOでさえ、[オランダの]ルッテ首相[NATO事務総長]の口を通して、ロシアに対する代理戦争でウクライナ人を砲弾の餌食として使うことだけを目的として何年も戦争を助長してきたのだが、交渉のテーブルでのみ戦争を終わらせることができると認識しているので、ウクライナにとってはるかに不利になる交渉を目にすることになるだろう。また、兆候が示され始めているように、NATOの支援はもはや必要ないと軍事組織が結論づけた場合、NATOがウクライナに内緒で交渉する可能性も否定できない。歴史上、こうした前例は数多くあり、そのことは戦争が始まった当初から完全に予測可能だった。
 ゼレンスキー政権が施行した戒厳令は、政党を非合法化し、活動家を迫害し、国民に超自由主義的なショック療法を課してきたが、これによりゼレンスキーは選挙をおこなわずに政権を延長することも可能となった。彼の運命は西側諸国の支援にかかっており、ウクライナ人民の大多数が戦争継続に賛成しているかどうかはもはや明らかではない。2024年6月にウクライナのメディアZNが実施した世論調査によれば、国民の44%が即時和平交渉を支持しているとのことである。
 中東情勢を考えると、そして、ゼレンスキーが、ウクライナは「独自の顔を持つ大イスラエル」になることを目指しており、「安全保障」が大きな資産(実際、ウクライナ軍は1990年代以降、アフガニスタンやイラクを含むワシントンの軍事冒険のほとんどすべてに参加している)であり、戦後ウクライナの中心テーマとなると発言しているのを考えると、無実の人々の苦しみを利用して、帝国主義の利益に完全に従属する憲兵国家の創設が正当化されることであるのを想起することは重要である。「ホロコースト産業」がシオニズムの犯罪的利益に役立ったのと同じように、キーウ政権がウクライナ人民の現在の苦しみを利用して東ヨーロッパに新しいイスラエルを創設することを正当化し、ロシアとの敵対関係を大きな経済的・政治的・軍事的資産にすることはあり得ないことではない。イスラエル国家の建国もまた、当初は進歩的な意見の大きな部分を混乱させ、ユダヤ人虐殺に対するヨーロッパの良心の呵責を洗い流すことに役立ち、「この地域で唯一の民主主義」や「野蛮に対する文明」という言説を煽ることを許容した・・・。その結果がどうなったかは80年後の今日、よく知られている。

革命的マルクス主義者の任務


 ウクライナ戦争は、すでにEU・アメリカ・ロシアに存在していた一連の反動的な傾向全体、つまり、軍国主義の台頭、NATOの拡大、軍事予算の増加、軍事産業の再編を活性化させてきた。それは、環境保護の課題を埋没させるのを助けた。それは、「民主的」防衛主義、エスノナショナリズムを中心とした国民的団結を促進し、すべての国における権威主義的転換を加速させた。
 この意味で、国際組織である第四インターナショナルは、こうした傾向に反対する組織化と闘争のプロセスを促進し、戦争と軍国主義化に反対し、非核化を求める運動を大きくし、参加することにとりくんでいる。新たな国際主義は、各国ブルジョアジーの利益と政策に反対する組織化を開始しなければならない。労働者階級が、現在の帝国主義間のダイナミクスがわれわれを導いている危険を認識し、戦争挑発と軍国主義に反対する労働者運動の最良の伝統を引き継ぐためには、「戦争に反対する戦争」「敵は国内にいる」というスローガンを掲げることが不可欠である。この意味で、第四インターナショナルは、以下の要求を広める。
•併合なしの即時和平と、ロシア軍の撤退。
•国境の非軍事化と非核化。帝国主義諸国による武器輸送の停止。
•両国の不服従者・脱走兵を含むすべての戦争難民が帰還する権利。
•政治犯の即時恩赦、デモ・集会・組織化の権利の回復、ロシアとウクライナ両国における非常事態法の廃止。
•必要であれば、両国の兵役拒否者・脱走兵・難民の、官僚的・法的妨害なしに、定住を決めた国での受け入れ。
•権力を維持し、両国のプロレタリアを虐殺に送り込むためにエスノナショナリズムを利用してきたロシアとウクライナのオリガルヒからの財産没収。
•ウクライナの対外債務の帳消し。国際資本によるウクライナの経済的および金融的植民地化の終結、およびゼレンスキー政権の新自由主義的かつ反労働者階級的措置の廃止。
•すべての軍事ブロック(NATO、CSTO、AUKUSなど)の解体。
•ドンバスとクリミアの自決権。
 第四インターナショナルはまた、
―両国で戦争の影響で迫害され、直接打撃を受けた反体制派の社会組織・労働組合組織・政治組織、とりわけロシア社会主義運動およびウクライナの社会運動の同志たち
―ウクライナとロシアにおける自国ブルジョワジーに対する闘い。ウクライナにおける帝国主義との協定やロシアにおける軍国主義化プロジェクトに反対し、国際的な親交および報復や略奪のない紛争の終結を求める闘い
と連帯する。
 ウクライナとロシアの労働者階級と連帯し、戦争と自滅的な軍国主義のスパイラルを止めよう!     (完)