第四インターナショナル世界大会に参加して(その2)

第18回世界大会で何が議論され、確認されたのか?

大会討論は「エコ社会主義宣言」から開始

 大会討論の最初のテーマは「エコ社会主義宣言」だった。昨年2月の国際委員会で「エコ社会主義宣言」の第一次素案が採択されて以降、世界各国の支部やシンパ組織、あるいは個々のメンバーからさまざまな修正案や意見書が提出されてきた。これらは国際討論ブレチンに掲載され、世界的な討論に付されてきた。
 「宣言」の提案報告では、「社会主義か、バーバリズムか」という、かつてローザ・ルクセンブルグが提起した問題がエコロジー危機の中で、さらに深刻かつ現実的な問題として浮上していることをふまえ、「エコ社会主義的・過渡的綱領の必要性」が述べられた。過渡的綱領は、トロツキーが第二次世界大戦を目前にした1938年に提起したものだが、「エコ社会主義宣言」はその過渡的綱領を現在的に発展させるという挑戦であるという位置付けである。
 「エコ社会主義宣言」の大きな柱は「世界的な脱成長が必要」という観点である。ただし、その一方で、グローバルサウスではエネルギー消費や生産の増加、および「北」による収奪の規制、エコロジー負債の返済、不当債務の帳消しが必要であること、グローバルサウスにおける脱成長は人民の生活を改善し、基本的ニーズへのアクセスを可能にするものでなければならないことも強調されていた。つまり、「エコ社会主義的脱成長は、各国・各地域において、さまざまな形が考えられ、それを民主的に決定することが重要」なのである。実現されるべきエコ社会主義社会では、人々の生活・文化・個人の発展が保障され、民主的な計画作成の中で新たな文化が創造されることになる。
 報告では、「エコ社会主義宣言の作成にあたっては、ワーキング・グループによる共同作業がおこなわれた。さらに、さまざまな修正案や(日本支部からのものも含めた)意見書が提出されている。宣言の改訂作業は大会中でもすすめられていく」として、宣言を共同で作り上げることの重要性が指摘された。

国際少数派による対案

 大会には、あらかじめ国際少数派(「革命的インターナショナル潮流(TIR)」、フランス支部の一部やギリシャ支部など)による対案が出されており、フランス支部でNPA―R(反資本主義新党・革命派)(注1)に所属する同志から提案と趣旨説明がおこなわれた。
 対案はやや単純化して言えば、「環境危機は資本主義打倒によって突破できるもので、その闘争は労働者階級によって主導されなければならない。労働者階級の闘争は継続している。労働組合活動家が闘うのは、自らの生活をかけてであって、脱成長のためではない」(総括討論での主張)という内容だった。私の受けた印象や採決の際の投票行動から判断すると、国際少数派の同志も「エコ社会主義宣言」の内容そのものを全面的に否定しているわけではなく、エコ社会主義に向けた闘争の主要な担い手は誰なのか、という点で多数派とは異なっているのだと思われる。この労働者階級至上主義とも言える立場は、他の決議案における対案の中でも一貫していた。
 これに対して、「エコ社会主義宣言」は、現に闘われている先住民族、女性、青年、農民などのエコ社会主義的要素を持つ闘争を重視し、それらと労働組合運動との両方向的な関係の構築を目指している。
(注1)フランスNPAは2022年に分裂し、現在はNPA―A(反資本主義新党・反資本主義)とNPA―Rの2つの組織になっている。

「宣言」をめぐる討論と加筆修正

 「エコ社会主義宣言」をめぐる討論では、肯定的に評価する発言がほとんどだったが、「宣言」自体が相当の長文であるため、宣伝用の短縮版を望む意見も複数出された。また、各国のエコ社会主義を目指すような運動や闘争が紹介され、各地域・国での宣言の具体化の必要性を強調する発言も目立った。たとえば、「資本によるアマゾン破壊に対して、先住民や伝統的コミュニティによる生き残りのための闘いは、エコ社会主義的未来をかけたもので、革命にとって不可欠の基本的構成要素となっている。こうした闘いとの共同が必要だ」(ブラジル)といった発言がそれである。
 「宣言」の柱である「脱成長」について、その内容には異論はないが、「脱成長」という表現をする必要があるのか、そう表現することで運動の妨げになる場合も考えられるという疑問点も出された。これに対して、「宣言」作成者からは「脱成長」は要求ではなく、宣言の基礎を形成するもので、他の言葉に置き換えることはできないと説明が加えられた。
 また、AI(人工知能)について、「AIによる宣伝が氾濫し、SNS巨大企業がアルゴリズムによって人民を支配しようとして、そのためにAIデータセンターを建設しているが、それは莫大なエネルギーを消費している」として、AIのもたらす影響、AIデータセンターのエネルギー浪費、巨大SNS企業の社会化などについて「宣言」に加筆するように求める意見と修正案が出された。その結果、大会中の改訂作業の中で、「(AIは)何千万もの仕事を脅かし、芸術的・文化的創造を劣化・損傷させ、制度的なレイシズムを強化し、極右による嘘の拡散を加速させる」「AIとデータセンターは、勝手気ままな資本主義の愚行を加速させ、人々の関心を独占し、我々の自由時間と社会的絆を蝕む」「データセンターの活動・・・は、監視資本主義を可能とし、ターゲット広告のためのアルゴリズムを生み出し、新たな人工的ニーズを人工的に作り出」すため、巨大IT企業や巨大ソーシャルメディアの社会化・民主的管理を要求することが「宣言」に加筆された。
 同じく討論の中で指摘され、修正案も出された「消費削減・再利用・リサイクル」についても、「消費を劇的に減らすとともに、堆肥化のような有機ごみを処理する適切な手段を導入することや、科学やごみ収集・リサイクルに従事する集団的に組織された労働者が蓄積してきた知識に基礎を置いて、固形ごみをリサイクル・再利用する技術を発展させることが必要」と項目を設けて加筆修正された。

日本支部からの意見書と討論への参加

 日本支部は、数ヶ月に及ぶ事前討論を経て、「エコ社会主義宣言」に関して「福島第一原発事故はまだ終わっていない! エコ社会主義社会を実現するためには、すべての原子力発電所を閉鎖・廃止し、新規建設を中止しなければならない」と題する意見書を提出した。この意見書は、福島で活動し、世界大会直前に亡くなった斎藤同志が起草したもので、「(宣言草案では)「脱原発・脱化石燃料」という形で原子力発電について触れているが、原子力発電そのものの危険性や、それにともなう使用済み核燃料・核廃棄物の長期処分による環境への負荷についてはほとんど触れられていない。これが宣言の大きな弱点である。たとえエコ社会主義社会が実現したとしても、使用済み核燃料・核廃棄物の処分問題は資本主義社会の負の遺産として残ることになる」と指摘している。
 そのうち「すべての原子力発電所の閉鎖・廃止、新規建設の中止」については大会前に「宣言」に盛り込まれた。しかし、使用済み核燃料・核廃棄物問題については触れられなかったため、討論の中でその点に改めて言及した。

 「宣言」は「エコ社会主義革命宣言 資本主義的成長と決別を」とタイトルが変更された上で、大会最終日に最終改訂版が改めて示され、それが賛成124、反対1、保留3、棄権4で採択された。(続く)

 なお、この「宣言」をはじめとする世界大会決議は、『週刊かけはし』サイトの「第四インターナショナル第18回世界大会」に順次アップしている。また、第四インターナショナル第18回世界大会決定報告集」の発行も予定されている。   (大森)