第4インターナショナル第18回世界大会 パレスチナ決議
中東全体に対する帝国主義の攻撃
以下は第四インターナショナル第18回世界大会で採択されたパレスチナに関する決議である。この討論には、レバノンの革命的共産主義者グループから「歴史的にパレスチナである地に、世俗的・民主的・革命的国家を」という意見書が提出され、同グループの同志が討論に参加した。この決議は、賛成116、反対3、棄権4の圧倒的多数で採択された。
パレスチナに対する戦争は歴史の新たな章を開きつつある。これは、アメリカの積極的な支援と、他の多くの国の積極的な支援や共謀のもとで、イスラエルが実行した大量虐殺である。
ガザ地区のパレスチナ人240万人のうち、190万人、つまり人口の86%がガザ地区内で避難民となっている。確認されている4万7千人以上の死者の40%は女性と子どもであり、実際に虐殺された人々は、20万人から30万人、つまりガザ地区の人口の約15%となっている。イスラエルは、食糧や支援なしでこの地域の住民を包囲し、それ以外にも多くの国際法違反を犯し、何百人ものジャーナリストや医師を殺害し、人道支援を阻止することで、ガザ地区の完全支配を取り戻すことが目的であることを示している。さらに、16カ所のパレスチナ人コミュニティがヨルダン川西岸から強制的に避難させられ、2024年7月までに1285人のパレスチナ人が移住させられた。
これはすべてのパレスチナ人と中東の大多数の人々に対する攻撃であり脅威であり、地域全体と世界の地政学的関係の両方に大きな影響を及ぼしている。
長期にわたる大量虐殺戦争
2024年9月以来のイスラエルによるレバノンへの攻撃は戦争の新たな段階を表現するものである。無差別攻撃と大規模な爆撃により数千人が死亡し、数万人がレバノン南部から避難している。9月27日、ヒズボラのハッサン・ナスララ書記長と数人の指導者が暗殺されたことは、通信ネットワークを妨害した後にヒズボラの組織的解体であると判明したことを完成させるものだった。
その後、イスラエルの軍事的・政治的攻撃の焦点は、ガザからレバノン南部、つまりヒズボラの後方基地がある地域へと拡大し、それとともに、イランをいわゆる文明世界にとっての主要な脅威として描き出すようなプロパガンダの方向転換が試みられた。実際に、ネタニヤフは2023年11月以降、この地域で「限定的な軍事侵攻」をおこなってきた。
バイデンの行動は彼の偽善の深さを明らかにした。9月26日にアメリカや他の国々がシオニスト国家とヒズボラとの3週間の停戦を求めたが、すぐにバイデンがナスララの殺害を称賛する声明を発表し、同政権がガザだけでなくレバノン南部でのイスラエルの攻勢を支持していることを明確に示した。「ジェノサイド・ジョー」[バイデンの大量虐殺を容認する姿勢に対して、イスラエルに対する抗議行動にとりくむ学生たちがつけたあだな]の姿勢は、大統領選挙におけるハリスの敗北の原因のひとつとなった。というのは、民主党が人種差別を受けた人々のかなりの部分の支持を失ったからである。トランプ大統領の登場は、イスラエル軍とネタニヤフの権力が消耗していたのと同時に起こったため、ネタニヤフは2025年1月15日の停戦の一部として、イスラエル人人質1人の解放と引き換えにパレスチナ人30人を釈放するという交換に応じざるをえなかった。
しかし、停戦は恐怖が一時停止されることを意味する一方で、アメリカとイスラエルの大量虐殺の意図を抑制するものではなかった。すなわち、トランプは、ガザを所有して、住民をエジプトやヨルダンに追放してガザを空っぽにしたいという意向を示してきたし、その一方でイスラエルはヨルダン川西岸地区への攻撃をエスカレートさせた。イスラエル国防相のイスラエル・カッツは次のように宣言した。
「われわれはヨルダン川西岸地区におけるパレスチナ人のテロリズムに宣戦布告した」。「作戦が一旦終わった後も、IDF(イスラエル軍)部隊は、テロが再発しないようにするためにジェニン難民キャンプに駐留し続ける」。
全面戦争
このようにして、イスラエルは非対称戦争において大量テロを遂行しているのであり、すべての政治的・戦闘的・軍事的反対派を沈黙させることを狙っているのだ。この戦争は、イスラエルを無理やり建国する以前からパレスチナに住んでいた人々に対する75年間におよぶアパルトヘイト・植民地化・民族浄化の戦争の単なる継続ではない。パレスチナ人を根絶したいという意志には質的な飛躍がある。それは、パレスチナ人の人間性を抹殺することを通じて、[ユダヤ人]至上主義論理によって、ホロコーストの記憶を完全に裏切ることを通じておこなわれているからである。
現在の大虐殺は、ネタニヤフ政権のネオファシスト的性格とも関連している。ネタニヤフは、司法に対する傲慢さや腐敗を示す明らかな証拠に対して、民衆が何カ月にもわたって抗議行動を展開したことできわめて弱体化していたが、反シオニスト左派が極めて弱体であることを利用して、2023年10月7日の血なまぐさい攻撃の機会をとらえて、国内情勢の主導権とコントロールを取り戻そうとしてきたのである。ネタニヤフ政権はナクバ[イスラエル建国時に先住民のパレスチナ人民が被った災厄のこと]を継続しているのであり、昨日はガザで虐殺や追放をおこない、今日にはヨルダン川西岸で攻撃をおこなっているのだ。大イスラエル(リタニ川までの南レバノンを含む可能性がある)樹立という目標やイスラエルの政策の国内的目標、そして戦争への突進はすべて、西側諸大国が提唱する「文明の衝突」というレトリックの一部である。それは、帝国主義支配体制の世界的な危機という状況での西側諸大国のニーズに完全に適合する言説なのである。
ネタニヤフは現在、世界的な極右の前衛となっている。極右は自らの伝統的な反ユダヤ主義を後景に退けて、世界的な人種差別とイスラム嫌悪の攻撃を展開している。われわれは、大帝国主義勢力の世界支配の利益のために大量虐殺を許すことを歴史的使命とする新しい世界秩序の出現を目撃している。トランプが権力を握ったことで、こうした方向性を極端に加速させることが可能となっている。
パレスチナ人への抑圧は、一人の人間の気まぐれによるものではなく、パレスチナ人民を犠牲にするというイスラエル支配階級の論理によるものである。
帝国主義者の利益とアラブ諸国政府
しかし、イスラエルは単独で行動しているわけではない。アメリカがこれほど直接介入したのは、2003年のイラク攻撃以来初めてである。イスラエルに対する数百万ドルの資金・武器支援は、民間人に対する歴史的虐殺に決定的な影響を与えている。これは、主要な西側諸国が共謀して沈黙を守ったり偽善的に抗議したりすることや、中国の抗議が遅れたこと、プーチンのロシアが危ない橋を渡っていることと並んで実行されているのである。帝国主義諸国は、国連や国際刑事裁判所のさまざまな決議を無視しているが、そうしたものは事態に何の影響も及ぼしていない。
アラブ世界のほとんどの政府に関して言えば、イスラエルとの関係を「正常化」し、パレスチナ大義を見えなくするという彼らの論理―10月7日以前には支配的だった―によって、彼らが民衆の圧力のもとで出さざるを得なかったガザ爆撃に関しての批判的発言は哀れで悲劇的なものとなってしまっている。この地域のアラブ語圏およびイスラム教諸国の何百万人もの人々にとって、アラブ政権は明らかにイスラエルおよび帝国主義者と協力していると認識されている。この政策は、アルジェリア、モロッコ、エジプト、ヨルダンの場合と同様に、パレスチナとの連帯を示すいかなる動員も必然的に彼らの政府に対する抗議に変わることを知っているため、自国住民に対する弾圧を強めることにつながっている。ガザを 「中東のリビエラ 」にしようというトランプの計画を非難したのは、パレスチナ人への支援ではなく、自国の利益を守りたいからなのである。
イスラエル国家とパレスチナ自治政府の共犯関係は、パレスチナ人の大部分にとってますます明白になっている。
シリアのアサド支持派部隊、レバノンのヒズボラ、そしてサウジアラビア支配の政府に反抗するイエメンのフーシ派は、いずれもイランの神政主義的かつ極めて抑圧的な政権とつながりを持つ勢力であり、パレスチナ人の利益のために行動していると主張しているが、実際には自らの利益を推進しようとしている。シリアにおける憎むべきバッシャール・アル=アサド政権の崩壊は、何百万人ものシリア人にとって救いであるが、進歩的勢力、特にクルド人、とりわけロジャヴァ[北部および東部シリア自治行政区]はいま、エルドアンのトルコ帝国主義とイスラエルとの間で窮地に陥っている。
これは複数の標的を狙った植民地主義的かつ帝国主義的な攻勢であり、暴力的な弾圧とヨルダン川西岸への新入植地建設の奨励、パレスチナ人の消滅や大量追放、シリア南西部への軍事侵攻、紅海入り口で米海軍と商船の行動を阻止しようとしているイエメンのフーシ派への爆撃などがある。
イスラエルがおこなっていることは自衛などではなく、近年で最も恥ずべき虐殺の一つであり、南アフリカはハーグ国際法廷でこれを正当にも大量虐殺として非難した。進行中の悲劇は、世界中で政治的・思想的な混乱を引き起こしている。同盟国にとって、アメリカとイスラエルの両方を守ることはますます困難になっている。
過去数十年間で見られなかった[パレスチナ]連帯運動
ガザでの大虐殺は、とりわけ世界中で周辺の若者に影響を与えている。連帯運動は広範囲にわたる弾圧に直面している。デモは禁止され、参加者は弾圧され、投獄された。何十万人もの人々がデモをおこない、武器工場を封鎖し、自国とイスラエルの間の協定を破棄するよう迫った。この運動は芸術界に影響を与え、ボイコット運動は広がった。2度にわたるインティファーダを経験していなかった何百万人もの若者がこの闘争を再発見し、自分たちのものにした。労働者階級居住地域に住む人種差別を受けている若者たちは、高まるイスラム嫌悪の犠牲者であり、パレスチナの大義に共感している。
この大義を支持する行動は、イスラエルの行動を擁護する人々からすぐに反ユダヤ主義だと非難されるが、欧米の若いユダヤ人人道主義者たちは、10月7日に対して親イスラエル的反応を示す潮流に逆らって、非シオニストないしは反シオニストの方向性を発展させることで意識の進化を示し、アメリカにおいて現にある権力に挑戦する歴史的な動員を組織している。この運動は、「ジェノサイド・ジョー」バイデンをカマラ・ハリスに交代させるのに大きな役割を果たした。
動員はいくつかの段階を経た。まず、10月7日以降の数カ月間は、イスラエルの偽りの「自衛権」を支持する政治的圧力に対処するのは非常に困難だった。その後、大規模な動員がおこなわれ、大学が動員されたときに見事な反動があった。今日、われわれは、戦争がレバノンに拡大するという新たな状況に直面している。それはイランにおける標的を定めた攻撃に続いてのことだった。地域戦争の脅威はかつてないほど存在し、われわれが恐れ、明らかにしていた戦争に向かう動きが急進行しているように思われる。
対イスラエル制裁を求める3600人の著名人が署名したアピール、兵役を拒否する兵士、ガザでの大量虐殺に反対する南アフリカのアピールを支持したことで議会から権利停止処分を受けたイスラエル共産党の(ユダヤ系およびアラブ系の)議員、ガザでのイスラエルの犯罪やヨルダン川西岸での植民地化を糾弾する日刊紙『Haaretz』のジャーナリスト、パレスチナの政治犯を擁護するB' TselemのようなNGOなど、イスラエルにも大量虐殺や植民地化に反対する人たちがいる。確かに彼らは弱体な少数派ではあるが、われわれには彼らの闘いを明らかにする必要がある。それは多くのプロパガンダによって封じこめられてきたからである。
パレスチナを支持するわれわれの行動
パレスチナとの連帯を示す世界的な運動を構築することは、これまで以上にわれわれの責任である。この運動は、広範な基礎の上に団結して、次のことを要求しなければならない。
◦虐殺の停止および軍隊の撤退
◦帝国主義諸大国(直接の関係者も共犯者も)の犠牲の上での、ガザ人による、ガザ人のためのガザ再建
◦住民のための人道支援へのアクセス
◦収監者の釈放
◦追放の全目的の停止およびすべてのパレスチナ人が帰還する権利の保証
◦BDS(ボイコット・投資引き上げ・制裁)
これらの人道的要求はすべて基本的なものである。これを達成するには、デモ、占拠、ボイコットを強化し、大量虐殺に協力している企業の徴用を要求し、武器販売を阻止し、政府にすべてのつながり、とりわけ貿易関係や大量虐殺国家へのすべての支援を終わらせるよう要求する必要がある。労働組合による支援と街頭での支援が必要である。われわれは、パレスチナと連帯する可視化されたユダヤ人ブロックの形成を支持する。われわれは、運動内に民主的な討論のための最大限の空間を作り出すことを目指す。
しかし、われわれは心の底から、この運動が反帝国主義的で、脱植民地主義であり、戦争に反対するものでもあることを、そして大国間の関係が武器によって解決される混沌とした世界の脅威に反応したものであることことを知っている。われわれは、この運動の一部として、世界の人民、労働者階級と人種差別を受けている人びとが立ち上がり、犯罪者から権力を奪い取る必要性を確認したい。われわれは、武装・非武装を問わず、人民の抵抗を支持する。中東における大規模な動員だけが、現在のまったく不均衡なパワーバランスを変え、国家や組織にこの大量虐殺に反対する動員を強いることができる。
われわれは、ハマスやヒズボラの政治的プロジェクトにも、彼らの反動的な社会観にも同意しない。しかし、この地域の左派の後退と植民地主義に対する他の抵抗勢力の不在を考えると、これらの組織は事実上、この地域でも連帯運動の一部でも抵抗の手段として認められている。したがって、われわれはパレスチナ人民や彼らの組織を「テロリスト」と呼ぶ西側支配階級のレトリックを非難する。イスラエルとその同盟国にとっては、抵抗する行為そのものがテロ行為なのだ。われわれにとっては、犠牲者の暴力は抑圧者の暴力から生じているものである。われわれは、ハマスを政治的に支持することはしないが、その民主的生存権は支持し、PFLP、ハマス、ヒズボラをアメリカやヨーロッパ連合などが作成したテロ組織リストから削除することを要求する。
他のどこよりもパレスチナにおいて、被搾取・被抑圧人民の勝利的な闘いは、より公正な世界への道となりうる。われわれは、「ユダヤ人のための国家」としてのシオニスト国家を解体する必要性、および分散しているパレスチナ人すべてが戻ることができ、この脱植民地的枠組みを受け入れる限り、宗教が何であれ、誰もが住むことができる自由で民主的、世俗的で平等主義的なパレスチナだけが、この地域の人民に公正で平和的な解決をもたらしうることを再確認する。このような解決策をもたらすために必要な力の均衡とは、「バントゥスタン」[かつて南アフリカに存在した「独立国」で、アパルトヘイト政策のもとで黒人居住区を分離させるために作られた]という位置に限定された「パレスチナ国家」という幻想とは違って、帝国主義者、とりわけアメリカを阻止するための世界的な動員、とりわけ地域的な動員を意味している。
イスラエルとアメリカは国際舞台では孤立している。
パレスチナは労働者階級の大多数から支持を得ている。この支持を大衆行動に変えるのはわれわれの責任なのである!