第四インターナショナル世界大会に参加して(その3)
第18回世界大会で何が議論され、確認されたのか?
世界大会点描
世界大会の期間中、宿舎兼会場となった施設では、ブックコーナーが開設され、各国支部の出版物や機関誌・紙などが販売されていた。また、トロツキーやエルネスト・マンデルをはじめとした第四インターナショナル指導者の著作も並んでいた。英語以外の言語(フランス語やスペイン語、ポルトガル語など)で書かれた機関紙は、意味はわからないものの、写真やイラストを見ているだけで、その国での活動や運動の様子を垣間見ることができ、興味が尽きなかった。
また、夕食が終わった後は、施設の一室で「バー」が開店し、ビールやワインが提供されていた。地元の同志が販売役を務め、おそらくは安い価格で販売されていたのだと思う。最もポピュラーなブランドだと思われる「ジュピラー」が3ユーロを切る値段で提供されていた。ベルギーは本当に多くの種類のビールがさまざまなブランドで生産・販売されている。そして、何より嬉しいのは、ブランドごとに独自のグラスにビールが注がれることだ。グラスの形状もさまざまで、それぞれの生産者が最も自分たちのビールが美味しく飲めるようなグラスを別注しているのだと言う。この即席「バー」でも、5、6種類のビールを楽しむことができた。そして、ビールやワインを飲みながら、いろんな国や地域の活動家と交流できるのも「バー」を開設した狙いなのだろうが、私自身、何人ものメンバーから声をかけられ、会話を交わすことができた。
食事はいたってシンプルなものだったが、昼食や夕食のときには、食堂でもワインのボトルが販売されていて、テーブルで相席になった中で誰かがワインを購入してみんなでシェアする場面が多く見られた。食事も交流や意見交換できる貴重な場で、ここでも多くの同志と話をすることができた。また、会議の休憩中には、「バー」と同じ部屋でコーヒーが提供され、会議で疲れた頭と体を癒してくれた。
国際情勢決議案のアップデートと日本支部意見書
世界大会の2番目の議題は国際情勢に関するものだった。国際情勢決議案は、「危機が一つに収斂される中で、被搾取・被抑圧人民をいかに前進させるかという課題」というタイトルで、昨年2月の国際委員会で第1次素案が採択された。その後、昨年10月のビューロー会議で決議の更新について議論され、改訂版が決定された。国際少数派であるTIR=「革命的インターナショナル潮流」はこの改訂版に対して対案を提起した。各国支部やメンバーからも修正案や意見書が数多く提出され、それらも国際活動ブレチンに掲載されて、国際的な討論に付された。日本支部も「東アジア情勢と日本政治情勢および民衆的連帯の構築に向けて」という意見書を提出していた。
大会当日に提案された国際情勢決議案は、トランプの再登場にともなって再度アップデートされたものだった。加えて各国支部の修正案や意見書が決議案の中に統合され、東アジア情勢については、日本支部意見書が全面的に取り入れられていた。
日本支部意見書で決議案に統合されたのは、東アジア情勢の基本的性格に関するもので、その内容は以下の通りである。
*朝鮮半島、台湾海峡、南シナ海における軍事的緊張関係は継続し、むしろ悪化している。中国はこの3つの地域での戦争勃発を望んでいないように思えるが、(中国国内情勢の激変を含めた)偶発的な要因も含めて、実際に軍事的緊張が極度に高まり、戦闘行動にまで至る可能性は排除できない。中国は、アメリカ・日本に対抗して、海軍の増強、宇宙空間への進出など、軍備増強のペースを早めている。
*日本はアメリカがこれ以上東アジア地域で軍事的なプレゼンスを強化することができない中で、アメリカの果たしてきた軍事的役割の一部を肩代わりして、急速に軍事費を増やし、軍備強化、南西諸島の軍事要塞化、日米両軍の一体化をすすめている。これは、アメリカ帝国主義による圧力だけでなく、日本帝国主義が自らの東アジア・東南アジアでの権益を守るために、より強力な軍隊の保有という欲求の反映でもある。
*アメリカは中国とのデカップリングを進めてきたが、先端技術部門は別にしても、中国を主要な担い手とするグローバルなサプライチェーンの切断は不可能であり、したがって、経済的には相互依存しながら、ハイテク分野での競争(や制裁)と軍事的な対抗関係を継続する以外に選択肢はない。
*北朝鮮はロシアへの軍事的・政治的・経済的依存を強めている。ウクライナ侵攻中のロシア軍への武器・弾薬の供給、さらには北朝鮮軍の派兵と戦闘行動への参加と引き換えに、核兵器開発へのロシアの協力・技術供与を取り付けたとの報道がある。
国際情勢報告で強調された点
討論の冒頭での報告では以下の点が強調された。
*もっとも基本的なポイントは危機が一つに収斂されていること。
*トランプ政権の政策のファシスト的性格。トランプ政権がアメリカ体制の民主主義的性格、労働者の権利、気候危機、パレスチナ人民、人間の生存などに対する脅威となっている。
*アメリカは古いタイプの帝国主義ではなく、新たなタイプの帝国主義として、中国・ロシアと対抗し、国際秩序を再構築しようとしている。中東では、ガザに対する対応など、パレスチナを消滅させようとしている。トランプとマスクが、「グリーン資本主義」を拒否しているのは、中国がグリーンエネルギーの分野で優位に立っているからである。
*アメリカ国内では、既存の政治システムの大胆な再構築を目指している。トランプのプロジェクトは、一種のクーデターとして、移民、社会政策、女性、LGBTなど、これまでの政策を根本的に転換させようとして、非白人・女性・移民・先住民に対する攻撃を強めている。
*極右との闘争の重要性。ドイツ総選挙で、マスクが支持したAfDが20%を獲得。トランプは極右の台頭を促している。極右との戦い、新ファシズムとの戦いは、選挙はもちろんだが、大衆行動が重要なことは韓国の経験が示している。われわれの任務は、緊急事態に直面して、広範な戦線を構築することである。
討論では極右との闘いが大きな焦点に
討論での発言の多くは、極右の台頭、ファシズムの危険に対する統一した反撃の必要性を強調するものだった。とりわけ、トランプ政権の登場による情勢の激変、その政策による一つ一つの影響にどう対応したらいいか、を模索する発言も目立った。たとえば、「世界的な反動の攻撃の前に、労働者階級が敗北しているという現実の中でファシスト的政権が登場してきている。ブルジョア民主主義さえもが攻撃されている。集団的反撃が必要だ」(ブラジル・レジステンシア)、「トランプ当選によって情勢が大きく変化した。メキシコ国境の警備が強化された、他国への制裁措置など、情勢変化に対応したラテンアメリカにおける広範な反ファシスト闘争が重要である」(メキシコ)など。
統一戦線のあり方をめぐっては、「右翼が急進化している。極右に対する統一戦線の中で、改良主義者をブルジョアの側に行かせないために。統一戦線についてのフランスやブラジルでの経験は重要」「フランスでは、若い世代は極右が政権につくことを防ごうとして人民戦線に投票した。しかし、人民戦線内部における社会自由主義との分岐の問題が生まれている」などの発言があった。ブラジルで開催が予定されている「反ファシスト会議」の成功をかちとるために第四インターも全力をあげようとの呼びかけや「新しいファシズムとは何か」を議論して定義すべきという発言もあった。
もう一つの討論の焦点は、統一戦線のあり方、進歩主義政府とのスタンスの取り方についてだった。とりわけブラジルのルラ政権に対するスタンスの取り方については、大会の事前の討論においても、右翼の攻撃から防衛することでは一致するものの、ルラ政権の政策に対してどういう立場をとるのかについては大きな違いがあった。この点は、大会での討論の中でも改めて浮き彫りとなった。
パレスチナ・中東情勢をめぐる論議
国際情勢決議案の討論では、あわせてパレスチナ決議案をめぐる論議もおこなわれた。ガザ地区でのイスラエル軍によるジェノサイド攻撃が続き、シリアのアサド政権が打倒されるという情勢の中で、パレスチナ連帯運動をどのように作っていくのか、中東における革命の展望はどういうものか、などが議論された。
シリア情勢については、アサド体制打倒後のシリアでの革命をどのように展望するのかについての発言がめだった。「シリア・アサド政権の崩壊は重要な出来事であり、社会主義革命という枠組みでは、シリアにおける労働者階級、労働組合、とりわけ女性の果たす役割が重要だ。新政府は非常に反動的な勢力であり、クルド自治区政府が中東で最も進歩的な体制と言える」(トルコ)。また、シリア領内へのイスラエル軍の侵攻と駐留を非難する動議が準備され、ほぼ全員一致で採択された。
パレスチナ連帯キャンペーンについては、スペイン支部から「われわれは連帯キャンペーンの中心スローガンを『虐殺をやめろ』ではなく、『イスラエルとの外交・貿易関係を止めろ』『武器貿易をやめろ』に変えてきた。帝国主義国でのスローガンはパレスチナの抵抗運動と具体的に連帯するものにしなければならない」との発言が特徴的だった。
この討論には、前回大会には出席できなかったレバノンの革命的共産主義者グループが参加した。同グループは「歴史的にパレスチナである地に、世俗的・民主的・革命的国家を」という文書を会場で配布し、パレスチナ人民とイスラエル人民との共同の闘いによってシオニスト体制を打倒し、単一のパレスチナ国家を作る方向性を訴えた。
国際情勢決議は、賛成109、反対12、保留6、棄権4で、パレスチナ決議は、賛成116、反対3、棄権4で採択された。(続く)
(大森)

大会会場では各国支部の機関誌やパンフレットが販売されていた

