投稿「中国敵視論」を越えて日中労働者の連帯を

西島志朗

 私は前回の投稿(23年1月30日発行)の末尾でこう書いた。 
 ─「改憲反対」ではなく「働く者のための新しい平和憲法」をめざす。そこには、「非核中立の日本」(外国軍基地の撤去)と「近隣諸国との恒久的な平和外交」(日中・日ロ平和友好条約)を明記した憲法9条に代わる新たな条文が必要だ。それは、9条の平和主義の精神を明確に具体化するものとなるー 
 この記述は不十分であり、特に「近隣諸国との恒久的な平和外交」について、詳細に展開する必要があると考え、改めて「投稿」させていただく。

「友好」から
「敵視」へ
 既にある「日中平和友好条約」(1978年)は、第1条2項で「両締約国は、前記の諸原則及び国際連合憲章の原則に基づき、相互の関係において、すべての紛争を平和的手段により解決し及び武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する」とし、第2条では「両締約国は、そのいずれも、アジア・太平洋地域においても又は他のいずれの地域においても覇権を求めるべきではなく、また、このような覇権を確立しようとする他のいかなる国又は国の集団による試みにも反対することを表明する」としている。
 一読してわかるように、今やこの条約はほぼ完全に無視されている。「友好」から「敵視」へ。両国関係と国民感情は「反転」した。

中国の台頭、
日本の凋落
 この40年間に、両国経済の相互依存関係は一層深化し、二つの国を分かちがたく結びつけたが、その過程は中国が「経済大国」にのし上がる過程でもあった。
 70年代の国交回復と鄧小平の「改革開放」は、不況にあえぐ資本に安価な労働力と資源とマーケットを提供した。日本資本は中国に進出し、最も多かった2012年には、1万4394社(香港・アモイを除く)を数えた。同時にその過程は中国への急速な技術移転をうながす。技術とは生産力であり、中国は獲得した技術と「農民工」と呼ばれる膨大な低賃金労働力を利用して輸出向けの労働集約型産業を育成し、沿岸部と内陸主要都市での「近代化」を実現。2010年にはGDPで日本を抜いた。

中国と米欧日
の熾烈な競争
 さらに中国は、「不動産バブル」で顕在化した国内の過剰資本を東アジア・西アジアのインフラ投資等に振り向けるために、2015年の全人代で「一帯一路戦略」を打ち出し、中国が主導する国際開発金融機関「アジアインフラ投資銀行」を設立。「アジア開発銀行」を通じてアジアの「経済開発」を主導してきた日本やアメリカに取って代わろうとする強大な競争相手が出現した。中国は「世界の工場」であるだけでなく、米欧日と競合する資本輸出国となった。
 そしてこの数年、中国の海外直接投資は、「一帯一路」の沿線国を中心に、「グローバルサウス」で増加しているが、半導体製造技術の移転を警戒し矢継ぎ早に投資規制を強化したアメリカやヨーロッパでは減少している。中国と米欧日は、半導体の生産・供給網の確保、中国の排除に躍起となっている。「台湾危機」の根源はここにある。半導体の優位は、軍事力の優位性に直結する。半導体は今や「産業の米」ではなく、あらゆる産業の心臓部を構成する細胞である。半導体を制する者は世界を制する。「鉄は国家なり」にならえば「半導体は国家なり」である。
 中国と米欧日は、半導体生産・供給網の確保と「グローバルサウス」の資源・労働力・マーケットをめぐる熾烈な競争を繰り広げている。「友好」から「敵視」へ、政治は集約された経済である。

釣魚台領有権
を放棄せよ
 中国と米日の政治的対立の本質は、「独裁と民主主義」の対立、「普遍的価値」をめぐる対立ではなく、帝国主義的利権争いである。われわれは、「経済戦争」の代わりに、「経済共同体」をめざす。その大前提は、日本国内の「歴史修正主義」に反対し、「尖閣諸島」(釣魚台)や竹島の領有権を無条件で放棄することだ。釣魚台は日清戦争の、竹島は日ロ戦争の「戦利品」である。日本政府による領有権の主張は、侵略の歴史を誤魔化すものであり、両国人民の友好関係に障壁を築いている。
 「働く者のための新しい平和憲法」は、明治以降のアジア侵略と植民地化の真摯な反省・謝罪・賠償責任を表明し、日米安保条約を廃棄して米軍基地を撤去し「非核中立の日本」めざす。「近隣諸国との恒久的な平和外交」は、「領有権」を争っている島々(釣魚台、竹島、北方四島)の「領有権放棄」から始まる。当然、琉球(沖縄)とアイヌの自治権・自決権を擁護・承認することも憲法に明記すべきだ。

 真の敵は

国内にいる
 中国では労働者の抵抗が繰り広げられている。賃金不払いに起因する労働争議の急増を受けて、2020年5月に「農民工賃金支払い保障条例」が施行された。日本の労働者は、中国の民主化運動、少数民族の自決権を求める闘い、農民工のストライキに連帯を表明する。アメリカと一体となってアジア太平洋地域での資本の権益を守るための軍備拡大に反対する。「歴史修正主義」に反対して日本政府に釣魚台の領有権放棄を求める。「生活賃金の支給義務化」を求め、非正規の正社員化、安価な公営住宅、ベーシックインカム、ケアワーカーへの特別手当等々を、大企業の「内部留保」の下請け中小企業と労働者への還元、国債の償還と利払い停止、大企業と富裕層への大増税など、つまりは「資本の犠牲」によって実現することを求める。
 敵は国内にいる。日本の労働者による資本家政府の打倒をめざす闘いの発展こそが、中国労働者人民との連帯と友好を促進し、新たな「日中平和友好条約」の基礎を築くだろう。
       (2月1日)

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