秋刀魚を食べる
コラム「架橋」
9月末、根室の花咲漁港に1000トンのサンマが水揚げされたというニュースを目にして、塩焼きにして食べることを決めた。これだけの量が水揚げされたのは5年ぶりだという。
今年は8月の初水揚げが好調だったようだが、その後は思ったように獲れず、サンマの値段はうなぎ上りだった。形の良いものは、1匹750円の値を付けた。これでは手が出ない。10月に入りスーパーOの魚売り場には、1匹233円の良型サンマが並んだ。
しかし良型とは言え、脂がのってうまいのかどうかは、不漁が何年も続いていただけに食べてみなければ分からない。3本入り2パックを買い、叔母と娘の3人での試食ということになった。がんばって大根を下ろしたものの、当たりは1本のみ。こいつの内臓だけがパンパンだった。形は良くなってきてはいるが、十分な脂を付けるほどプランクトンを捕食できていないということがわかる。サンマの多くが「飢えている」のである。
サンマの不漁の原因として指摘されてきたのは、海水温の上昇や台湾と中国なども加わった乱獲だ。しかし専門家によると、栄養分豊富な寒流である親潮(千島海流)が南下してこないことが大きな原因だという。その影響でサンマが捕食する動物性プランクトンの量が減り、そのサイズも小型化しているというのだ。
地球温暖化の影響で、陸地では干ばつや山林火災、また氷河の後退や大洪水が頻発している。そして海面温度の上昇によって、海の中でも大きな変化が進んでいる。日本近海ではブリ・カツオなどの暖流魚が北進する一方で、寒流魚のサケは生まれた川に遡上できない事態が生まれている。またサンゴの白化や、海藻などへの影響も懸念されている。
海に囲まれた日本近海は、黒潮と親潮の他にも、日本海には対馬とリマンの海流が流れ、世界屈指の漁場を形成している。この豊かな海を守らなければならない。まずは原発からの高温の排水と汚染水を止めさせることだ。原発はいらない!
パサパサのサンマを噛みしめながら、怒りを燃やそうではないか。 (星)