トランプの勝利……
コラム「架橋」
11月5日、米大統領選挙があり、トランプの「圧勝」という最悪の事態になった。ネットニュースでハリスが前日に逆転したというのが流れていたので、ハリスがぎりぎりで当選するものと思っていたが、ショックで暗たんたる気分になった。
トランプは移民排斥、中絶反対、中国などへの関税の強化、ウクライナ支援の縮小など、「アメリカンファースト」の強いアメリカを煽っている。トランプの大統領への就任はアメリカ内における分断の一段の強化と国際的不安定を作り出すだろう。
アメリカがどうなっているか知るために、『引き裂かれるアメリカ―トランプをめぐるZ世代の闘争』、及川順著、集英社新書10月22日発行を選挙結果が出る前に読んだ。
「トランプ支持の右翼者団体やそれに対抗する左翼者団体など、近年影響力を増している若者たちの動向からアメリカの未来を予測する」として、NHKの特派員である及川さんが全米各地に足を運んで取材した生の声が紹介されている。
「ターニング・ポイント・USA」という保守派の若者団体を主に取材している。単なる学生の全国連絡会ではなく、資金力に裏付けられた団体だ。10年余りで、全米3500の大学と1800を超える高校にメンバーがいる。「自分が何者か認識せよ、力をつけよ、組織を作れ」が集会のスローガン。トランプと同じ主張を繰り返して下支えしている。
それに対して、社会主義を掲げる若者の団体「アメリカ青年民主社会主義者」(YDSA)を紹介している。全米に130支部、2000人のメンバー。集会の会場には階級闘争の本、マルクス本、パレスチナ本などが並び、マルクス主義への関心の高さを示してしていた。「ターニング・ポイント・USA」とは学内で衝突が起きていて、手を焼いているという。なぜ社会主義なのか。「気候変動、健康、住宅危機など諸問題が資本主義と関係しているからだ」という。
右翼、左翼とも若者が力強い。彼らがこれからを決めると著者の結論だ。日本でも総選挙の中で極右の潮流が明確になり、自民党の右翼と重なりあって進むだろう。確固とした左翼の確立を。 (滝)