環境破壊と闘う先住民
コラム「架橋」
ミシェル・レヴィーの「エコロジー社会主義」(柘植書房新社)には、環境を守るための先住民の戦いが紹介されている。その戦いを理解する一助となればと思い以下の文を記す。
現在、南米には昔から続く純粋な先住民共同体は存在しない。また、先住民が現在住んでいるコミュニティは、かつて彼らの祖先たちが共同体を営んでいた場所ではない。
なぜなら、スペイン人は彼らの共同体を徹底的に破壊し、土地を収奪したからである。その破壊は徹底したものであり、物理的に存在していたものだけではなく、先住民が共同体を再構築するための要素も、想像力の再生産の要素もすべてを破壊しつくした。
共同体社会を成立させている最も基本的な要素は、土地とそこに住む人々との結びつきである。スペイン人は共同体の土地を所有権が設定されていない無所有地として先住民からとりあげ、先住民とその共同体を切り離した。
そして先住民の知や文化の保存者も、精神的なバックボーンとしての宗教者も、つまり、彼らの想像力の再生産の要素をすべて破壊し尽くした。この破壊作業に大きく貢献したのがカトリック教団である。彼らは先住民に対して布教をしただけではない。先住民の宗教を徹底的に破壊したのである。
生き延びた先住民によって共同体は再建されていくのだが、共同体の成立条件の違いによって、その共同体社会は変形していく。①共同体が破壊されていく過程で、わずかに残った共同体。②破壊される過程で部分的に生き残った人たちを集めた共同体。③破壊された時に逃亡した人たちが造った共同体。④逃亡者の共同体だが、混血の人たち等が混ざり、性格を変えた共同体。⑤アシエンダ=大農園の労働力として先住民を使用するために形成された共同体等である。
逃亡者が形成した共同体はひどく辺鄙な場所にあり、それゆえ、最も共同体としての本来の特徴を備えている。現在、開発の波にさらされ、それと闘っているのが彼らなのである。
彼らの戦いの根底にあるのはかつて破壊された共同体に住んでいた先住民の土地や、経済行為等の権利の問題なのだと私は思う。そして、この問題こそ、左右を問わず、ラテンアメリカ各国政府がこれまで一切手を付けてこなかった問題なのである (O)