路面電車とトラム
コラム「架橋」
私はつい先日まで「トラム」というのはヨーロッパの市内を走る路面電車の名称だと思い込んでいた。それが路面電車の総称だと知ったのはテレビ番組である。それ以来、このことを教えてくれたNHKの「トラムで行くヨーロッパの旅」を見るようになった。それにつけても石づくりの建物とトラムは本当に美しい。おかしなことに私は小さい頃から路面電車が一輌や二輌編成で走るのをすべてチンチン電車と呼ぶ。また、車体の色がシンプルなのはチンチン電車である。弟や母親に言わせるとどうも父親の影響らしい。
渋谷の駅前に有名な交差点がある。その脇に緑色の車体が一輌展示されている。その車輛は「江ノ電」のものらしい。「江ノ電」は始発の湘南の藤沢を出発し、江ノ島を過ぎるあたりから右手方向に白波をあげる太平洋、左手方向に鎌倉らしい古寺が見える。稲村ケ崎を右手に左手に長谷の大仏が見えるあたりが最大のビューポイント。
私は9年前、北陸の富山に出向いた。駅前のあちこちにチンチン電車が止まっていた。その電車のボデーはカラフルで、中には新品に見えるものも数多くあった。友人は「東京と違って富山県は交通渋滞に対し、路面電車の強化で緩和する政策を押し進め、東京などの日本の大都市は路面電車を廃止し、地下鉄の建設で乗り切る方向に進んだ。富山駅前のチンチン電車はこの反映」なのだそうだ。富山のチンチン電車の車体は街を明るくする。宇都宮で運行されたチンチン電車も富山のように街を明るく見せるかもしれない。
今まで乗ったことがあるチンチン電車のうち私が好きなのは、前述した「江ノ電」と他に二つ。ひとつは北海道の函館、もうひとつは九州の長崎を走る電車だ。どちらも港町、坂道を登るのがいい。長崎では突然稲佐山が顔を出すし、函館ではどこからでも臥牛山が見える。
これからは是非ともチンチン電車の旅を新しい旅行に加えてほしい。きっと楽しいはずだ。 (武)