ホルモン療法に突入
コラム「架橋」
ボクが前立腺がんと診断されて5年間が経過した。前立腺がんをダ・ヴィンチ手術で、全摘したためPSGの数値は0になるのがあたりまえだが、その後の採血検査のたびに上がり続けている。医師がいうのには「神経が細かな病巣なので、取り損ねたかもしれない」と平然という。
その後、放射線治療を30回にわたり毎日行ったが、一時下がったものの、未だ数値は上がり続けている。その間も、MRやCT検査を何度かおこなったが病巣は見つからず、リンパ腺が腫れているせいだとの診断だった。
しかし、だからといってがんが消滅したわけではない。転移の兆候はないが、PSAが上がり続けているということは、確実にがん細胞が体のどこかにうごめいていることはまちがいない。
先日の検査の結果では48の数値まで急上昇し、ホルモン療法を始めるとのことだった。
前立腺がんは男性のみ発症する病気だ。そのため男性ホルモンを抑えるために女性ホルモンの錠剤を服用するか、薬物注射によって経過を見るという。もはや前立腺を全摘しているので男性機能は劣っているが、女性ホルモンの投与によってさらに劣化することは間違いない。連れ合いもパートナーもいないので、特に弊害はないが、副作用として乳房の女性化や身体のほてり、肝機能障害があらわれることがあるという。
おかげさまで毎晩飲酒するボクにとって肝機能障害がみられないことは幸だが、やっかいな治療が始まったと思わずにはいられない。
同年齢の知り合いにPSG1000という強者がいるが、腰や背中の骨に転移して、それは痛く辛いという。前立腺がんは、骨に転移しやすいというから、最悪車椅子の生活や寝たきりにもなるという恐ろしいことだ。しかし、彼は精力的に仕事をこなしている。見習わなければならないと自分を叱咤激励せずにはいられない鏡だ。
ボクは、このごろ足の筋肉の劣化によって、よく転んだり躓いたりするようになった。飲酒したあとは特にひどい。夜半にバスから降りて、足がもつれうつ伏せに転倒し、意識を失い救急車で運ばれたこともあった。
ともすれば前述した副作用の肝機能障害に蝕まれている可能性もある。「医療ミス」の一端と延長体験している今日このごろである。 (雨)