「熊嵐」の再来
コラム「架橋」
東京都江戸川区の住宅街で、生活道路をイノシシが走っている光景が目撃された。テレビニュースによれば、何のためらいもなく走り去っていく姿が放映されていた。なんでも棲息地と目される栃木県、茨城県と群馬県にまたがる渡良瀬遊水地から川沿いに南下してきたらしいと伝えている。そして、今度は東京から棲息地に戻る道中だったらしい。
つい最近ではイノシシとクマを地元民が見間違ったのか、遊水地にクマが出没と地元紙に報じられるという事件も発生し、近隣住民を驚かした。遊水地自体アシや低木が生い茂りイノシシにとっては、身を隠すのに最適な場所であることは紛れもない事実であるが、まさか東京までその行動範囲を広げているとは信じられない。その頭数は3000を超えているとも言われている。
さてクマの話であるが、東北地方を中心にその人的被害の数は衰えることを知らない。家庭の玄関先や小学校の校庭に出没するばかりか、コンビニへの侵入、あげくの果てには温泉旅館内に居座る始末。露天風呂を清掃していた従業員が喰い殺された事件は耳目に新しい。まるで吉村昭の小説「熊嵐」の再来である。
クマが人間を恐れなくなった原因は「人間そのもの」にある。確かにドングリなどのクマの主食となる木の実の不作が要因のひとつとも言われているが、クマの棲息地である奥山と、人里の境界であった里山の喪失、あるいは食品残渣の不適切な処理、キノコや山菜取りなど人間の奥山侵入などその原因はさまざまである。
しかし、かつてのような自然界と人間界の平和的な共存は消滅したとも言い切れる。現代の悪は、クマそのものであるように語られているが、すべて人間の傲慢さに起因していると考えるのはボクだけだろうか。
昨今、クマを駆除するために、秋田県と岩手県から陸上自衛隊に出動要請がなされた。捕獲檻の運搬などの後方支援が主な任務であるとされるが、その拡大解釈が「緊急事態条項」に繋がるのではないかと危惧するのはおおげさだろうか。
今日の国会で高市総理は、台湾有事の際には国家を守るため武力行使もありうると発言した。タカ派極右の面目躍如そのものだが、クマ害駆除が「国家的平和秩序」に転嫁されないことを科学的に実証、反撃することが今日的課題であると思わざるを得ない。 (雨)

