映画「黒川の女たち」
コラム「架橋」
予約が次々と埋まり、アンコール上映が続いている。松原文枝監督・テレビ朝日製作の表題の作品だ。
1931年9月。帝国主義日本は満鉄線爆破を口実に満州事変を引き起こし、中国への全面的な侵略を開始。傀儡国家「満州国」を作り上げた。日本国内では村落共同体再生運動が始まり、農民たちを強制的に移民させる「満蒙開拓団」が発足。本作は、岐阜県白川町黒川から開拓団として満州に渡った女性たちの苦難のドキュメンタリーである。
日本の敗戦と共に家や土地を奪われた中国人の逆襲が始まった。関東軍は素早く逃亡し、侵攻してきたソ連軍は略奪と強姦を繰り返す。「生きて虜囚の辱めを受けず」。開拓団の自決が始まった。
大混乱の中で黒川団の男たちはソ連兵に命乞いをし、15人の女性を「性接待」として差し出すことを決めた。夫が出兵している妻は外され、18歳以上の独身女性だけが選ばれた。国民学校の教室の布団の上に横並びに数人が寝かされ、女性たちは手を取り泣きながらレイプに耐えた。行為が終われば全裸のまま「医務室」へ駆け込み、同じ団員の女性によって「消毒」された。被害を免れた女性たちは懸命に彼女たちを支えた。医療も食料もない極寒の地の地獄のような人身御供。戦後を通じ長く緘口令が敷かれていた。帰国後も周囲の差別・偏見によって辛苦の日々が続いた。救世主であるはずの彼女たちは「汚れた女」として故郷を追われた。
戦後70年、本作で主役として登場する佐藤ハルエさんが、地元の集会で初めて事実を公にした。この証言を契機に沈黙を守ってきた女性たちが語り始めた。
黒川開拓団の遺族会として、複数の男たちが登場する。前会長は最後まで頑強に公表に反対した。かたや現会長は被害女性たちに謝罪し、詳細な事実を記した碑文と銘鈑の建設のために奔走する。忍耐の封印と怒りの告発のせめぎ合い。長い年月の紆余曲折、現代に続く戦争の本質とは。
私の涙を止めたのは物語の終盤。若い教師と女学生たちが戦時性暴力について議論し、歴史を正しく継承しようとする真摯な姿勢だ。「救われました」――私は館員に告げて、帰路についた。(隆)

