新たな危機の時代における断層線―帝国主義的対立、権威主義そして抵抗 ②

2026年5月10日 アシュリー・スミス

 トランプ政権は、新たな右派の台頭というこの世界的なパターンの一部である。2024年の大統領選挙におけるトランプの勝利は、民主党とその資本主義・帝国主義に対するとりくみに全面的な責任がある。バイデン政権はシステム危機に対処できず、インフレによって労働者の貧困化が進んだことを放置し、大規模な国外追放を実行した。国外では、帝国主義間の対立を激化させ、ガザにおけるイスラエルのジェノサイド戦争を支援した。
 トランプは民主党への失望を巧みに利用したが、辛うじてハリスに勝利を収めることができただけだった。つまり、投票した有権者の約半数、有権者全体の33%の得票を獲得したに過ぎないのである。他の権威主義的ナショナリストと同様、彼は資本家の合意を代表しているのではなく、億万長者と急進的小ブルジョアで構成されるならず者集団を代表している。そして、2024年の大統領選挙では、トランプはせいぜいのところ弱い信任を得ただけなのである。
 しかし、だからといってトランプ政権の残虐性が軽減されるわけではない。トランプは最初の任期中とは異なり、現在では「プロジェクト2025」という明確な綱領と、意見の相違はあってもトランプの突飛な衝動も含めて、指導者を無条件に支持する追従者で構成する統一された内閣を有している。彼らは権威主義的なナショナリズム・プロジェクトを強引に実行に移している。
 アメリカでは、階級戦争が仕掛けられてきた。たとえば、富裕層への減税、公務員労働者の解雇、残された労働組合の権利の剥奪、社会福祉の骨抜き、経済の規制緩和などがおこなわれてきた。これを遂行するのに古典的な分断統治の手法が用いられ、システムの失敗を抑圧された人々のせいにしたり、とりわけ移民をシステムの失敗のスケープゴートにしたりしている。トランプは今後4年間でICE(移民税関執行局)の予算に850億ドルを投入し、数千人の新たな職員を雇用して、都市の占拠、数十万人もの移民の逮捕、新設収容所への拘留、出身国への強制送還のために投入しようとしている。
 トランプはまた、衝動的な非合理さに陥って、ディープステート[注:ここではトランプの方針に反対して、裏で邪魔している官僚組織という意味で使われている]への報復もおこなっている。たとえば、国立衛生研究所(NIH)のようなアメリカ資本主義の再生産に不可欠な政府機関や、国務省のようなアメリカ帝国主義を運営する政府機関を丸ごと削減したりしているのだ。トランプは、専門的な管理者に代えて、右翼の政治ゴロやイデオローグ、イエスマンを任命している。
 彼はこの攻撃を民間分野にも拡大しており、たとえば、全員がアメリカ資本主義とその国家にとって不可欠な人材である将来のCEO、科学者、専門家、国家管理者を育成するエリート高等教育機関を標的にしている。トランプは本当のところは「アメリカを再び愚かに」したいと思っているかのようだ。

帝国主義秩序の破壊

 トランプは国外においては、資本家階級や国家管理層の意向に反して、第二次世界大戦後にアメリカが築き上げ、冷戦後に世界規模で拡大してきた秩序全体を壊してきた。トランプ政権の構想は孤立主義ではなく、同盟国と対立国の両方に対して自らの考えるアメリカの国益を追求する略奪的支配の一つである。トランプ政権の代表者たちは、国家安全保障戦略、国家防衛戦略、そしてヴァンスやマルコ・ルビオによる一連の演説の中で、この構想を明確に打ち出した。
 そこに述べられている目標は、グローバル資本主義を管理するという前任者全員の構想を完全に放棄し、「アメリカ・ファースト」を打ち出すことによって「アメリカを再び偉大にする」ことである。地政学的には、アメリカが世界を監督するために設立した国連や世界保健機関(WHO)といった多国間機関から脱退している。トランプは、かつてグローバル・サウス諸国からの支持を集めていたアメリカ国際開発庁(USAID)のような人道支援プログラムへの資金提供さえも削減した。彼は人道支援プログラムを腐敗した福祉制度だとして否定し、事実上ソフトパワーの活用を放棄した。
 経済面では、トランプは自由貿易グローバリゼーションを放棄し、同盟国と対立国双方に対して保護主義的な貿易体制を確立した。しかし、国内外からの反発に直面している。中国は他のほとんどの国とは異なり、トランプ政権と真っ向から対立し、加工レアアースの輸出に厳しい制限を課し、トランプは関税引き下げを余儀なくされた。
 アメリカでは、資本家階級とトランプ自身の小ブルジョア的基盤である農民層が、自分たちへの適用除外を認めるようトランプに圧力をかけた。また、最高裁判所は、トランプが国際緊急権限法を用いて関税を課したことを違憲と判断し、政権は新たな保護主義を維持するために他の権限を行使するべく、計画の見直しを迫られた。
 最後に、軍事面では、政権はハードパワーを強化し、ペンタゴンの予算を1兆ドル以上に引き上げた。そして今、トランプはそれを1・5兆ドルにまで引き上げることを提案している。同時に、トランプ政権は世界秩序を維持する役割から手を引いてしまった。トランプ政権は、アメリカが露骨な経済的利益のために、粗雑な砲艦外交を通じてラテンアメリカにおける勢力圏の確立に注力できるように、ヨーロッパとアジアでの名ばかりの同盟国に対し、自国の安全保障を自ら担うよう要求している。
 新たな「ドンロー主義」の目的は、この地域を自国の支配下に置き、反対勢力をつぶし、中国を排除することにある。トランプはすでにパナマを中国の「一帯一路」構想から撤退させ、ベネズエラでクーデターを起こして石油資源を掌握し、基地建設や北極圏の資源に対する権利の主張のためにグリーンランドを占領すると脅迫し、キューバに対しては残忍な封鎖措置を課し、政権交代をちらつかせながらアメリカの不動産投資を受け入れるよう脅している。
 勢力圏の確立はトランプにとって最優先事項だが、他にもヨーロッパ、アジア、中東という3つの地域を優先課題としている。ヨーロッパでは、彼は極右勢力を支援して「白人文明」と帝国主義的な誇りを復活させようとし、EUに規制緩和するよう圧力をかけ、NATOに軍事費の増額とロシアに対するものを含む自国の安全保障の確保を強要している。彼はウクライナを事実上見捨て、東ヨーロッパにおけるかつての勢力圏をモスクワに譲り渡した。
 アジアにおいては、中国との現状維持の姿勢を表明しているものの、同時に北京と裏取引をして中国に勢力圏を譲歩する可能性も示唆している。中東においては、イスラエルがガザ地区のハマスを壊滅させ、そこに略奪的な「和平」を押し付け、イランにある司令部を含むいわゆる「抵抗の枢軸」の残りの勢力を解体することを支持している。その後、トランプは、いわゆるアブラハム合意[注:2020年にイスラエルとアラブ首長国連邦、バーレーンが結んだ相互の国家承認などの合意]を拡大し、何もかもを中国やロシアではなくアメリカの思い通りにして、イスラエルと中東地域諸国の政権との関係を正常化しようと考えている。

最も凶暴な者
が生き残る


 トランプ政権は、この計画によって、公然と自らの狭隘な経済的利益を追求するために、いわゆるルールにもとづく秩序を放棄したことを世界中に宣言したのである。トランプ政権は新たな世界的無秩序を構築しつつある。そこでは、力ある者が正義となり、大国同士が覇権を争い、弱い国はトゥキュディデスの言葉どおり「なすべきことをただ耐えねばならない」場に追い込まれる。
 EUのような他の大国はルールにもとづく秩序を懐かしむかもしれないが、アメリカをはじめとする大国からの圧力に屈し、弱肉強食のルールに従う以外に選択肢はない。カナダのマーク・カーニー首相は世界経済フォーラムでの衝撃的な演説で、新たな世界的無秩序について飾り気のない言葉で語った。彼はかつてのルールにもとづく秩序を称賛した。それが常に虚構であったことを認めつつも、少なくとも大国には政治的・経済的な制約が存在していたと主張した。
 しかし、トランプがそれを破壊したとカーニー首相は指摘し、カナダのようないわゆる中堅国はその事実を認識し、それに応じて対応しなければ、「決定に参加できないで、不利な決定を押し付けられる立場になる」と述べた。好むと好まざるとにかかわらず、カナダは自らの帝国主義的な利害を最優先しなければならないとカーニー首相は主張した。彼はすでにその計画を推進しており、軍事予算を増額し、北極圏の領有権を主張し、中国のようなアメリカと対立する国と経済協定を結んでいる。他のアメリカの同盟国も同様の動きを見せている。衝撃的な例として、デンマークは実際に、アメリカの侵攻を阻止するためにグリーンランドに軍隊を派遣し、空港の滑走路を爆破する計画を立てていた。
 全ての国は、トランプの「最も凶暴な者だけが生き残れる」という戦いに適応しようとしている。EUやNATO、およびその加盟国、とりわけフランスとドイツは、アメリカを信用しておらず、独自の道を歩む以外に選択肢がないことを認識している。ローロッパの諸大国は、アメリカに逆らって中国やラテンアメリカ諸国と貿易協定を結び、軍事予算を増額し、社会保障費・賃金・補助金の削減によって労働者に緊縮財政を押し付けている。ロシアはすでにウクライナへの帝国主義的侵攻を支えるための戦時経済体制を構築している。アジアでは日本も同様の動きを見せている。ワシントンの主要なライバルである中国も同様だ。こうして私たちは、新たな世界的軍拡競争の真っただ中にいる。

イラン―
世界史の転換点


 いわゆるルールにもとづく秩序は、ウクライナにおけるロシアの帝国主義戦争とアメリカ・イスラエルによるガザ地区でのジェノサイドによってすでに破綻していた。そして今、トランプはイランへの戦争によって、その残骸を破壊した。トランプは、ベネズエラでマドゥロを拉致し、その残党をアメリカ帝国主義の手先に変えたことに気を良くして、自分とイスラエルならイランでも同じことができると考えた。その代わりに、それは彼の目論見を完全に台無しにし、その結果としてテヘランが報復として地域戦争を始めてしまった。
 アメリカとイスラエルは一緒になってこの戦争を始めたものの、戦争の目的はそれぞれで異なっていた。トランプはベネズエラ型の解決策を求めていた。つまり、カラカスでデルシー・ロドリゲスが果たした役割をイラン政権内で担う人物を見つけ出し、アメリカの命令に従うことを条件に政権を維持するための取引を成立させようとしたのだ。トランプは、再編されたイラン政権がアラブ諸国とともにアブラハム合意に加わり、イスラエルとの関係を正常化することを期待していた。
 それとは対照的に、ネタニヤフはイラン政権全体を崩壊させ、国を分断し、同盟勢力を一掃することで、イスラエルの地域覇権に何者も挑戦できない状況を確実に作ることを意図している。トランプ自身が認めたように、イスラエルは、ワシントンが取引する相手として期待していたイラン指導者たちを殺害することで、ワシントンの目標を阻害した。当然のことながら、イスラエルはイランへの奇襲攻撃と並行して、レバノンのヒズボラに対する新たな攻勢を開始し、ガザ地区での虐殺とヨルダン川西岸での入植地拡大を続けている。イスラエルは、自らのミニ帝国、すなわち「大イスラエル」を築き上げようとしているのだ。
 もちろん、イスラエルはトランプに戦争開始を迫ったが、彼をだまして戦争に踏み切らせたわけではない。尻尾が犬を振り回しているわけではないのだ。ネタニヤフでさえ、ショーン・ハニティとのインタビューでその考えを嘲笑した。ハニティが「『イスラエルの首相がトランプを巻き込んだ』と言う人もいますが」と言うと、ネタニヤフは笑いながら「ばかげている」と言い、「ドナルド・トランプは世界で最強の指導者だ。彼はアメリカにとって正しいと思うことをする」と続けた。
 つまり、トランプは自らの愚かな理由で戦争を始めたのである。彼はイスラエルの傀儡(かいらい)ではない。しかし、彼は致命的な計算違いをした。イランはベネズエラではない。イランは、国民の少数派を忠実な支持基盤とする、実戦経験豊富な神権政治体制である。イランは地域戦争を遂行してきたし、労働者や被抑圧民族による民主的な蜂起を繰り返し鎮圧してきた。そして、イランはアメリカとイスラエルの戦争を生き延びるだけでなく、壊滅的な反撃を実行するために周到な準備を整えていたのである。

破滅的な結果


 トランプがこの戦争を始めたとき、イランは攻撃に持ちこたえ、イスラエルやすべてのアラブ諸国、さらにはNATO加盟国にミサイルとドローンを発射して反撃した。トルコやキプロスおよびディエゴガルシアのイギリス軍基地を攻撃した。そして、ホルムズ海峡を封鎖して世界向けの石油と天然ガスの輸送を遮断した。これにより化石燃料価格は急騰し、世界経済の成長を脅かし、インフレ―資本主義の悪夢であるスタグフレーション―を引き起こした。
 そして、紛争がエスカレートすれば、世界経済への危険はさらに深刻化する可能性がある。すでに、イスラエルがイランの天然ガス田を攻撃した際、テヘランはカタールのラスラファンにある天然ガス(LNG)処理施設を攻撃して報復した。この施設は、アジアへのLNG供給の多くを担っている。これを受けてトランプはイスラエルに対し、これ以上の攻撃を控えるよう求めた。しかし、すでに被害は発生しているかもしれない。カタールは、巨大なプラントの復旧に3年から5年かかると発表している。あるアナリストは、これは「アルマゲドン」というシナリオ、つまり史上最大の石油・天然ガスショックにつながると指摘した。
 しかし、戦争の影響はそれだけにはとどまらない。固定観念とは異なり、この地域の経済が世界にとって果たす役割は化石燃料だけにとどまらない。湾岸諸国は、産業、国際旅行、海運、金融の中心地へと変貌を遂げてきた。こうしたすべてが崩壊すれば、経済システムにとって、そしてもっと重要なことに世界の労働者階級や農民にとって壊滅的な打撃となるだろう。
 戦争と海峡封鎖は、この地域の肥料産業の輸出を阻害している。その結果、今後数ヶ月で世界各地の種まきシーズンが始まる時期に、肥料の不足と価格高騰を招くことになるだろう。グローバルノースの農家はコスト増を我慢して、供給量の大部分を消費に回せるかもしれないが、グローバルサウスの農家は価格高騰によって市場から締め出され、肥料不足に苦しみ、収穫量も減少するだろう。肥料と燃料価格の高騰が重なることで、グローバルノースでは食料価格が急騰し、グローバルサウスでは飢饉が発生するだろう。
 この戦争は、世界経済に不可欠なあらゆる種類の化石燃料副産物の輸出も阻害している。たとえば、この地域の工場では、プラスチック製造の主要原料の一つであるナフサが生産されている。プラスチックは、包装材から自動車、戦闘機に至るまで、あらゆるものに使用されている。もう一つの例はヘリウムだ。ヘリウムはマイクロチップの製造に不可欠であり、マイクロチップなしでは今日のハイテク経済は成り立たない。
 さらに、この地域の港湾と空港は、国際旅行と商業輸送の両方にとって不可欠な拠点である。これらの機能停止は、世界経済にさまざまな問題を引き起こしている。たとえホルムズ海峡と空港が再開したとしても、企業は空港を輸送と商業の信頼できる拠点として信用しなくなり、空港への巨額の投資、インフラ、貿易・旅行ルートに疑問符が投げかけられることになるだろう。
 最後に、アラブ首長国連邦、カタール、サウジアラビアといった湾岸諸国は、国際金融資本の一大拠点へと変貌を遂げた。これらの国々は、自国だけでなくアメリカにおいても、あらゆる分野、特にAIデータセンターへの投資に資金を投入してきた。しかし今、企業は湾岸諸国のデータセンターのセキュリティに疑問を抱くようになるだろう。そして湾岸諸国は、国際投資を縮小し、自国のインフラ再建に資金を投入せざるを得なくなるだろう。このような逆風は、アメリカのデータセンターブームを弱体化させ、アメリカ資本主義の成長を支える主要な柱であったハイテクバブルを崩壊させる可能性さえある。このように、戦争はシステム全体を混乱させているのだ。

エスカレーシ
ョンの論理

   
 トランプは、それによってイラク戦争以降で最大の帝国主義的危機に陥ってしまった。そして、それはもっと深刻な危機になる可能性をはらんでいる。アメリカ、イスラエル、イランは、停戦に至るまで、明確な終結が見えないエスカレーションの論理に囚われていた。イラン政権は存亡の危機に直面しており、死に至るまで戦うだろう。それゆえに、イラン政権は、中東地域や世界中の国々がアメリカとイスラエルに対して戦争の停止と再発防止を迫るように仕向けるため、戦争を拡大していったのである。彼らは間違いなく、将来の攻撃を抑止するため、戦争終結後に核兵器を製造する決意を固めているだろう。
 イランの反撃によって、アメリカとイスラエルは対応を迫られ、トランプが望んでいた迅速な勝利は遠のいた。こうして、まるで魔法使いの弟子のように[注:魔法使いの弟子が箒に魔法をかけて水汲みをさせたものの、止め方が分からず洪水になってしまったように、という意味]、トランプは急拡大する戦争のコントロールを失った。さらに、イランの輸出を遮断するためにホルムズ海峡を封鎖するという彼の決定は、この紛争による世界経済へのダメージを深刻化させた。
 この危機に直面し、トランプは譲歩し、何一つ目標を達成できないまま停戦に合意した。イラン政権は依然として権力を維持し、いまだに核物質を保有し、中東地域への攻撃を脅すに足るミサイルとドローンの能力を保持している。さらに、イラク、レバノン、イエメンにいる中東地域での同盟者への支援継続も約束したままである。
 現状では、ホルムズ海峡は封鎖されたままであり、協議は行き詰まり、世界経済はさらなる危機に瀕している。イラン政権がアメリカよりも長くこの膠着状態を乗り切れると確信しているのは明らかだ。トランプは明らかに合意を望んでいるものの、アメリカにとってさらに屈辱的な合意は受け入れることはできない。一方、イスラエルはイランとレバノンでのさらなる戦争を煽っている。
 いずれにせよ、アメリカは深刻化する経済的・地政学的・軍事的危機の只中にある。世界経済は大きな打撃を受けている。中東地域では、もはや誰もアメリカを信用できなくなっている。アメリカの軍事基地と防衛システムは、サウジアラビアのような属国を守るどころか、攻撃の標的にしてしまった。中東地域の住民の大多数の意思に反して、イスラエルとの関係正常化に踏み切る政権は存在しない。住民は今、アメリカとイスラエルに激怒している。このため、トランプのアブラハム合意は危機に瀕している。
 トランプは、開戦計画を事前に伏せていたため、ワシントンの同盟国すべてを完全に離反させてしまった。いまやアメリカが危機に陥っても、トランプを救済することに同意する国はない。こうした国々はすべて、トランプによる戦争に参加したり、ホルムズ海峡を開放するための艦船を派遣したりすることを拒否している。現時点では、この戦争に関与しないことを望んでおり、戦争にますます批判的になっている。ドイツ首相の「イランがアメリカを辱めた」という発言に対して、トランプは怒りにまかせて、ヨーロッパからの米軍の全軍撤退という脅しをかけ、NATO同盟全体を脅迫した。
 アメリカにとってさらに悪いことに、トランプによる戦争はワシントンの主要なライバルであるロシアと中国に利益をもたらした。トランプは、化石燃料価格を引き下げようと必死になるあまり、ロシアからの石油輸出に対する制裁を緩和した。これによりプーチンは勝利を収めた。低迷する経済を立て直すために切実に必要としていた資金を確保できたからである。この資金によって、プーチンはウクライナに対する帝国主義的な戦争をエスカレートさせることできる。トランプは、ロシアがイランに軍事情報を提供することで支援しているにもかかわらず、ロシアに対する制裁を緩和した。プーチンは自らの優位性を感じ取り、アメリカがウクライナへの情報提供を停止するならば、イランとの情報共有を停止するとまで申し出た。
 中国は、アメリカがまたしても破滅的な戦争に陥っていることを喜んでいる。イランからの石油と天然ガスは失ったものの、当面は膨大な化石燃料備蓄を活用することができ、ロシアからの供給契約を拡大することで、両国の「限りない友好関係」をさらに強化できる。しかし、中国もこの戦争の影響から免れることはできない。中国は製造に必要な主要原材料の確保が困難になるだろう。世界的な景気低迷は持続的成長の原動力である輸出市場を弱体化させるだろう。中国に債務を負っている国々は返済がますます困難になり、中国の金融資本は危機に瀕する。   (つづく)

週刊かけはし

購読料
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00860-4-156009  新時代社