新たな危機の時代における断層線―帝国主義的対立、権威主義そして抵抗 ③

2026年5月10日 アシュリー・スミス

トランプの深刻化する国内危機

 トランプによる戦争は国内の政治危機をさらに深刻化させる。トランプはすでに深刻な不人気の中にいるが、タッカー・カールソンのような人物が戦争に反対するなど、MAGA派指導者の分裂に直面している。また、トランプは自らに投票してくれた支持層の一部をも離反させてしまった。彼らはアメリカを「終わりのない戦争」から遠ざけてくれると無邪気にも信じていたからである。この戦争は、終結の見通しが立たないために、もし公正かつ自由な中間選挙がおこなわれれば共和党を敗北へと追い込むだろう。民主党は下院を握り、場合によっては上院も掌握して、議会を公聴会で麻痺させ、あらゆる法案を阻止し、トランプと閣僚の弾劾を試みるだろう。
 トランプはそのことを承知している。そのため、彼は権力維持のためにますます権威主義的な手段に訴えている。恣意的な選挙区割りの改変や有権者登録の妨害によって選挙を不正操作しようとしている。最近では、数百万人の投票権を事実上奪うことになる「セーブ・アメリカ法」を制定した。最高裁判所も、ルイジアナ州の2つの選挙区で黒人有権者に過半数を与えていた選挙区割りを覆す判決を下し、トランプを後押しした。この判決は事実上投票権法を骨抜きにし、ジム・クロウ時代[注:南北戦争後の1870年代から1960年代半ばごろまで、主にアメリカ南部を中心に続いた、制度的な人種差別と人種隔離の時代を指す]以来見られなかった選挙における白人至上主義の復活を招く恐れがある。すでに、危険な前例として、ルイジアナ州は共和党に有利な選挙区割りをおこなえるように予備選挙を中止している。
 さらに不吉な兆候として、バノンのような右派の一部は、トランプが投票所に移民税関執行局(ICE)を配置するよう主張してきた。トランプはすでに、全米の空港にICEを配置することで、その可能性を探っている。こうして、アメリカのブルジョア民主主義の規範は危機に瀕している。これが誇張だと考える人がいるかもしれないが、3つの新たな研究によると、アメリカは驚くべき速さで専制政治へと向かっていることが明らかになった。
 この深刻化する危機に直面しながら、民主党はこの1年間、事実上身を隠してすごしてきた。彼らはジェームズ・カービルの「ポッサム戦略」[注:ポッサムは有袋類の一種で、日中は身を隠して生活している]を採用した。文字通り、捕食者に遭遇した際に死んだふりをするのだ。バーニー・サンダースやオカシオ・コルテスのようなアウトサイダーが億万長者階級に反対する行動を訴える一方で、民主党主流派はトランプが自滅して共和党の信用を失墜させ、中間選挙で圧勝することを期待して、時機を待っていた。そして、ギャビン・ニューサム[カリフォルニア州知事]やJ・B・プリツカー[イリノイ州知事、ハイアット・ホテルチェーンを所有する一族の出身]のような新たな企業寄りの旗手を見つけるか、あるいはさらに悪いことに、大量虐殺者カマラ・ハリスに頼って2028年にホワイトハウスを奪還し、現状を回復しようと目論んでいたのだ。
 実を言うと、民主党はミネアポリスでのICEに対する大規模ストライキまで、トランプ政権にほとんど抵抗してこなかった。ストライキが起こって初めて、彼らはICEと国土安全保障省への予算配分に異議を唱えた。しかし、警察に対してとった態度と同様に、彼らの要求はICEの人種差別的な暴力部隊の廃止ではなく、職員にボディカメラを装着させ、訓練を強化し、マスク着用をやめさせることだった。そして、これらの「改革」と引き換えに、ICEへの予算増額を約束したのだ! 民主党は、国土安全保障省とICEが2003年に設立されて以降、数十億ドルもの資金を提供してきたのだから、これは何ら驚くべきことではない。オバマ政権とバイデン政権のもとで、民主党はICEと国境警備隊を使って何百万人もの人々を強制送還した。
 トランプ政権によるイランへの破滅的な戦争に対する民主党の反対らしきものは、さらに情けないものだ。どうしてかと言うと、彼らは、1979年のイラン革命以来、イスラム共和国を打倒しようとするアメリカ帝国主義の決意を共和党と共有してきたからである。つまり、彼らの当初の反対は手続き上の問題だった。つまり、トランプは戦争の必要性を立証しておらず、戦争権限法にもとづく議会の支持も得ておらず、明確な計画や目標も示していなかったというのである。そして彼らの主な懸念は、トランプの愚かな戦争がアメリカ帝国主義を弱体化させ、中国やロシアと戦う能力を低下させたことにある。
 党内の改良主義者の中には戦争を非難する者もいるが、彼らは依然として帝国主義政党の中に囚われており、その政党というのは反動的で、非常事態においては無力なのである。結果として、中間選挙が通常通りに行われたとしても、民主党が勝利する可能性が高いにもかかわらず、彼らは依然として国民の支持を得られず、体制の危機や国民の不満に対する解決策を何も提示できないでいる。

抵抗の中にこそ
希望がある


 民主党とは異なり、労働者や被抑圧民衆はトランプに対して立ち向かい、多様な人々からなる大規模な抵抗運動を生み出した。パレスチナ連帯運動のように、トランプ就任以前から存在していた潮流もある。この運動は、国家による弾圧やリベラル派・シオニスト勢力からの敵意にもかかわらず、存続し続けている。その他の潮流の多くは、トランプによる容赦ない階級的・社会的攻撃、とりわけICEによる移民への戦争によって活性化された。こうしたすべての潮流がミネアポリスに集結し、大規模なストライキと抗議活動へと発展した。この結果、トランプは撤退を余儀なくされ、国境警備隊司令官グレッグ・ボヴィーノを解任し、国土安全保障長官クリスティ・ノームを降格させ、数百人のICE要員および国境警備隊員を撤退させた。
 ICEに対するこの反乱は、過去数十年にわたって築き上げられてきた抵抗運動の基盤の上に成り立っていた。これには、ジョージ・フロイド事件をきっかけとした警察の暴力に対する抗議運動、労働組合の組織化とストライキ、移民の権利闘争、先住民主導のクライメート・ジャスティス運動などが含まれる。しかし、アメリカの大部分の地域では、こうした抵抗の基盤が欠如している。そして、他の地域と同様に、そこでも戦闘的な少数派と革命的左派は依然として小規模である。こうした状況は、抵抗運動の組織化と政治活動を阻害している。
 しかしながら、闘争は新たな組織と新たな左派を生み出しつつある。国民的抵抗運動における二大組織は、「インディビジブル」と「メーデー・ストロング」である。「インディビジブル」は、民主党のオルグ2名によって結成された。彼らは、このプロジェクトを、闘争において党の支持基盤を活性化させ、その後選挙へと転じてトランプと共和党を打ち負かすための手段として明確に構想していた。つまり、労働者と被抑圧民衆を資本主義政党に結びつけ、自由主義的改革の実現を目指す、いわば人民戦線組織なのである。
 「インディビジブル」は、3回の大規模な「ノー・キングス」集会を開催した。しかし、民主党とのつながりから、パレスチナ連帯活動家を排除する傾向があり、イラン戦争への反対運動さえも受け入れることに消極的である。その戦略は、デモに参加する数百万人の人々を、中間選挙と2028年の大統領選挙における民主党の選挙運動員へと転換させることにある。しかし、苦い経験から明らかなように、民主党は大多数の人々にとってオルタナティブとはなり得ない。それでも、デモ参加者たちは、より急進的な思想や戦略を受け入れる姿勢を示している。
 もう一つの組織である「メーデー・ストロング」は、シカゴ教職員組合が主導した。この組織は、労働組合、移民権利団体、その他の社会運動団体、NGOを結集させ、労働者階級の勢力による統一戦線の可能性を切り開いている。「インディビジブル」や、もう一つのリベラル系組織である5051も参加している。そして、それは左派系労働組合の官僚主義的な枠組みに制約されている。それにもかかわらず、メーデーを再び重要な位置づけにし、連帯学校を奨励して労働組合がトランプ政権に対する政治ストライキを起こせるよう準備を進め、今年のメーデーのスローガンとして「働かない、学校に行かない、買い物に行かない」を掲げた。
 「メーデー・ストロング」は、左派に対して、トランプのますます権威主義的になる政権に立ち向かうためのゼネストの議論を進める上での全国的な活動基盤を提供している。その明確なモデルとなっているのは、クーデターを阻止し、政権を打倒した韓国のストライキである。とはいえ、この運動がすべての都市や町で展開されているわけではない。また、労働組合幹部層が民主党改良主義派と結託することで、民主党によって取り込まれることから免れているわけでもない。さらに、その内部で「インディヴィジブル」がこれほど目立つ役割を果たしていることは、不吉な兆候である。それでもなお、「メーデー・ストロング」は、抵抗運動を構築する上で、革命的左翼にとって重要な戦略的方向性である。われわれの課題は、この全国的な連合と連携した同じような地域組織をいかに形成するかということだ。トランプ政権を打倒するための、大衆的で独立した労働者階級の行動を煽動する上で、これがわれわれの最善の策である。

革命的左派の再生


 危機、帝国主義間の対立、権威主義、抵抗運動という新たな時代は、新たな社会主義左派の構築のためのスペースを切り開いている。実際、あらゆる政治組織は今、改良主義から新スターリン主義や革命的社会主義へと成長しつつある。危機と階級闘争の時代において、新世代の政治・戦略・戦術を形作るための闘いが始まっているのである。
 テンペストは、下からの社会主義の伝統こそが、国際的な社会主義への道を今ここで闘うための最良の方法であると主張する。私たちは、先人たちを麻痺させてきた小政党の落とし穴―イデオロギー的均一性、セクト主義、極左主義、そして生きた闘争から孤立した組織構築―を回避する支部を持つ組織において、こうした政治を体現することを目指している。私たちと共に社会主義組織を築き、新たな抵抗の基盤を構築し、戦闘的な少数派を結集させ、そして最終的には革命政党を創設しよう。これらは困難な課題だが、この終末的な時代において不可欠なものだからである。(おわり)

THE YOUTH FRONT(青年戦線)

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