軍事化の進展につのる県民の危機感沖縄を日米の軍事のくびきから解放せよ!

性暴力も隠ぺいも絶対許さない
沖縄報告 7月8日 沖縄 沖本裕司 

 天皇制国家の下で「南西諸島」と呼ばれて「帝国の南門」とされ、米軍政支配下で「極東の要石」とされ、今また辺野古新基地建設と自衛隊増強により東アジアの軍事拠点化が進む沖縄・琉球列島。沖縄は国家にとっていつでも軍事の要衝でしかないのか。
 この間、沖縄の軍事化の進行が目まぐるしく明らかになった。事故原因も解明されない中でのオスプレイの飛行再開、MQ4大型無人偵察機の嘉手納移駐、陸自15旅団のHPの牛島司令官の「辞世の句」の掲載と開き直り、陸自石垣駐屯地の拡大と新訓練場建設、北大東島での空自レーダー基地建設、防衛局による県との事前協議の打ち切りと大浦湾の埋立工事の着手、米兵による度重なる性暴力と日本政府による隠蔽、無理な土砂搬出運搬がもたらした安和での死傷事故、等々。支持率が20%前後に低迷する岸田内閣は、自重すべきところ逆に、沖縄の軍事化にいっそう拍車をかけている。
 権力者たちは国民の「弱点」がどこにあるか知っている。「外国からの攻撃に対処する」「国の安全保障に必要」と掲げれば、国民生活の窮乏を強いてでも大きな反発を受けず軍事化を推進できると思っているのだ。しかし、国家の幻想はいつまでも続かない。慰霊の日の沖縄全戦没者追悼式で仲間友佑さんが読み上げた「平和の詩」は権力者のウソを告発する鋭い響きを持っていた。

嘉手納基地前フラワーデモ

 米軍の性暴力と日本政府の隠ぺいに対して嘉手納基地第2ゲート前でフラワーデモが急きょ行われ100人が集まった。7月の第一土曜日のゲート前行動には千人を上回る結集を勝ち取った。県議会で少数与党に転落したものの玉城デニー知事はへこたれていない。
 沖縄に軍事力は不要だ。米軍基地も自衛隊基地もいらない。軍事に頼らない交流こそ琉球列島と東アジアに安定した平和共存をもたらす。万国津梁、平和のかけはしこそ沖縄の姿である。

7.6 辺野古第43回県民大行動

ゲート前にとどろく1200人の怒りの声


 キャンプ・シュワブゲート前で、オール沖縄会議主催の第43回県民大行動が行なわれ、太陽がジリジリと照り付けるなか1200人が集まった。ゲート前での座り込み開始から丁度10年。集会開始前に行われたキャンプ・シュワブのフェンスに沿って人間の鎖で包囲する行動も取り組まれた。

国民は国家の奴隷ではない
 司会は福元勇司さん(オール沖縄会議事務局長)。琉球セメント安和桟橋出口ゲートで亡くなった警備員に対する黙とうで集会がスタートした。稲嶺進さんは、「安和の事故は日本政府の強権政治がなせる業。決して許してはならない」とアピールした。続いて、玉城デニー知事のメッセージが読み上げられた。
 そのあと、各地の島ぐるみブロックによる発言が続いた。北部は、本部町島ぐるみ会議の崎濱静子さんが、本部塩川港での土砂搬出に対する連日の牛歩による取り組みを報告した。ヘリ基地反対協の浦島悦子さんは、抗議船2隻とカヌー13艇が海上行動に出ていることを報告すると共に、「安和の事故の負傷者の一日も早い回復を祈る。軍隊がある限り性暴力はなくならない」と述べた。中部は、うるま市島ぐるみ会議の照屋寛之さんが「基地は犯罪と隣り合わせ。基地は沖縄が提供したのではない、日本政府が提供している。隠蔽なんてとんでもない。根源は自民党政権にある。政治家のウソを打ち破らなければいけない」と訴えた。
 南部は、南城市の瑞慶覧長風さん、八重瀬町の知念則夫さん、南風原町の松井裕子さん、糸満市の大城規子さんがそろって前に立ち、この10年間の闘いの過程で亡くなった方々の名前を読み上げ追悼した。そのあと、「ハートのまち南城・人権ファーストの会」共同代表の津波ひとみさんが、古謝市長のセクハラ・パワハラを告発するこの間の取り組みを述べた。
 山城博治さんは、この十年を振り返り、あくまで屈せず闘い抜く決意を共にすることを、熱意をこめて訴えた。菅原文子さん(辺野古基金共同代表)はメッセージを寄せ、「国家が強制的に進めることにろくなものがない……。国民は国家の奴隷ではありません。敗戦で帝国日本は滅びましたが、また少しずつこの国は軍事帝国化しています。その手先に使われる奴隷国民にならないために、学び戦い、抵抗を続け、その意思を日頃から明確に表現しましょう」と呼びかけた。

骨は折れても心は折れない

 「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」の糸数慶子さんの後、安和の事故の被害者の姉がマイクを取り、「妹は大量の内出血で危険な状態だったが、第1次の手術を乗り越えた。昨日、大腿部など複雑骨折に対し10時間かけて第2回目の手術を行なった。手術は成功したが、血が全部入れ替わった。骨は折れても心は折れない。私たちの行動は法令を順守している。牛歩は権利。ひるむことなく抗議の声をあげ続けよう」と述べ、大きな拍手を浴びた。
 国会議員は、屋良朝博さん、赤嶺政賢さん、伊波洋一さんが前に立ち、「米兵の悪質な性犯罪の通報がどうして沖縄県に来なかったのか。12月には代執行があった。4月は岸田が訪米してバイデンに会った。6月は県議選があった。意図はバレバレ。沖縄に対するこんな扱いが許されるのか」(屋良さん)、「決められた手順通り防衛省が発表すべきなのに、外務省・内閣官房室が調整し隠蔽する。新たに発表された通報体制も隠蔽路線の延長だ」(伊波さん)と糾弾した。
 さらに、玉城デニー知事を支える与党県議がずらりと並び、代表して喜友名智子さん(立憲)が発言した後、金城徹さんがガンバローをリードし、集会を終えた。参加者たちは決意も新たにそれぞれの帰途についた。

2024.7.6 辺野古ゲート前。第43回県民大行動。与党県議17人が参加。

2024.6.28 嘉手納基地第2ゲート前。米軍の性犯罪に抗議するフラワーデモ。

南京・沖縄をむすぶ会

教科書検定に関する記者会見・県庁要請

 6月19日、小中校の新教科書の展示会が県内各地で始まった。今年度新たに文科省が検定合格させた令和書籍「国史教科書」をはじめ、育鵬社、自由社の歴史教科書も展示されている。南京・沖縄をむすぶ会では、午前中、展示会に足を運び実際に点検・確認し、午後4時から県庁記者クラブで、会のメンバー7人が参加して会見を開き、具志堅正巳代表が「令和書籍・育鵬社・自由社の歴史教科書を採択しないよう求める声明」を発表した。そのあと、県教委の義務教育課を訪れ、声明文を読み上げ手交した。この日の模様は、翌日および翌々日の新報、タイムスで報道された。
 令和書籍の「国史」は、そのタイトルからも明らかなように、天皇制日本の歴史の合理化に貫かれている。しかも、戦前の教科書同様、「神武」に始まる「歴代天皇の皇位継承図」を掲載している。小学生が天皇の名前を丸暗記させられた大日本帝国の教育現場を再び繰り返そうというのか。
 声明は、三社の歴史教科書が「未来を担う学生たちが学ぶべき歴史教科書とは到底言えない」と述べ、南京事件を取り上げてこれら教科書の記述の誤りを指摘している。

2024.6.20 南京・沖縄をむすぶ会による令和書籍等の教科書を採用しないことを求める記者会見と要請行動。

父親の中国出兵体験を語る講演・シンポジウム


 6月30日、宜野湾セミナーハウスで、熊本県から田中信幸さんを迎えて、父親の出兵体験を語る講演・シンポジウムが開かれ50人が参加した。田中さんは、「あなたが中国で行なった戦争は侵略戦争だったのではないか」という問いかけから、父親との10年間にわたる対話を経て、「父の戦争責任をともに背負う」と心に決め、父親から克明な従軍日記を託されたことを公にして活動を進めてきた方だ。ノーモア南京の会による2022年東京証言集会で講演したことを契機に、田中さんと沖縄とのつながりができた。
 司会は坂尾美知子さん。原義和さんの主催者あいさつ、韓国МBCテレビ『父の日記』の映像上映に続き、田中さんが講演し次のように語った。
 「父ははじめ、自分の行なった戦争が侵略戦争だと認めることは自分の人生を否定することだと言っていたが、長い対話を通じて、私が一緒に背負って行くと言うと分かったと言って、従軍日記を私に託した。日記には克明に、捕虜刺突や慰安所通いの事実が書かれていた。……」
 そのあと、松井裕子さんを進行役に、具志堅正巳さん、佐久川正一さんを加えてシンポジウムが行なわれた。四人は奇しくも1951年生の同期。各々の父親・家族の日中戦争体験を語り合った。沖縄からも、熊本第6師団の各連隊に配属されて多くの青年が南京大虐殺をはじめ中国侵略の前線に動員され、多数死傷した。
 最後に、今年10月に予定されている南京平和友好訪問団の日程紹介と参加要請の後、白井麻衣子さんが閉会あいさつを行なった。

2024.6.30 宜野湾セミナーハウス。父親の中国出兵体験を語る講演・シンポジウム。

6.9 平和の礎刻銘者の読み上げ

朝鮮人犠牲者をハングルで読み上げ

 今年で第3回目となる平和の礎全刻銘者の読み上げは、6月1日、沖縄戦終結の地・糸満市で、玉城デニー知事による読み上げからスタートし、23日の慰霊の日に完遂された。平和の礎の追加刻銘は毎年行われており、今年は県内24人、県外157人の合わせて181人が新たに刻銘された。礎の刻銘者の読み上げは、戦争とその犠牲者を記憶し再び戦争を起こさないことを誓う作業に他ならない。
 平和の礎に刻銘された朝鮮人犠牲者は現在までに463人にとどまっているが、朝鮮各地から沖縄戦に動員され日本軍の各部隊に軍人・軍属として配属された人々は少なくとも3500人が明らかになっている。日本は、植民地支配の朝鮮から「内鮮一体化」のもと多数の青年たちをアジア侵略戦争に動員し、戦争が終ると「外国」扱いをして、真剣な調査・補償を放棄してきた。「天皇のために」死んだ・殺された戦争犠牲者であることに変わりがないにも拘らず、日本の朝鮮人に対する向き合い方は今なお、冷たく血が通っておらず差別的だ。
 6月9日、なは市民協働プラザで行なわれた朝鮮人刻銘者の読み上げには、一昨年・昨年のメンバーに加えて、西原町の韓国語サークル5人や沖縄在住の韓国人牧師が集まり、ネットを通じて、韓国の「プルンスプ(青い森)学校」の中高生22人、市民運動グループらが参加した。今年は、日程の都合で総連・民団の関係者の参加がなかったが、ハングルでの刻銘者読み上げの広がりを実感する取り組みとなった。

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