9.2「運用改善」で終わらせない! 女を利用した軍事化と米軍性暴力の不処罰を許さない院内集会
呼びかけ:ふぇみん婦人民主クラブ、アジア女性資料センター、
アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(Wam)
【東京】9月2日、衆議院第一議員会館 多目的ホールで「運用改善」で終わらせない! 女を利用した軍事化と米軍性暴力の不処罰を許さない院内集会が行われた。呼びかけは、ふぇみん婦人民主クラブ、アジア女性資料センター、アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)。
主催者は、23年12月に発生した米軍兵士による少女性暴力事件に対して7月2日に外務省正門前で「在沖米軍による性暴力事件の隠蔽を許さない!」緊急スタンディングを行った。
だが沖縄をはじめ多くの民衆の抗議が巻き起こっているにもかかわらず「運用改善」策(7月5日)は、日米両政府が1997年に合意した在日米軍による事件・事故の通報手続きを確認するのみで、再発防止のための施策は発表しなかった。このような政府の姿勢を批判し、沖縄での性暴力の被害、実態を把握するために集会が行われた。
開催趣旨
集会は、本山 央子さん(アジア女性資料センター)が「開催趣旨」(別掲)の提起から始まった。
「お話」は、宮城晴美さん(基地・軍隊を許さない行動する女たちの会)が「沖縄の米軍性暴力、何が問題か、性犯罪の実態調査から見えてきたもの」(発言要旨別掲)というテーマで報告した。
基地があるかぎり性犯罪は起き続ける
続いて第2部は以下の仲間たちの「リレートーク」。
石嶺香織さん(「てぃだぬふぁ 島の子の平和をつくる会」共同代表/宮古島)は、宮古島の陸上自衛隊の軍事基地強化を批判。
片山かおるさん(東京都小金井市議)は、「沖縄を孤立させず、日本政府の情報隠しに抗議し自治と分権を求める地方議会議員の会」の取り組みを紹介し、「第213通常国会で地方自治法改正法が成立した。今回の事件における外務省から沖縄県への著しい連絡の遅滞は、国による地方自治体への支配を強める具体的な事態だ」と抗議した。
飯島滋明さん(名古屋学院大学教員)は、憲法学者有志の会の声明(①国民・市民を守るという役割を果たさない自民党・公明党政権②日米地位協定の問題③構造的暴力の中で繰り返される性暴力④米兵犯罪の被害者・補償という点でも現行「日米地位協定」18条では極めて不十分であり、改定は必須)を紹介した。
最後に9月13日の「沖縄で相次ぐ米兵による性犯罪事件 隠蔽した日本政府の責任を問う 政府交渉・院内集会・抗議行動~基地があるかぎり性犯罪は起き続ける~」への参加が呼びかけられた。 (Y)
「開催趣旨」(別掲)
北京女性会議から30年目
本山 央子さん(アジア女性資料センター)
今年6月のメディア報道によって、昨年12月に発生した米軍兵士による少女に対する性暴力事件が半年間も公にされず、沖縄県にも情報共有されていなかったことが明らかになってから、すでに2カ月以上経ちました。1997年の日米合意に基づく取り決めにも関わらず、米軍から通知を受けた外務省は、沖縄県に情報を共有せず、沖縄県警もまた県に情報を共有していませんでした。さらに、今年5月に発生した別の性暴力事件についても情報が伏せられていたことが明らかになりました。
沖縄県や市民の批判を受けて政府は7月5日に、今後は所定の手続きにしたがって情報共有の運用を改善していくと述べました。しかしそれだけで終わらせてしまってよいのでしょうか。
何か月も情報が伏せられていたのは、岸田首相の米国訪問や沖縄県議会選挙など、重要な政治的日程にあたえる影響を怖れた意図的隠蔽だったのではないかと指摘されていますが、外務省は誠実に経緯を明らかにしようとしていません。また、情報が隠蔽されていたのはこの2件だけにとどまらず、ほかにも多くの米軍性暴力事件が沖縄県や市民に伝えられていなかったことも明らかになりました。さらに米軍基地がある他の自治体においても同様に、情報が隠蔽された事件があったことが明らかになっています。つまり、今回明らかになったのは問題の一部に過ぎず、米軍による性暴力の情報を自治体や市民に知らせないような構造的な問題があることが見えてきました。しかしその要因についてはなんら十分な調査も行われておらず、また誰ひとり責任をとってもいません。
特に重大な問題は、「被害者の名誉やプライバシー」が情報隠蔽を正当化する口実に使われたということです。性暴力被害を含む人権侵害を繰り返さないためには、被害者のプライバシーを保護しつつ、市民が必要な情報にアクセスし、必要な対策を検討できる体制が不可欠です。しかし政府はこの点についてなんら改善策を検討しておらず、今後も「可能な範囲で」情報公開を行うとしています。
上川陽子外務大臣は、安全保障のジェンダー主流化に関する国連の「女性・平和・安全保障」、WPSを自身のライフワークであると公言する一方で、米国等との安全保障協力を進め、南西諸島の軍事拠点化を強行してきました。今回の米軍性暴力事件についても、「WPSの観点からたいへん遺憾である」と繰り返し述べています。しかし、性暴力被害者を保護するようなことを言いながら政府が情報をコントロールし、自治体と市民の目から米軍駐留がもたらす深刻な人権侵害をを矮小化し、沖縄の人びとに危険を押しつけ続けるようなやり方は、実際には、きわめて家父長的であると言わざるをえません。
来年は、米兵による少女性暴力事件をきっかけに米軍基地の押し付けに対する大規模な抗議の声が沖縄で燃え広がり、また、安全保障を含むあらゆる領域における女性の権利とジェンダー平等の推進を政府の責務とした北京女性会議から30年目を迎えます。この間、沖縄そして世界中のフェミニストたちが訴えてきたのは、家父長的な政府によって女性たちを守ってもらうことでありません。性暴力のスティグマを被害者に押しつけて黙らせてきた構造を解体し、何が安全保障であるのかを自ら決定する権利を求めてきました。
本日の院内集会では、長年沖縄で米兵による性犯罪調査を行ってこられた宮城晴美さんに講演をお願いしています。
女性の権利をいっそうの軍事化に利用させない、口先だけの運用改善では終わらせず、米軍による性暴力を二度と繰り返させないために必要な根本的行動を、参加者の皆さんと一緒に考え、今後につなげたいと思います。
「沖縄の米軍性暴力、何が問題か、性犯罪の実態調査から見えてきたもの」
宮城晴美さんの「お話」(要旨)
(基地・軍隊を許さない行動する女たちの会)
〈「救助と強姦」の米軍の論理〉
沖縄上陸後、米軍兵士はけが人を看護し食糧を与える一方で、場所、年齢、時間帯を問わず女性を襲った。時に、男性も被害に遭った。
〈米軍の移動とともに被害拡大〉
1945年─収容所の多い北部を中心に「保護」された女性たちのレイプ多発
1946年─居住地での畑仕事・洗濯中、県外からの帰還者等、拉致事件相次ぐ。この年から、米兵の子の出産も増え出す。
1947年─農作業中に加え、昼の自由通行許可で、歩行中に襲われる
1948年以降は、仕事帰りや住居侵入による被害、顔見知りの米兵による犯行など
敗戦後の米兵による表面化した性犯罪事件─民警察には、多くの被害が届けられた
〈沖縄民政府知事から米軍政府へ慰安施設設置の要請〉
米軍によって加えられる強姦・殺人・傷害・放火等の不法攻撃は沖縄住民を暗然たらしめる
軍当局に若い軍民の性的欲求を満たすに足る施設の考慮が払われてあったら犯罪も未然に防止得た
若い米軍員の性的欲求の対象は沖縄人女性であることは当然である。経済事情で売春婦が増え、社会風教上の問題、花柳病の蔓延を憂慮する
米軍員と沖縄住民がより明朗な親和を保し軍政の円滑な運営に供するため、軍において慰安施設の考慮を提言し、急速の実現を懇願する(場所を提案)
〈特飲街(慰安施設)の設置〉
1950年7月13日 米国軍政府特別布告「性病取締規則」
1950年末、保安施設としての特飲街を設置・ゴザの八重島・勝連村の松島(ホワイトビーチ)・宜野湾村の真栄原
1951年11月 小禄村に「新辻町」設置
1952年12月 那覇市辻に「松乃下」オープン
それでも事件は起こった ねらわれた幼女たち
〈ベトナム帰りの兵士による性犯罪の凶悪化〉
・事件は中部地区に集中
・被害者はホステスが多く、とくに強姦後に絞殺され、裸にされて埋め立て地や墓地、排水溝に放置する事件相次ぐ
・当時ホステスの経験のあった女性は「ベトナム帰りの米兵は、目つきからして恐かった。食事に誘われて断ろうものなら、暴力をふるわれた」と証言
〈何が問題か 軍隊の構造的暴力─海兵隊員の犯罪増〉
・19歳~25歳までの若年兵を中心に組織・訓練で女性べっ視・訓練によるストレスを抱えて市街地へ
・沖縄に差別的なイメージ─①日本語をしゃべるグークス(アジア人)②戦利品の中に女がいる(ダグラス・ラミス)・ベトナム戦争後、徴兵制から志願制に。女性、アフリカン、少数民族(ヒスパニック系)の若者たち=プーヴァティー・ドラフト(貧困徴兵制)=軍隊は、仕事を見つけることのできない、自分を不幸と感じている人で成り立っている(アレン・ネルソン)
〈被害者への止まない暴力〉
「戦前から続く『伝統的』家族制度(「門中制度)の圧力
沖縄では、結婚した女性は夫の「家」を継承するための男児の出産が求められる。夫の子でない女性の息子は家族として受け入れられないことが多い
・ムートゥヤー(本家)の長男嫁の男児出産は責任重大・レイプされた女性は、家族だけでなく、集落でも「恥」とみなされる・シングルマザーに冷たい親族・村落共同体(構成員は夫が地元出身であることが原則)・加害者─警察─家族─集落─被害者への暴力は続く
〈問われなかった女性の人権〉
・コザ騒動(1970年12月20日)─…小・中・高生女子への米兵による強姦(未遂)事件があったり、ホステスへの強姦・殺害事件も相次いでいた
・「島ぐるみ」土地闘争(1956年6月20日)─…この年も米兵の性犯罪はすさまじかったが、言及されることはなかった
〈少女性暴力事件に涙の抗議/1965年9月〉
米兵3人による少女レイプ事件で、世界女性会議に参加した女性たちが帰国後、怒りの記者会見。この事件を機に、基地問題が「女性の人権の視点から問われ、軍隊の構造が明らかにされる。
〈最大の暴力は日米同盟〉
・「裁判権放棄」の密約(日米合同委員会裁判権分科会非公開議事録/1953年)
〈1945年4月(米軍上陸)~2021年12月の被害情況(『沖縄・米兵による女性への性犯罪 第13版』)〉
・女性の被害者(強姦・拉致・強姦未遂・殺害・わいせつなど)─少なくとも948人・女性にまつわる男性の被害(殺害・傷害など)277人・加害米兵─少なくとも1782人
〈米軍による事件・事故は県に報告義務があるが、外務省は知事に報告しなかった〉
〈政府の何が問題か 事件を隠蔽「プライバシー保護」〉
・少女の心のケアーができなかったこと・「再発防止」への取り組みがなく、事件が新たに起こったこと・6月16日の県議選への配慮(保守系に不利)・6月23日の「慰霊の日」首相参列 辺野古新基地反対運動への影響など
〈警察も非力〉
・復帰後、逮捕しても不起訴が多い・1972~2023米軍構成員による犯罪検挙数(検挙総数6235件、凶悪犯586件、内、強姦138件)
〈「起訴前引き渡し」の約束を反故〉
〈「軍事基地いらない」の声をあげるしかない〉
(文責編集委)
「軍事基地いらない」の声をあげるしかないと訴える宮城晴美さん(9.2)
週刊かけはし
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00860-4-156009 新時代社